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夢を諦めた過去があったから、強くなれた/鍛冶職人 岡本友紀さん

夢を諦めた過去があったから、強くなれた/鍛冶職人 岡本友紀さん

真っ赤に焼けた鉄を、ハンマーで叩く鍛冶職人。一見、女性とは縁遠い鍛冶の世界に、一般企業のOL職から飛び込んだのが岡本友紀さんだ。注目の女性鍛冶職人として活躍する岡本さんのお仕事ストーリーをうかがった。130826_career_main.jpg

岡本友紀/la forgerone(ラ・フォルジュロン) 証券会社に約4年間勤務後、鍛冶職人に弟子入り。10年間の修行期間を経て独立し、広島にアトリエ「la forgerone」を構える。オリジナル作品を次々発表し、企業とのコラボレーションなども多数。

■証券会社のOLから、鍛冶職人の世界へ

「OL時代によく通っていた地元・広島のカフェに飾られた、鉄製のシャンデリアに一目惚れしてしまって。すぐに私も鍛冶職人になりたい!と思い、その月末に勤めていた会社を辞めました」

厳しい職人の世界に足を踏み入れたきっかけを、あっけらかんと笑顔で話す岡本さん。行きつけのカフェで一目惚れした鉄製シャンデリアの作者が、そのカフェのオーナー本人だと分かると、迷わず弟子入りを志願。「女性には難しい仕事だ」と断られるが、めげずに何度もオーナーのもとを訪れ、約8ヶ月後にようやく弟子入りを許された。弟子入りが決まる前に、約4年間勤めた証券会社をスッパリ退職していたというから驚きだ。

「20歳で入社した証券会社の仕事を今後も続けるか、迷っていた時期でもありました。そんな時に、鉄装飾の美しさに心を奪われてしまったんです。まさに運命の出会いですね」

■夢を諦めた2年間が、修行期間よりつらかった

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念願の弟子入りを果たし、師匠の作品づくりを手伝うことになった岡本さん。しかし、すべてが未知の世界での挑戦だった。

「最初は、鉄を溶かすバーナーが火を噴くのすら見るのが初めて(笑)。鉄を叩くハンマーも、5~6回振っただけで腕がフラフラ。毎日のように筋肉痛でした」

週2~3回のアシスタントを、アルバイトと掛けもちして続ける日々。師匠に「叩けるようになった」と認められるまで、3年かかった。

その後も師匠のもとで10年間修行を続けたが、途中で鍛冶職人の夢を諦めた時期があったという。

「30歳になる手前で『もうダメかも』と思ってしまって、2年ほど鍛冶の仕事から離れていました。派遣の仕事を見つけて働きましたが、やっぱり諦めきれなくて......。私の修行時代をよく知る人に『目が死んどる』と言われて、再びスイッチが入りました。師匠に電話をかけて、もう一度チャンスが欲しい、と頼み込んだんです」

その熱意が師匠に伝わり、鍛冶の世界に舞い戻った。岡本さんは当時を振り返り、夢に背を向けて悶々と過ごした「空白の2年間」は、修行時代よりつらかったと語る。

やりたいことを諦めることが、何よりつらいことなんだと実感しました。それに比べれば、どんな修行の苦労も乗り越えられると思えましたね」130826career_3.jpg

岡本さんが手がける鉄製の照明オブジェ。左から「森の雫」「幻燈草」。特に「幻燈草」は、師匠に初めて「お前らしい」と褒められた作品だという。

■大切なのは、自分から動き続けること

弟子入りから10年目、師匠が病に倒れたことをきっかけに、岡本さんは鍛冶職人として独立を決意する。そして古民家を改築したアトリエを手に入れた。

独立したからには、自分の顧客を増やさなくては成り立たない。コツコツと個展を重ね、個人宅や店舗用のオーダーが舞い込み始めた。130826career_4.jpgアトリエに並ぶ、岡本さんの仕事道具の一部。

ところが、独立から半年後にリーマンショックが日本を襲い、オーダーが激減するという試練に見舞われる。その厳しい時期を支えたのは、かつての「空白の2年間」だった。

「せっかく増えかけたお客様が一気に減って、経済的にも精神的にも大変な時期でした。でも、『ここで諦めて、また悶々とした日々を過ごすくらいなら』と思うと踏ん張れた。夢を一度諦めたつらさが、逆に私を支えてくれたんです」

独立後は、視野を広げるためにありとあらゆる本を読んだという。不安や試練の時を経て、岡本さんは今や、有名企業とのコラボや公共施設のオブジェ制作、CM出演までこなすようになった。130826career_5.jpg

JFEスチール株式会社(広島)のオフィス内に展示された、岡本さんの鉄製オブジェ。

「いま思うことは、『結局は自分から動くしかない』ということです。自分で種をまいたから、少しずつ芽が出て育ってきた感じ。小さな挫折感を味わうことがあっても、『なんとかなる!』と思って動けば乗り越えていけると信じています」

◆岡本友紀さんの展示会情報

8月28日(水)~9月2日(月)まで、日本橋タカシマヤで開催される「伝統と革新 クリエイターたちの世界」展に、岡本さんの作品が出展されます。ご本人もほぼ毎日来場予定だそう。詳細はこちら

(取材・文/編集部・田中)

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