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多様化するワーキングスタイル。フランス人とオープンスペース問題

多様化するワーキングスタイル。フランス人とオープンスペース問題

仕事上の問い合わせにしても、消費者としてクレームをつけるにしても、フランス企業とのやりとりで最初にネックとなるのは、「担当者」に行きつくことなのではないかと、よく思います。

というのも、何事も、基本的に担当者以外は把握していないのがフランス。担当者不在中は、文字通り何も進めることができません。伝言も伝わらないと考えた方が無難ですから、急ぎの用ほど、出直すのが正解だったりします。

フランスのデフォルトは個室オフィス

もちろん企業によって差はありますが、「なぜ、こんなに見事に話が通っていないの!?」と叫びたくなるほど、部門内での情報共有がされていないこともしばしば。

外から見ると、不可解に思えますが、オフィスに入ると、さもありなんと頷く気持ちになります。というのも、フランスのオフィスは、もともと個室タイプが主流なのです。

オープンスペースに島型オフィスがデフォルトである日本では、誰が不在で、誰が出社しているのかは一目瞭然ですし、島ごとの情報共有もスムーズです。

対してフランスのように個室オフィスだと、下手をすれば、隣の同僚の不在も、よくわからないのが現実です。

そのため、最近でこそメールの普及で無駄な時間は減りましたが、急ぎの手段が電話しかなかったころは、アポイントメントひとつ取るにも、回線をたらいまわしにされ、さんざん待たされた挙句、「あ、担当者、いまヴァカンスだから、来週か再来週掛けなおして」で終わってしまうことも珍しくありませんでした。

ゆっくりと拡がりつつあるオープンスペース

この「閉じたオフィス」偏愛主義は、いまもフランスに根強く、「Décision-Achats.fr」によれば、ひとりあるいは少人数(平均4人)のクローズドスペースで働くフランス人は73%。完全個室オフィスをもつフランス人は34%、管理職以上だとさらに高く71%を占めます。

同統計によれば、オープンスペース型オフィスで働くフランス人は18%にすぎません。また社員数が250人以上の大企業でも、20人以上が働くオープンスペースオフィスを採用しているところは、6%だけだそうです。

それでも、Open Spaceという外来語と概念は、フランスでも市民権を得た印象があります。また、緩慢な動きではありますが、オープンスペース型オフィスを採用する企業の話も、耳にするようになりました。

これは、グループワークが重視されるようになったことのほか、省エネ、省スペースの必要性に迫られたり、CSR(企業の社会的責任)の観点からの選択でもあるようです。

オープンスペースで働くアリスの話

そこで、まだマイノリティであるオープンスペース型オフィスで働くフランス人アリスに話を聞いてみました。アリスは、フランスに350以上の店舗をもつ男性衣料メーカー本社に勤めています。

意外なことに、彼女はオープンスペースにかなり不満が溜まっている様子です。

何といっても集中できないわ。私の仕事は数字を扱う部分が多いので、集中しないといけないのに、周りの雑音にめげそうよ。とくにひとり、おしゃべりな同僚がいて、週末やヴァカンスの話ばかりするのには閉口するわ。

オフィスの配置を良く聞けば、広いワンフロアは、真ん中がオープンスペースですが、片側の壁面には、役員用の個人オフィスのドアがずらりと並んでいるそうです。

けれども出張や会議で留守にする役員が多いため、大抵、使われず鍵がかかっている状態だと、アリスは皮肉な口調です。

別フロアには、ミーティングやビデオ・カンファレンス用に、ワーキングスペースが複数設けられています。どうしても雑音が気になって集中できないとき、アリスはこのワーキングスペースに「避難」して仕事を仕上げることもあるそうです。

ひとしきりオープンスペースの難点を聞いたあと、利点を尋ねると、次のような言葉が返ってきました。

やっぱりチームの連帯感が生まれやすいことかな。あと、内線電話やメールを使わなくても、ちょっとしたことなら、すぐデスク越しに質問できるというのも便利ね。

このあたりは、日本企業の島オフィスを思い浮かべると納得できる話です。

テレワークの普及のカギはオープンスペース型オフィス?

小学低学年の子どもが2人いるアリスは、残業したくてもできないため、仕事を家に持ち帰ることも珍しくなかったそうです。そのため、最近になって、週に一度のテレワークをはじめたといいます。

アリスの会社の規定では、金曜日と家に子どもがいる日は、テレワークが禁止されています。フランスの学校は水曜が休み、もしくは半日なので、子どものいるアリスのような人は水曜はテレワークができません。

また、週の初めは大切な会議が入る可能性も高いため、彼女が選んだのは毎木曜のテレワークです。いまのところ順調で、仕事の捗りもぐんと良くなったといいます。

前回、テレワークについて話を聞いたパスカルのぶつかった「上司や同僚からの偏見」はないの? と聞くと、「ないわ。だって、ボスも同じ理由で週に一度テレワークをはじめたもの」という返事。

なるほど、オープンスペースで集中できないのはアリスだけではないわけです。それはそれで問題に思えますが、見方を変えれば、オープンスペースがテレワークの普及に一役買っているとも言えそうです。

実際、前回話を聞いたパスカルに確認を取ってみると、彼女の働く企業は、オープンスペース型オフィスをまだ採用していないということでした。

オープンスペース賛否は半々

ちょうどいままさに、オープンスペースへの移行を検討中だという企業で働くブノワによれば、移行への賛否は、社内の意見を真っ二つに分けているそうです。

管理職のなかには、個人オフィスを特権と捉えている人も多く、ブノワの会社でもそういう人は当然反対組。ただし、管理職全員が反対というわけではありません。

たとえば、ブノワ自身も管理職で、個室オフィスを持っていますが、出張で不在にすることが多く、その無駄も日ごろから感じているため、基本的にはオープンスペース移行に賛成です。ただ、アリス同様、無駄話の多い同僚がいると、仕事にならないこともあるかもしれないと、懸念しています。

限りあるスペースを有効に使い、CSR(企業の社会的責任)にも取り組むためには、オープンスペース、テレワークどちらの採用も、ゆくゆくは不可避であるように思えます。ただ、採用によるプラス効果を生むには、単にオフィスの形態を変えたりテレワーク制度を作るだけでなく、仕事に取り組む姿勢や、仕事のやり方自体の見直しや再確認が必要なのでは? という印象も受けました。

ところで、以前も書いたように、フランスでは、ここ数年コワーキングスペースの人気が高まっています。オープンスペースの最たるものともいえるコワーキングスペースでは、一体どんなふうに仕事が進んでいるのでしょうか。オープンスペースについて調べているうち、ますます興味が湧いてきました。

次回は、その気になるコワーキングの現場をレポートしたいと思います。

Décision-Achats.fr

image via Shutterstock

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冠ゆき
山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、国立大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド五年、イタリア三年半、中国四年半の生活を経た後、2013年夏フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40カ国。六ヶ国語を解する。多様な文化に身をおいてきた経験を生かして、柔軟かつ相対的視点から、フランスのあれこれを切り取り日本に紹介中。

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