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多様化する女性のワーキングスタイル。フランスのテレワークの実際

多様化する女性のワーキングスタイル。フランスのテレワークの実際

職場以外の場所、多くは自宅で仕事をするテレワーク。

SOHOや個人事業主だけの話ではなく、いわゆるサラリーマンやキャリアウーマンの間でも、話題に上ることが増えてきました。

テレワークの恩恵はWin-Win

確かに、テレワークは、働き手と雇用主双方に利点をもたらします。

まず、働き手は、何よりも通勤時間とそれに費やす体力、交通費の節約ができます。それにより、仕事以外に充てられる時間が増え、生活の質も向上。ストレスも減り、仕事の効率も上がります。

雇用主にとっても、仕事の効率が上がるのは喜ばしいこと。また、最近よく問われるCSR(企業の社会的責任)の観点からも、社員の移動が減ることで、省エネや大気汚染減少に一役買えるのは、プラスの要素です。

ひいては、地域活性化や環境改善にも役立つ可能性を秘めています。

実際、「Psychologies.com」によれば、テレワークを採用した企業マネージャーの96%がその導入に満足しており、雇われる側も平均22%仕事の効率が上がったと答えています。にもかかわらず、同記事によれば、フランスの場合、テレワーク利用者は2~16%にとどまり、普及率20~35%の北欧やアングロサクソンの国には、遠く及びません。

また、テレワークの普及が進んでいるアメリカでも、そのパイオニア的存在であったYahoo! が、2013年にそれまで認めていた在宅勤務を禁止し論議を呼びました。

一体、これからテレワークは拡がるのか、消えていくのか。

それを考えるよすがにと、私の住む国フランスで5年ほど前からテレワークを利用しているキャリア女性パスカルにインタビューしてみました。

テレワークの実際:パスカルの場合

この日は9月も半ばというのに、フランス北部では30度を超える季節外れの暑さ。パスカルは、シンプルなノースリーブの黒いロングワンピースが良く似合う、目元の生き生きとした50代女性です。

彼女が勤めるのは、全世界に店舗を持ち、従業員総数約9万人の大企業。パスカルは、その企業の中枢でエキスパット(数年のミッションで国を越えて派遣される社員)の労務一般を担当しています。

300人余りが通う総本社はフランスの北部にあるのに対し、彼女が暮らすのは、フランス南部の片田舎。乗り換えが多いため、TGVを使っても、マイカーで走ってもオフィスまで片道8時間の距離だそうです。

一般に、フランスでテレワークというと、週に1、2日オフィス以外で仕事をするのがそのパターン。けれども、パスカルの場合、長距離ということもあり、月に1週間、飛行機と車を乗り継いで移動し、本社に出勤する形だそうです。

先見の明を持った元上司の一言

パスカルがテレワークを始めたきっかけは、15年ほど前の上司の薦めだったといいます。もともと南部出身のパスカルが、北部に引っ越したのは同社に勤めるため。22年前のことでした。

定年後には南部の家へ戻るつもりでいましたが、「テレワークっていう手もあるよ」という上司の言葉で、その可能性を考え始めたそうです。

ただ、当時は、まだ中学高校に通う子どももいれば、英国人の伴侶の仕事もフランス北部拠点であったため、その言葉を心に留めたのみでした。

再び具体的にその可能性を考え始めたのは、子どもたちがそれぞれ自立し、夫が定年を迎えた6年ほど前のことです。しかも、ちょうどそのころ、脚の怪我で通勤が不可能となり、3か月ほど在宅ワークを余儀なくされました。

それが、結果としては、テレワークの試験期間となったようなもので、仕事に必要な資料の取り扱いやデータ化をどうするかなど、諸々の問題を解決し、環境を整えるのに役立ちました。

これならいけると判断し、南部に引っ越したのが5年前。以来、月に一度だけ北上する生活を続けています。

生活の質の向上

何よりも生活の質は向上したわ。渋滞の心配もいらず、ゆっくり朝食も摂れるし。二階に仕事部屋を構えたんだけど、階段を上がってしまえは、静かで、仕事に集中できる環境よ。

ビデオ会議などは普段も利用していますが、月に一度オフィスに出る週は、やはり会議や面接が多くなるということ。また、データの大きな案件など、本社でアクセスする方が処理速度が高いものを、その週にまとめて処理するようにしているそうです。

オーバーワークの危険性

ただ何事もそうであるように、良いことばかりとは言えません。

わたし自身は、集中できる時間が増えた分、仕事の効率も上がったと感じるんだけど、それを認めようとしない同僚もいるわ。

いまの上司(15年前にテレワークを薦めた上司はすでに退職)も、ダメだとは言わないけれど、どこか信用されていないように感じることがあるし。

だからたとえば、家で仕事をするときは、トイレに行くときも携帯電話を持って入るのよ。もしわたしが電話に出なかったら、ほら、言わんこっちゃない、って言われるに決まっているもの。

トイレに行くときも携帯電話を握りしめているなんて、そのストレスも馬鹿にならないものに思えます。また、常に「さぼっていない」ことを証明しないといけない気分になったら要注意。

家に職場があるということは、下手すると常に仕事中のオン状態になってしまう危険も秘めているからです。パスカルも、オンとオフのバランスを取るのは容易ではないと頷きました。

仕事の質量の測り方

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話を聞いていると、テレワーカー側の、上司や同僚と信頼関係を築く努力ももちろん必要ですが、マネージメントする側の意識の変革も必要に思えます。パスカルは仕事で諸外国の労働事情にも通じており、自身も長く英国に暮らしたバイリンガルです。

彼女の目から見ても、アングロサクソンの国と比べ、フランスでは「その場にいること」を「仕事をしている」とみなす風潮が根強いそうです。

仕事の質量を「達成度」で測るマネージングは、フランスでも管理職以上では自明ですが、労働人口全体から見ると、それほど一般的ではないのかもしれません。

実際、パスカルの働く企業の規模からいって、もう少しテレワークが普及していると予想していたのですが、現在、300人余りいる本社でテレワーキングしているのは、彼女を含め、たった2人だとか。

それでも、CSR(企業の社会責任)の観点からも、テレワークは外せないテーマのひとつとあり、ようやくそのガイドライン作成を検討する動きが見られるようになってきたそうです。

多様なテレワークが普及のカギ?

テレワークを成功させるには、本人の自立性と責任感に加えて、マネージャーとの信頼関係が必須ですが、たとえこれらの条件が揃っていても、テレワークは万人向けではないとパスカルは言います。

私はむしろ静かな場所の方が集中できるけど、逆に、働く人たちに囲まれないと、仕事できない人っているでしょう。そういう人には向かないと思うわ。

確かに、同僚とのコミュニケーションが、仕事のモチベーションを上げてくれることもあります。

わたしにとっては騒音に過ぎないオフィスの雑音も、他の人にとっては、必要な効果音ということもあるでしょう。そういう人には、最近増えてきたコワーキングスペースの利用が有効かもしれません。

一言でテレワークと言っても、人それぞれ理想の形は異なるものです。オフィスに出るのは週2日で十分という人もいれば、そもそもテレワークを希望しない人だっているでしょう。また、週に1日のテレワークが何よりのリフレッシュ効果となる人もいるはずです。

フランスでのテレワークはこれからも拡がる方向にあるように思いますが、そのためには、マネージャー側、テレワーカー側双方の成熟に加え、できるだけ多様なテレワークを可能とするガイドラインが必須に思えます。

それらが整うことで、冒頭に書いたような、個人も企業も地域も恩恵を得られるWin-Win-Win社会に近づくと考えるのは、いささか理想主義すぎるでしょうか。

次は、取材を通して見えてきた、テレワーク普及とオフィス形態との切っても切れない関係を紹介したいと思います。

Psychologies.com

image via Shutterstock

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冠ゆき
山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、国立大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド五年、イタリア三年半、中国四年半の生活を経た後、2013年夏フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40カ国。六ヶ国語を解する。多様な文化に身をおいてきた経験を生かして、柔軟かつ相対的視点から、フランスのあれこれを切り取り日本に紹介中。

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