仕事とプライベートの両立は、キャリア女性にとって共通の課題です。子育て中の人が悩むのはもちろんですが、まだこれからという人のなかには、仕事が忙しくて子育てに十分な時間がとれないかもと二の足を踏み、子どもを持つこと自体にためらいを感じている人は多いのではないでしょうか。
子どもの学力に、本当に影響するもの
しかし、優秀な子どもが育つのに、両親が育児に割く時間はそこまで重要でないことが分かってきました。アメリカ教育省が「初等教育の縦断的研究」と銘打って、2万人以上の子どもの幼稚園から小学5年生までにわたる勉強の習熟度を計測したところ、子どもの学校の成績に強い相関をしめす項目と、そうではない項目が抽出されました。
結果からは、両親が子育てに費やす時間よりも、教育水準や社会的地位が子どもの学力にプラスの影響を与えることが判明したのです。
<学校の成績と相関している8つの項目>
親の教育水準が高い -正の相関
親の社会・経済的地位が高い -正の相関
母親は最初の子供を産んだとき30歳以上だった -正の相関
生まれたとき未熟児だった -負の相関
親は家で英語を話す -正の相関
養子である -負の相関
親がPTAの活動をやっている -正の相関
家に本がたくさんある -正の相関
『ヤバい経済学』 P.221より引用
親の教育水準や教育への関心度が子どもの学校の成績に大きく影響するのは、肌感覚として頷けます。また、3の項目「母親は最初の子供を産んだとき30歳以上だった」も、高学歴の女性だと結婚が遅くなりがちなことを考えれば、納得です。
他方、養子に負の相関があることに疑問を持つ人もいるかもしれません。研究によると、知能指数は育ての親よりも生みの親に大きく影響されるといいます。理由があって子どもを養子に出した親のDNAを養子が受け継ぎ、それが学力に影響していると考えられるのです。ただ、高等教育に進むにつれて、遺伝的な要因ではなく教育環境の影響が大きくなってきます。
「いい母親」が子どもの学力を上げるわけではない
それでは、子どもの学力と関係ない項目とはどういったものでしょうか。
<学校の成績と関係のない8つの項目>
家族関係が保たれている
最近よりよい界隈に引っ越した
その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事に就かなかった
ヘッドスタート・プログラム(政府の育児支援制度の一つ)に参加した
親はその子をよく美術館へ連れて行く
よく親にぶたれる
テレビをよく見る
ほとんど毎日親が本を読んでくれる
『ヤバい経済学』 P.221~P.222より引用
政府の育児支援プログラムに参加したり、美術館に連れて行ったり、本をよく読んであげたり、幼稚園に入るまで仕事に就かずに子育てに専念するという、いわゆる「いい母親」の条件に挙げられそうな項目が、子どもの成績に影響を及ぼさないのです。
キャリア女性の子どもが優秀に育つ可能性
大雑把に言いかえれば、「親がどんな人か」が子どもの学力に影響しやすく、「親が子どもに何をしてあげるか」は子どもの学力との相関が弱いということ。つまり、あなた自身が自立している優秀なキャリア女性であれば、子どもも同じように自立した優秀な子どもに育つ可能性が高いのです。
もちろん、「優秀」にはさまざまな要素が含まれているため、一概に言うことはできません。しかし、少なくともこのデータは、「子育てにふんだんに時間を割けなくても、子どもは親の背中を見ながらしっかり育つ」ということを示しているのではないでしょうか。
[ヤバい経済学]著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー翻訳:望月衛定価:2,160円出版社:東洋経済新報社
image via Shutterstock

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