1. Home
  2. ライフスタイル
  3. 驚異のダンサー・森山開次。なぜ40代で『KATANA』再演を選んだのか?

驚異のダンサー・森山開次。なぜ40代で『KATANA』再演を選んだのか?

驚異のダンサー・森山開次。なぜ40代で『KATANA』再演を選んだのか?

国内外でのコンテンポラリーダンスの公演に出演するほか、映画やテレビ、CFなど幅広いジャンルで活躍する森山開次さん。カルチャーに造詣が深いカフェグローブ読者なら、きっとご存知のはず。

森山さんがダンスをはじめたのは21歳のときのこと。ダンサーとしては遅めのスタートながら、2001年のソロプロジェクト始動以降、しなやかさと空間を切り裂くような独自の表現が話題となります。

『弱法師』『OKINA』の公演では、神社や能といった日本文化をモチーフにした表現を開拓。

さらに特筆すべきは、ニューヨーク・モントリオールで発表された舞台『KATANA』。ニューヨークタイムズでは「驚異のダンサーによる驚異のダンス」と高い評価を受け、国内各地で行われた凱旋公演が大きな反響を呼びました。

そして10年の時を経て、『KATANA』を再演する森山さん。40代のいま思うことをインタビューでうかがいました。

20代の自分を支えたものは?

20160824_moroyama_02.jpg

「僕の原点はミュージカル。本当は芝居に興味があったのですが、大学を辞めて、たまたま踊りも必修の劇団に、いわば事故的に飛び込んでしまったのがはじまりでした。

そのときに受けたのが、クラシックバレエの洗礼。当時の若い僕には、その稽古風景が......タイツを履いてガニ股を競うものにしか見えなくて。女性のバレリーナが華麗に舞った後、タイツ姿の僕が無様な姿をさらすという状況になじめず、もがいていた時代です。

また、舞台中に『なぜここで歌うんだ?』という疑問も湧いたり。つまりは、ミュージカル向きの人間ではなかったのです(笑)。

でも、バレエに限らずいろいろなダンスを学んでいくうちに、『この踊っているときの感覚はなんだ?』と未知数の魅力に惹かれていきました。同時に、確立された様式に対して、『僕はもっとこう踊りたい』といった反発心も芽生えはじめました。それが、舞台に対する大きなモチベーションの変化だったと思います」

自身とってのコンテンポラリーダンスとは?

20160824_moriyama_03.jpg

「説明が難しいのですが、いまの時代を自分なりに模索してつくっていくもの。しかも、それが多岐にわたっているからおもしろい。そもそも古典も、新しい形が代々受け継がれてできた世界ですよね。だからじつは僕自身、"古典"や"コンテンポラリー"にこだわっているわけではありません。

むしろ日本における独特のコンテンポラリーダンスを逆手にとって、いかにして自分のダンスをみなさんに見ていただけるかをもがくしかない。

NHKの『からだであそぼ』に出演したのも、コンテンポラリーダンスの可能性を広げる一環でした。ファッション関係者とのつながりもあったので、コラボレートしたり。作品を発表するだけでなく、芝居にも挑戦するなど、垣根なくやっていくことで道を模索していたんです。

アーティストはブレてはいけないという考え方もある。でも、それ自体が変なこだわりとも思えるんです。新しいことに取り組んで見えるものがあるし、ましてや僕はダンサーとしては遅咲きです。自分を固めるのはまだ早すぎるかなと」

30代前半で演じた『KATANA』とは何だったのか?

20160824_moriyama_stage.jpg撮影:宮川舞子

「刀のモチーフを膨らませていく過程でテンションが高まっていきました。あらためて初演の映像を見て思うのは、前に進む力や意思がすごかったですね。若いから怖いもの知らずというか(笑)。

劇中歌に『歩め歩め前へ』というメッセージがあるんです。人生や人にかけて、自分のなかで出てきた言葉を能楽師の方に謡ってもらったのですが、それがまさに象徴していました。『前に進むんだ』という強いメッセージとともに、自分を奮い立たせてくれた感覚が強かったです。

当時得られたものは多くあり、自信がついたのはもちろん、表現の幅が広がることにつながりました。それから、『森山開次=KATANA』というひとつのイメージを持ってもらえたことも大きかったですね」

初公演から10年目になぜ再演のチャレンジを?

20160824_moriyama_04.jpg

「じつは、『KATANA』の初公演を終えたとき、10年後にまた再演したいというのは当時から思っていたことなんです。

理由は、刀というテーマ自体があまりにも壮大で、一度ではとても表現しきれるものではなかったから。それでも当時は挑み、やりきった感はあったのですが、やはり到達できないもの、迫れないものがあるとも感じました。10年先だったらもっと違うものができたかもしれないと頭に浮かんだのです。

再演を目前に、いまは舞台に耐えられる体をつくる日々。じつはこの10年、怪我との戦いでもあり、積み上げながら体に負荷をかけた部分もあるので、それといかに戦っていくかというのが課題です。

でもそこで守りに入ると、進化が止まってしまいます。僕も、読者のみなさんと同じ40代。得るものと失うものの両方に惑わされる歳ですよね。

『KATANA』を再演する以上、体の限界を決めてあきらめたら、やはり舞台には立てません。あれから10年間走り続けてきましたが、気持ちはむしろずっと新鮮です」

これからの10年をどう表現する?

20160824_moriyama_05.jpg

「同じものを再演するにあたって、もちろんプレッシャーはあります。正直怖いですよ(笑)。ビデオを見ると作品としてすでに残っているので、10年前の自分がはるか先を行っているような気がしてしまう。だから現在、稽古を通じて自分の若いころを追いかけているという不思議な状態です。

でも、この作品に臨むには、『怖さ』を抱えるのがちょうどいいのかなと考えています。テーマとして武士道や戦場に向かう精神、生きるか死ぬかということを捉えていくところがありますので。それが今回の舞台をやり遂げる武器になるかもしれません。

刀で何を切るのか、どんなときに刀を持つのか? 『怖さ』だけでなく、現代社会ではみんな誰しも『狂気』を持っているのではないか? それも含めどう表現しようかということを模索しています。

刀が錆びついているのか、それとも妖刀使いになるのか......。ご覧になるみなさんの判断に委ねるしかありません。

10年目の再演というまたとない機会に恵まれたので、もう一度、『森山開次はやっぱり狂気に満ちていた』と感じていただけたらうれしいですね」

20160824_moriyama_stage02.jpg撮影:上原勇(サン・アド)

森山開次ソロダンス『KATANA』

2016年10月7日(金)19:30、10月8日(土)14:00、10月9日(日)14:00

世田谷パブリックシアターにて、NYでの初演から約10年を経た森山開次初期の代表作の再演が開催。

演出・振付・美術・出演:森山開次

音楽:種子田郷

衣装:ひびのこづえ

書:小宮求茜

森山開次,KATANA

撮影/網中健太

あわせて読みたい

生きにくい時代。それでも現実から目を背けない【ヴァンサン・ランドン氏インタビュー】

マリー監督、女性の豊かな人生の厳選って何ですか?【今この映画】

子宮は偉大でありせつないもの。瀬戸内寂聴『花芯』がついに映画化【村川絵梨さんインタビュー】

この記事を気に入ったら、いいね!しよう。

Facebookで最新情報をお届けします。

  • facebook
  • twitter
  • hatena
庄司真美
大学卒業後、出版社で月刊モノ情報誌の編集、大手ITベンチャーで会報誌とそのWEB版の編集を経て、フリーランスの編集、ライター、フードスタイリスト、広報として活動。これまで取材した企業は500社以上。人生最大の敵は退屈。享楽的。シャンパンが好き。料理と洗濯が好き。なぜかいつもおもしろい人、事、モノが寄ってきます。

    おすすめ

    powered byCXENSE

    メールマガジンにご登録いただくと、 MASHING UPの新着記事や最新のイベント情報をお送りします。

    また、登録者限定の情報やイベントや座談会などの先行予約のチャンスも。

    MASHING UPの最新情報をご希望の方はぜひご登録ください。