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女性起業家が集まり、ビジネスが生まれる、フランスのコワーキングスペース

女性起業家が集まり、ビジネスが生まれる、フランスのコワーキングスペース

前回、オープンスペース型オフィスが、フランスではなかなか拡がらない状況を紹介しました。

それにもかかわらず、オープンスペースの最たるものと考えられるコワーキングスペースは、フランスでも増える一方です。この一見矛盾する現象を不思議に思い、コワーキングスペースの取材に行ってきました。

コワーキングスペースの拡がり

まず整頓しておくと、世界で最初のコワーキングスペースが生まれたのは2005年、アメリカでとのこと。以来、その数は毎年倍増し、「Becowo (1)」によれば、2015年現在、全世界で7800か所を数え、推定利用者数は約50万人に上ります。

Bureaux à Partager (1)」が2016年10月発表した数値によれば、いま現在フランス全国にあるコワーキングスペースは、360か所。1年前の統計では250か所でしたから、大幅に増えていることがよくわかります。1時間単位、1日単位、あるいは月極め利用のできるところまでいろいろあり、規模も小さなものから大きなものまでさまざまですが、今年の統計を見ると、小中規模のものが中心となってきているのが分かります。

利用者はもっぱらフリーランスかと思いきや、じつはそうでもなく、会社員と自由業が占める割合は、ほぼ半々。会社員は、やはり、スタートアップ起業家が多いようです。

コワーキングスペースは、いずれもWi-Fi完備。プリンタやファックスなどの機器も共同で使え、会議室を備えているところも多くあります。言うまでもなく、情報通信技術、機器、サービスの発達と普及がなければ、生まれることもなかった仕事場でしょう。

プレーヌ・イマージュの場合

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©KanmuriYuki

物は試しと私もさっそくそのうちのひとつ、Plaine Images(プレーヌ・イマージュ)を訪ねてみました。説明してくれたのは、開発アシスタントのパトリシアとプレス担当のオーレリーです。

プレーヌ・イマージュは、繊維工場跡5ヘクタールの土地に、その建築物を再利用して建てられた、映像とクリエイティブ産業のための施設です。オープンからまだ5年未満で、敷地内の建物の半数はまだ工事中ですが、すでに105の小中企業が入り、合計1520人が働いています。

メインビルディングの2階と3階には、大小複数のオフィスが準備されていて、プレーヌ・イマージュのコンセプトに合う会社(ゲームのソフト制作会社や、映像制作会社、オーディオソフトを扱う会社など)が入っています。

占有率は常に97%と運営も順調です。地下スペースには、それらの小中企業のプロジェクトが展示されています。

外部企業がセミナーを開く場所としてプレーヌ・イマージュを利用するときは、この地下の展示説明の時間を15分ほど取ってもらうそうです。そこから新しい企画やコラボレーションが生まれることもあるので、決して疎かにはできない時間です。

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©KanmuriYuki

プレーヌ・イマージュの運営資金の大半は地方自治体の援助から出ているそうで、なるほど、その分、プロジェクトの熟成と活性化を助ける使命を持っているのだと納得しました。一階をコワーキングスペースとして開放しているのも、同じ精神によるものです。

オーレリーに聞いた話では、コワーキングスペースでコワーカー(コワーキングスペースで働く人のこと)同士が知り合うことで話が膨らみ、スタートアップ誕生となって二階のオフィスに移った例も少なくないそうです。

お昼時はまるで社食の雰囲気に

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©KanmuriYuki

肝心のコワーキングスペースですが、元工場の建物を利用しただけあり、高い天井と広々とした空間は、オフィスというよりショールームのような印象を与えます。

この日は、大企業のセミナーで一階の半分が使用されていたので、「いつもよりスペースが狭いのよね」とオーレリーは残念がりましたが、それでも広々とした空間に見えました。

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©KanmuriYuki

テーブルは、卓球台を利用したユニークなもので、すべてコマ付きのため、配置換えも簡単にできます。スタンディングワークに丁度良さそうな、背の高いデスクもあります。お昼休みには、テーブルで卓球に興じる人もいるそうですし、休憩時間には、ヨガ講座などが開かれることもあるのだとか。片隅には、雑誌とリクライニングチェアの並ぶ「寛ぎコーナー」もあったりと、至れり尽くせりです。

当然Wi-Fi完備で、お水やコーヒーも無料。お昼時には、ケータリング業者がランチパックを販売に来ますし、お弁当持参も大歓迎。別の日のお昼に訪れたときは、まるでどこかの社食に迷い込んだ気分になりました。

スペースそのものがインスピレーションの源

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©KanmuriYuki

利用者の声を聞こうと、ちょうど仕事中だった女性にインタビューしてみました。1年ほど前から通っている彼女の名は、エレーヌ。

良く聞けば、自分で立ち上げた会社のオフィスも所有しているそうですが、コワーキングスペースが気に入り、仕事もはかどるため、ほぼ毎日ここに通っているのだそうです。

その魅力について、エレーヌが挙げてくれた第一の理由は、クリエイティビティを刺激してくれる場所であること。この空間の設計や雰囲気すべてが、クリエーターである彼女に、インスピレーションを与えてくれるのだそうです。

第二の理由は、毎日のように何かしら出会いがあり、刺激的であること。出会う対象は個人、スタートアップ、外部企業などさまざまです。そして第三の理由が、設備自体の便利さです。

ほんの2時間で出会った6人の働く女性たち

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©KanmuriYuki

物は試しと私もPCを取り出しました。意外なことに、恩恵をすぐさま感じたのは、私の「目」。画面から目を上げたとき、空間が広いと、焦点の合う場所が遠くなり、それが、随分と目に心地良いのです。

一番心配だった騒音も、天井が高いせいか、大して気になりませんでした。もちろん、電話を使うときには、みな場所を変えるマナーをもっていたおかげもあるでしょう。見ていると、コワーカーたちは、近すぎず遠すぎない距離を保っている感じで、その居心地の良さに、ふと大学の図書館を思い出したりしました。

エレーヌがここで働く理由としてあげた「出会い」は、業種違いの私には縁のないものと思っていましたが、どうしてどうして、2時間ほどの間に、あれよあれよと複数の人とコンタクトができました。

まずは上に挙げたエレーヌ。彼女が立ち上げた子ども向けファブラボTrézorium(トレゾリアム)の話は、それだけでもおもしろく、また別途取材させてもらうことに。

また、パトリシアの紹介で起業援助担当のウリアと知り合い、そのまた紹介で、コワーキングスペースのデータベース化スタートアップBecowo(ベコヴォ)を立ち上げつつあるフィオナとオリヴィアと知り合うことになりました。ベコヴォでは、コワーカーがそれぞれ自分に合うコワーキングスペースを検索し、予約できるサイト作りを目指しているそうです。

偶然とはいえ、この2時間ほどの間に話した6人は、すべて女性! 働く女性のパワーに囲まれて、無性に嬉しくなった時間でもありました。

コワーキングスペースの長所と短所

プレーヌ・イマージュのコワーキングスペースは無料で、制限もありませんが、多くのコワーキングスペース利用は有料です。それでも、「Bureaux à Partager (2)」も書いているように、普通のオフィス賃貸と異なり、保証金が不要のため、手軽に利用できますし、1時間単位でのフレキシブルな使い方も可能です。

また何よりの魅力は、「ネットワークづくり」ができるということ。プレーヌ・イマージュのように、似たような業種のワーカーが集まるコワーキングスペースでは、「コワーカーのコミュニティつくり」という側面も持ちます。セミナーやアトリエなどを企画し、起業相談にのるコワーキングスペースも少なくないようです。

逆に短所はというと、やはり第一に雑音。また、機密保持が難しいこと。たとえば、顧客の個人情報を扱うような仕事をするのには合わない場所です。

白状すると、実際にコワーキングスペースを利用してみるまでは、単に在宅でできる仕事を、図書館やカフェでするのと同じようなものだろうと思っていました。けれども、取材を通して、コワーキングスペースは、仕事をする場所というだけではなく、ビジネスが生まれる土壌なのだと実感するにいたりました。

それこそが、おそらく、コワーキングスペースの第一の魅力なのでしょう。そう考えれば、ただのオープンスペース型オフィスとは、まったく異なるスペースとわかります。

ベコヴォのCEOフィオナの予想では、フランスでのコワーキングスペースは、まだ数年は増加する見込みです。とくにパリ以外の地方都市では、フリーランスやテレワーカーの数と比べ、コワーキングスペースの数が絶対的に不足しているそうです。

コワーキングスペースの増加は、新しいビジネスを生みだすチャンスを増やすとともに、ワーキングスタイルの多様化をますます可能とするでしょう。もしかしたら、「働く」という概念自体が、変わっていくかもしれません。

フランスのワーキング文化は、いま実に面白い局面を迎えていると言えそうです。

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冠ゆき

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