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黙祷の前に「子ども同士」で話し合いを。フランス教育大臣のメッセージ

黙祷の前に「子ども同士」で話し合いを。フランス教育大臣のメッセージ

11月13日(金)の夜、パリとサン・ドニを襲った同時多発テロ。130人近い犠牲者と、350人にのぼるケガ人を出す痛ましい事件となりました。

フランス、テロ後の週末の様子

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フランスでは即日非常事態宣言が出され、テロリストの身元確認とその組織の捜索に着手。また国境検査を含む、公共交通機関や施設の出入りなどありとあらゆる検査の強化がなされています。

15日(日)から17日(火)までは、国を挙げての服喪期間とされ、公共施設では弔意を示す半旗が揚げられ、16日(月)正午には、全国で1分間の黙祷が捧げられました。

この週末、フランスの空気は重く、すれ違う人たちもどこか覇気がなかったり、ピリピリしているように感じました。多かれ少なかれ、フランスに住む人はみなテロ事件の重みを感じながら過ごした2日間だったと思います。

そんな中、この国の閣僚の動きはさすがに素早く、週末中に多くの対応策が練られ、実行されました

若き女性教育相の機敏な対応

そのうちのひとつがministre de l'Education nationale, de l'Enseignement supérieur et de la Recherche(国民教育・高等教育・研究大臣、以下教育相と略)のナジャット・ヴァロ=ベルカセム氏の対応です。

2014年夏よりフランス初の女性教育相となったナジャット・ヴァロー=ベルカセム氏は、38歳の若さ。今の第2次マニュエル・ヴァルス内閣には、何人かの若手政治家の起用が目立ちますが、彼女もそのひとりです。

また、首相のマニュエル・ヴァルスもそうであるように、フランス帰化組の政治家が多いのも特徴のひとつ。ベルカセム教育相も同様で、生まれはモロッコでした。

教育相に就く前には「女性権利大臣」や「都市・青少年・スポーツ大臣」の兼任も経験した聡明な女性です。

教育関係者と保護者に向けたメッセージ

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今回のテロを受け、ベルカセム教育相は、翌14日にはすでに教育関係者に向けてのメッセージを送っています。

(前略)(教育者である)あなた方は、現代世界を理解するのに必要な知識を子どもたちに与える立場にあるわけですから、彼らの問いに答えることが必要です。その対話は、もちろん、容易なものではないでしょう。この容易ではないミッションの助けとなるよう、ガイドラインと資料を準備しました。

education.gouv.fr」 より引用

ガイドラインの中で、ベルカセム教育相は、教育関係者が取るべき態度と立場を明確にし、具体的に16日(月)朝、対面する子どもたちにどう対応するかの要点をまとめています。その他、心のケアが必要な地域には、専門家との連携システムを説き、場合によっては別の地域でも、専門家の助けを要請できることを取り決めました。

続いて15日(日)には、子どもたちの保護者あてのメッセージも発表しており、学校との対話をすすめています

これらのメッセージや情報は、国民教育・高等教育・研究省のサイトで閲覧できますし、またツイッターのハッシュタグ「#educattentats」でまとめを参照することもできます。

1分の黙祷の前に「子ども同士」で話し合いを

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黙祷は、フランス全国の公共施設と学校で行われましたが、ベルカセム教育相は、この黙祷を教育にも生かすことも提案しています。具体的には、黙祷の前に少なくとも各クラスで1時間の話し合いの時間を取るように指示しています。

子どもたちの年齢・学年にもよるものの、「まずは教師は聞き役に回り、何か表現したい子どもには、話をさせ、質問があれば、それに答えること。そして、次に、彼らの意見を話し合いへと導くこと」が提案されています。

話し合いは、必ずしも「教師 VS 子ども」の形ではなく、子どもたち同士にさせることがすすめられています。

個人的に、さすが言論の国だと思ったのは、高等学校の段階では、テロについての話し合いから、「フランス共和国の標語『自由、平等、友愛』」や「表現の自由」、「差別の拒否」などの方向に発展させることも示唆されていることです。

平等とはどういうことか、自由とはいったい何なのか。哲学者同士の話し合いでさえ終わりがないように思えるこれらのテーマ。さまざまな概念や思想を子ども時代から頭の中でうんうんと考え抜くことで、フランス人は、外交術を身につけてきたのかもしれません。

これらのディベートを通して、フランスの価値観を身につけていく子どもたちに、その価値観を生かして生活できる世界を、なんとしても残したいものだと、喪に服するフランスで、改めて思っています。

education.gouv.fr , éduscol , education.gouv.fr

flowers via Frederic Legrand - COMEO , najat via nobelio, people viaHadrianl , candle/ Shutterstock.com

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冠ゆき
山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、国立大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド五年、イタリア三年半、中国四年半の生活を経た後、2013年夏フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40カ国。六ヶ国語を解する。多様な文化に身をおいてきた経験を生かして、柔軟かつ相対的視点から、フランスのあれこれを切り取り日本に紹介中。

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