目を背けたくなるほどまっすぐ。懐かしさがあるのに、どこかひりひりする。
1986年から翌年まで別冊マーガレットで連載された、紡木たくの不朽の名作『ホットロード』が、ついに映画化されました。主人公は14歳の少女、和希(かずき)。和希と2人で暮らす母親には離婚調停中の恋人がいる。「自分は望まれて生まれてきた子どもではない」という思いから逃れられず、母親とはぎくしゃく。学校にもうまく馴染めない。そんなとき夜の湘南で出逢ったのが、不良チームの少年"ハル"。2人は急速に惹かれ合って――。
母親役を演じたのは、女優・木村佳乃さん。原作の大ファンでもあるという木村さんに、『ホットロード』への想いをうかがいました。
作品との出合いは小学生
小学生のとき、ドキドキしながら原作を読んでいたという木村さん。当時は、和希目線で読んでいた物語ですが、改めて読み返すと母親の気持ちも理解できたと話します。
「母親役が私にくるとは思っていなかったので、びっくりしました。同時にとても嬉しかったですね。すぐに本棚から引っ張りだして、原作を読み返して。当時は『お母さんってひどいな』と思いながら主人公ばかりに感情移入していたけれど、今読むと同じ女性として母親の気持ちも理解できたんです」
アラフォー世代の女性にとって、当時のバイブル的コミックだった『ホットロード』。同世代である木村さんは、映画を観たら「きっと懐かしいはず」と語ります。
「初恋とか初めての彼氏とか、髪を染めるとか親に隠れてなにかをするとか......。忘れていたドキドキがたくさんあると思います。誰しもとおる道というか」
何よりも大切にした"娘"との関係
役柄どおりのピュアな娘・和希を演じるのが、女優・能年玲奈さんです。透きとおるような彼女の目が印象的だったと話す木村さん。今回の映画で最も大切にしていたのも能年さんとの関係だったそう。
「ほとんどが玲奈ちゃんとのシーンでしたし、とにかく彼女と向き合うことを心がけていました。かといってなにかを話し合うわけではなく、現場では甘いものを一緒に食べたり、くだらない話をしたり。少ない時間でも一緒にいて、ちょっとでも彼女を感じるというか。やっぱり親子役ですので」
完成した『ホットロード』を初めて観たときも、能年さんのことが気になって仕方なかったそう。
「私、玲奈ちゃんのとなりで観ていたんです。関係者が集まって観る環境ってすごく緊張するから、彼女が微動だにしないのが気になって仕方なくて。大丈夫かなと思っていたら、観終わったときに彼女が『はあ』と息をしたので安心しました(笑)」
そんな信頼関係が感じられるエピソードも披露してくれました。
与えられたものの役目を果たすこと
現在38歳、デビューから20年以上。第一線で活躍し続ける女優として大切にしていることを聞くと、こう返ってきました。
「与えられたものを、与えてくださった方に満足していただけるように頑張る。自分の役目を果たす、ということですよね。でもずっとキリキリしていると疲れてしまうので、オンオフはわけるタイプです。仕事が終わったらパッと切り替えるかも。プライベートではなにより睡眠が大切。とにかく寝ます。あとは香りが好きなので、仕事中は控え室でランプベルジュをよく使っていますね。好きな香りに包まれるとリラックスできるので」
そんな"セルフコントロール上手"の木村さんにコツをうかがうと、意外な返答が。
「子どもがいたらセルフコントロールどころかコントロールされる側です。なにもかも子ども中心で、そんなものはなくなりましたね(笑)。今は子どもに無理矢理にでも切り替えられています。でもそれが幸せでもありますが」
「本当の心が人の胸を打つ」
最後に映画をとおして伝えたいメッセージをうかがうと――
「やっぱり『本当の心』が人の胸を打つんだなと。青春真っ只中の多感な時期を、監督はすごくきれいな画できれいな物語にしてくださいました。今って便利なものがたくさんあるけれど、それゆえにどこか心を侵されている部分もある。そうではない『本当の心』が紡ぎ出すピュアさを感じて欲しいと思います」
エンドロールで尾崎豊の主題歌「OH MY LITTLE GIRL」が流れた瞬間、大人になって忘れてしまった気持ちに出合えるはずです。
『ホットロード』監督:三木孝浩原作:原作:紡木たく「ホットロード」集英社文庫<コミック版>出演:能年玲奈、登坂広臣、木村佳乃、小沢征爾8月16日(土)より、全国公開
(C)2014『ホットロード』製作委員会 (C)紡木たく/集英社(撮影/照沼健太、取材・文/編集部・寺田)
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