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年始に届くもの。人呼んで「裏切りの年賀状」 #妙な年齢

年始に届くもの。人呼んで「裏切りの年賀状」 #妙な年齢

まだ正月気分が抜けてないんじゃないか?

かつてはよく耳にした叱り文句だが最近はあまり聞かない。むしろ、正月にちゃんと正月気分を味わえているのだろうかと不安にもなる。正月気分が足りてないんじゃないか? と己を戒めたくなるほどだ。

なんとなくテレビをザッピングしながら日付が変わり新年を迎えていたことに気づく。腹が減りコンビニへ行く。かつてお正月に流れていたCMの「おせちもいいけどカレーもね」というキャッチフレーズが頭をよぎりレトルトカレーを買う。お正月だし、イベント感を盛り上げるノリで普段買わないような30倍辛いというカレーを買ってみる。

あまりに辛い。辛いというか痛い。唇が腫れて半分も食べれなかった。心痛いが残りを処分することにする。が、年末年始でしばらくゴミ出しができない。トイレに流そうかとも考えてみた。しかしどうだろう。同じ白い陶器ではあるものの、ダイレクトに移し変えた光景を想像しただけでぞっとした。

こんな正月はいやだ。

こんな正月は嫌だ。

そしてラグジュアリーな40代女性に向けたサイトに書くことではない。申し訳ない。

まったくもって正月気分が足りていない。妙な年齢女史たちはいったいどのようなお正月を過ごしているのだろうか。お正月気分を味わえているのだろうか。

独身の妙齢女史Fさんは年賀状について語る。

「音信不通だった友人が、結婚したり子供ができたら急に年賀状を送りつけてくるようになるんです。裏切りの年賀状を

裏切りの年賀状。妙だ。妙な言い草だ。

はっきりと、ゴール(終焉)まで一緒に走ろうねと約束していたわけではないはずだ。そんな約束がいとも簡単に裏切られることも小学生のうちに学んでいるはず。

「もちろん相手に悪意がないこともわかってますし。それに妙な感情を抱く自分が嫌になります。なので何となくぼんやり風景の一部として眺めるくらいにします。裏切りの年賀状を」

妙に繰り返す。頭ではわかってはいるものの、裏切りであることは譲れないようだ。

大晦日はひとりピザをとり『ホリデイ』のDVDを観ながらケイト・ウィンスレットとともに泣くというFさん。涙でぼやけてるくらいが年賀状を眺めるのにちょうどいいのだという。

ふと、正月に流れるフジカラーのCMの「お正月を写そう」というフレーズが頭をよぎった。その姿はどうか写さないでやってほしい。インターネットやSNSの普及も影響してか年賀葉書の発行数は減少傾向にある。それでも裏切りの年賀状は送られてくる。メールよりも葉書のほうが温かみがあるというが、気持ちが込もっているぶん、憂鬱になることもあるようだ。

「30代はクリスマスをひとりで過ごすのが辛いけど、40代は年末年始をひとりで過ごすことのほうが辛くなってくる」というFさん。

クリスマスという恋人同士のイベントよりも家族行事の側面が強いお正月。40代を独り身で過ごす女史にとっては、仕事に追われながら気を紛らわすことができるクリスマスよりも、仕事が休みに入って半ば強制的に迎えるお正月のほうが堪えるようだ。思えば年賀状を書いていたのはいつのころだったか。仕事の付き合いで出すことはあっても、個人的に年賀状を送っていたのは学生のころまで遡る。社会人になり一人暮らしで家族と離れると、お正月という家族行事から次第に遠ざかっていったように思う。

しかし、その後自分の新しい家族ができる者が現れ始める。「結婚しました」「子供ができました」という年賀状は、家族行事再開のお知らせといったところだろうか。

そんな家族行事再開のお知らせが、妙な年齢の女史たちには憂鬱に映るようだ。

30代後半の独身女史Tさんはこう語る。

「同級生の友人たちはいまの住所を知らなくて、実家の方に年賀状を送ってくるんです」

自分の目に入らなければ気にもならないものかと思ったがそうでもないようだ。

「友人たちの子供の写真がプリントされた年賀葉書を、親が目にするんです」

最近ではもうTさんに結婚の話を振らなくなってきたご両親。実家に年賀状が届いてたよという電話での会話のなか、妙な間をつくったのち「子供......ばっかりだね......」とつぶやくのだという。

家族行事再開のお知らせは妙齢女史の親御さんまでも憂鬱にさせているようだ。

最後にTさんは言った。

「ずっと喪中でいたい」

妙だ。なぜそこまで家族行事再開の知らせに怯えなければならないのか。

干支だけにしよう。もう。

干支だけにしないか年賀状は。

みんな干支をもっと活用してほしい。

干支だけの明るい社会をつくりましょう。

干支の干支による干支だけの年賀状を作りませんか。

そう声高に干支を推奨したくなるほどこちらまで憂鬱になった。

40代独身妙齢女史Mさんからはこんな年賀状が届いた。

「家族が増えました」

そう挨拶が添えられた写真には3匹の犬とともにMさんが微笑んでいる。Mさんのお家に3匹めのワンちゃんがやってきたようだ。

ペットも家族の一員。独身ではあるが可愛い家族に囲まれている。ほんのり妙な気持ちにもさせられるが、これなら裏切りの年賀状にはならないのではないだろうか。

それにもし戌年だったら何の問題もないじゃないか。干支だから。

フェイスブックなどで友人たちの近況は知ることができる。結婚や出産も何かしら風の噂では知っていただろう。しかし妙な年齢にとって、しっかりとお年玉付き年賀はがきで報告を受ける実体験はなかなかショックが強いようだ。

私のあの日のカレーと同じように。

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