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シビアな決断は生きてきた延長。悔いのないわたしでありたい【雨宮塔子さんインタビュー】

シビアな決断は生きてきた延長。悔いのないわたしでありたい【雨宮塔子さんインタビュー】

いくつになっても自分のやりたいことに正直であることは、キャリア女性たちにとって憧れの生き方。そんな理想像を体現している女性のひとりといえば、17年間のパリ生活を経て、今年の7月からニュースキャスターとして復帰した雨宮塔子さん

仕事から帰ったあと、雨宮さんの番組を見ながら一日を終えるという読者も多いと思うが、そんな充実した毎日を送っている雨宮さんに、仕事に対する思いや最近共感したある映画について語ってもらった。長いブランクをまったく感じさせない凛とした雰囲気は画面を通してでも伝わってくるが、仕事において気をつけていることは?

「まず、『当たり障りのないコメントだったら言わないほうがいい』と思っています。そこで、優等生になることは避けて、本当に自分が伝えたいことを研ぎ澄ませるように心がけていますね。

ただ、デイリーのニュースなので、本番直前に内容が差し変わることもありますし、ひとつのテーマにじっくり向き合える時間は限られているので、常に柔軟性は持っていたいなと。だからこそ、いつも自分でアンテナを張り巡らせていることが大切なんです」(雨宮さん)そんな風に、俊敏な判断を求められ続ける生放送という現場で戦う雨宮さんが、ある"大きな決断"を迫られたひとりの男の心の葛藤に興味を持ったという。

その人物とは、9月24日公開の映画『ハドソン川の奇跡』の主人公であるサリー機長。2009年1月15日、ニューヨークのハドソン川に航空機が不時着するという未曾有の事故が発生。奇跡的に乗客全員が生還したこともあり、機長を英雄と称えるニュースが世界中で大きく報道されていたので、記憶に残っている人も多いはずだが、その裏には知られざる真実が隠されていたのだった。

仕事にも悩みにも全力で向き合いたい

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この衝撃の実話に対し、キャスターという立場から、一面しか取り上げない報道側の怖さを感じたという雨宮さん。「たとえ数字に結びつかなかったとしても、伝えなければいけないことは掘り下げて伝えられるように、全角度から向き合う姿勢で常にいたい」と考えているという。

そこには、パリでの長い生活のなかでテロを身近に感じたり、災害などの厳しい現場に立ち会ってきたりしたからこそ。真実をきちんと伝えたいという使命が芽生えているのだと感じさせられる。「とくにフランスでは、テロはどこか遠いところで起こっていることではなく、何が起こっても不思議ではなかった状況。まさにそういう日常のなかで生きていたので、いつ死んでも後悔のないような生き方をするようになったのかもしれません」(雨宮さん)フランスでの経験は人生観にも大きな影響を与えたという。また日本でも、常にシビアな環境に身を置いていると、当然ストレスを感じることもあるはず。心のバランスを保つためにしていることは?「息抜きは下手なほうなんですよ。でも、放送が毎日あることで助かってもいるところもありますね。

悩みがあると、とことん突き詰めたいタイプなのですが、それで一睡もしなかった場合、オンエアに支障が出てしまいます。悩みからは目を逸らさないけれど、最近はある程度は切りあげて、体力補充のために寝てから次のテーマに向き合うようにしています。20代のときは無理できたんですけど、45歳にもなるとガクンときますから(笑)」(雨宮さん)どんなに悩みがあっても、常に明るく前へ前へと進む姿勢は、働く女性の鏡。キャスター復帰のニュースに、「自分も新たなことにチャレンジしてみよう」と勇気づけられた人もいるのでは? そんな彼女の原動力についても探ってみた。「フランスを離れたこともあり、失うものはないというか、やるしかない状況に自分を追い込んだという感じです。だから、悩んでいる場合ではないので、一生懸命やるしかないんです。

そういう姿勢を見せないと子供たちにも申し訳ないし、ごまかさずに自分が生きてきたことに誠実でいたいなって。ただ変にカッコつける必要はないと思っているので、そこは自分らしくありたいです」

決断にはそれまでの生き方が問われる

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家族と離れるだけでなく、一度離れた現場に復帰をする決意を固めた雨宮さんだが、もしずっと日本で生活していたら、こういう選択をすることはなかったと話す。「この映画のサリー機長でいうと、40年間のキャリアがあって、その経験値から究極の判断を下したと思うのですが、決断ってその瞬間にするものではなく、『自分がいままでどう生きて考えてきたか』というのが形になって出るもの。私も今回は大きな決断だったと言われる部分もありますが、フランスで17年間生きてきたことの延長線上だと感じています」(雨宮さん)とはいえ、いまの雨宮さんを作りあげてきたフランスでの生活では、壁に当たったこともあったそう。「自分の考え方とか表現の仕方はいまでも日本人的ですが、それがフランスに行ってどれだけ通用しないかというのも痛いほどわかりました。伝えるための手段というのは、固執してはいけないもので、使い分けが必要なんですよね。

日本人だからこう伝えたいんじゃなくて、『伝えたいものが何かを考えたときに、どういう手段を使ってどう表現するか』ということを考えなきゃいけないなって。そうしないと、相手には絶対に通じないところがあるので、そこで自分をどういう風に見せるのかだったり、タイミングを考えたりしないと生きていけないところはありますね」(雨宮さん)これまでに、さまざまな思いを経験してきたからこそ、さらなる輝きを放つ雨宮さん。きっと、「いまの自分にしか伝えられないことがある」という確信が新たな道へと進ませたのだと思う。

雨宮さんやサリー機長のように、みずからの力で可能性を切り開いている人たちの姿から学ぶべきは、何よりも自分を信じることの大切さ。そして、誰もが日々決断を迫られながら生きているけれど、そのひとつひとつが人生の礎となり、重大な局面を乗り越える力となるのだと感じるはず。

雨宮塔子さん

フリーキャスター、エッセイスト。成城大学を卒業後、TBSに入社。6年間のアナウンサー生活を経て渡仏。フランス語、西洋美術史を学ぶ。2016年7月25日から『NEWS23』(TBS)にキャスターとして出演中。

撮影/土佐麻理子(雨宮塔子さん)

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©2016 Warner Bros. All Rights Reserved

ハドソン川の奇跡

監督:クリント・イーストウッド

出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニーほか

2016年9月24日(土)丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー他全国ロードショー

配給:ワーナー・ブラザース映画

http://www.hudson-kiseki.jp

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志村昌美
映画宣伝マンとして洋画や邦画の宣伝に携わったのち、ライターに転向。イタリアとイギリスへの留学経験を経て、日・英・伊・仏のマルチリンガルを目指しながら、現在は海外ニュースや映画紹介、インタビューなどを中心に女性サイトや映画サイトで執筆中。女性目線からみたオススメの映画を毎月ご紹介していきたいと思います! 日々の試写の感想などをつぶやき中:https://twitter.com/masamino_19

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