1. Home
  2. ライフスタイル
  3. Day2:大人の見栄や意地がセントーサ島で弾け飛ぶ【シンガポール紀行】

Day2:大人の見栄や意地がセントーサ島で弾け飛ぶ【シンガポール紀行】

Day2:大人の見栄や意地がセントーサ島で弾け飛ぶ【シンガポール紀行】

「久しぶり! 元気にしてた?」

落ち着いたカペラ・シンガポールのロビーにはやや不似合いなほどの大きな声が響いた。

シンガポールで暮している、学生時代からの友人。誰よりも仕事に打ち込んでいた彼女が、6つ年下のシンガポーリアンと電撃結婚してキャリアを手放して移住したのには、当時、かなり驚いたものだ。

いまはこちらの日本人弁護士事務所で秘書として働いているらしい。シンガポールを訪れると連絡したら、仕事を休んで会いに来てくれた。

「せっかく東京の喧騒を離れてきたんだもの。シティじゃなく、今日は1日、セントーサ島を満喫しつくすわよ

私の返事も待たず、彼女は颯爽とタクシーに乗り込んだ。20年経っても変わらぬ強引さに、思わず笑ってしまった。

そうだ、今日は彼女に身を委ねてみよう。

たどり着いたのはシロソビーチの陽気なレストラン

20170213_singapore_22.jpg
『タンジョン・ビーチクラブ』。海を間近に臨む最高の立地

ものの10分ほどでシロソビーチに到着した。目的地は『タンジョン・ビーチクラブ』というレストラン。 四角い大きな建物に足を踏み入れると、ビーチに臨む大きな窓から心地よい光が入る空間が広がった。2階まで吹き抜けになった高い天井、ウッド調の家具、ブルーのソファ、テーブルに飾られたグリーン。

「なに、ここ!? 外国みたい!」

「やだ、シンガポール自体が外国じゃない(笑)。でも、そのリアクション、わかるわ。ここはゴールドコーストの海辺にあるビーチハウスをイメージして造られているんですって。東南アジアっぽくない雰囲気よね」

20170213_singapore_23.jpg
レストランに併設されたプールサイドのバー。22時(日曜は23時)まで開いているので、夜半にここのバーだけを利用する客も多い。

建物とビーチとの間には、プライベートプールと、プールサイドバーまである。美しく灼けた肌にカラフルな水着を身につけた欧米人カップルや、天使のように可愛い金髪の少年を連れたファミリーが思い思いにくつろいでいた。

20170213_singapore_24.jpg
<イベリコ豚のオレキエッテパスタ>S$33++、プロセッコ グラスS$18++。スペイン産イベリコ豚のチョリソーの塩味とチェリートマトの酸味がマッチ。

海辺の陽射しと湿度には、コロナやモヒートなんかが爽やかで合うのかしら、と一瞬迷ったけれど、再会を祝すなら、やっぱり泡

お店のシグネチャーメニューである<鯛のセビーチェ>と<イベリコ豚のオレキエッテパスタ>をシェアしながら、近況をキャッチアップする。

仕事のこと、プライベートのこと。互いに東京で切磋琢磨していたころは負けず嫌いな性格もあって弱い部分を見せることができなかったけれど、暮らす環境が変わり、かつこんなにも開放的なムードに包まれると、なんだって話しやすくなるから不思議。

一昨日あった部下とのいざこざも、「こんなことがあって......イライラしちゃったけど、私がもっと早い段階で彼女にリマインドしなきゃいけなかったのかも」なんて素直に言えてしまった。

20170213_singapore_15.jpg
セントーサ島の人気ビーチスポット、シロソビーチ。ビーチ沿いにバーが建ち並ぶ。

喉を潤すシンガポールスリング

食後はビーチ沿いを散歩。サクサクっとした砂が心地よくて、裸足で歩くことにした。

いわゆるリゾート地とやや趣が異なるのが、海洋に停泊する大型タンカーやコンテナ船のビュー。さすがシンガポールはアジア経済の中心地だと実感するとともに、都心のすぐ隣にこんなリゾートが存在することに、なんだか感心してしまった。

暑さにすぐ根をあげて、ビーチバーで休憩を。メニューにあのカクテルの名を見つけたので、迷わず注文。

「シンガポールスリングをください」

シンガポールスリングといえば、この国を代表するオリジナルカクテル。発祥は『ラッフルズ・ホテル』と言われているけれど、惜しくも同ホテルは改装中。よって、ここで海を眺めながら楽しむことにした。

20170213_singapore_16.jpg
ビーチ沿いのバー『コーステス』にて。左からボンベイサファイアやパイナップルジュースを使った<シンガポールスリング>S$17++、マンゴー風味の<フローズン・フレーバード・マルガリータ>S$17++。

海をぼんやりと眺めていたら、またも彼女が突然声をあげた。「ねえ、『S.E.A アクアリウム』に行ってみない?」

「す、水族館!?」と面食らった私をよそに、彼女ときたらグングンと進んで行く。大人になってから水族館に行った記憶なんてあったかな。学生の時のデート以来なんじゃ......。

魚を観るのって、そんなに楽しいの?

大人が? まさかのアクアリウムで癒される

20170213_singapore_02.jpg
『S.E.A アクアリウム』入場料一般S$33

腑に落ちないまま『S.E.A アクアリウム』に着いてしまった。彼女がおすすめする理由がわからない。なんだ、なんなんだ。

20170213_singapore_03.jpg
「ノアの方舟」のレプリカ。動物のツガイを1組ずつ乗せたというストーリーを知ってはいても、いざ目の当たりにしてみると船の大きさに驚く。

入ってすぐのフロアは、東南アジア諸国の海洋貿易の歴史が展示されている。地下からの吹き抜け部分にド〜ンと現れたのは、「ノアの方舟」のレプリカ。さらに、15世紀にアラブと行き来していたダウ船のレプリカまで。これはオマーン国から実際に海を走行させて運んだのだそう。釘を使わずに造った船。人類の知恵には、驚かされることばかりだ。

しかしやはり当時は天候を完全に予知することが難しく、嵐に遭遇して沈没してしまう船も相当数あった。沈没船から出土した品物なども展示されていて、興味深い。

20170213_singapore_04.jpg
貿易船が航海中に嵐に遭遇して沈没してしまうムービーを鑑賞した後、階下に降りると船が沈んでいる様子を模した水槽が現れる。

国に留まれば沈没して死ぬリスクを負わなくて済む。わずか8世紀から、命を賭して船で海洋へ出て、言葉が通じない人間と貿易をしていた彼らの勇気に改めて脱帽した。グローバル時代にあっても海外で働くことにハードルを感じる私には、そんな勇気を持つことさえ想像できない。

私のそんな感想に、彼女がこう返してきた。

「この時代の人たちは、命をかけてでも外に出ていかないと、自分たちの生きる場所がなくなってしまうリスクがあったからじゃない? きっとあなたに必要なのは、いまある環境で精一杯生きることなのよ。人と比べてどっちのほうがすごいかなんて、考えなくていいと思うわ」

20170213_singapore_aqua.jpg
もっとも大きな水槽にいる巨大なブラックマンタ、サメのトンネルは圧巻(サメの水槽でダイビングも可!※別途申し込み・料金)。研究機関とも結びついていて、マンタを手懐けられるか、などの研究も行われている。

たしかに、私はいつも考えすぎてしまう。悠々と泳ぐブラックマンタや、沈んでは浮かび、浮かんでは沈む煌めくクラゲを見ながら、しばし、ぼうっとした。

そうだ、自分は、自分らしくあればいいんだ。そう思った瞬間、彼女が私をここへ誘った理由が少し理解できた気がした。

「そろそろお腹が空かない? ディナーはとっておきのレストランに案内するね」という彼女の声で我に返る。たしかに、お腹が空いている!

オーシャン・レストラン・バイ・キャット・コーラ』はなんと、S.E.A アクアリウムの見どころであるもっとも大きな水槽に併設されていた。

20170213_singapore_10.jpg
巨大な水槽を臨む『オーシャン・レストラン・バイ・キャット・コーラ』のダイニング。ランチコースS$58++〜、ディナーコースS$128++〜。『S.E.A アクアリウム』B1

供されるのは、マグロ、イクラ、牡蠣など高級魚介類をふんだんに使った宝石箱のような前菜、低温で真空調理されたメインのサーモンなど。魚たちが泳ぐ姿を目の当たりにしているため罪悪感を感じつつも、海鮮を使った創作料理に酔いしれた私たち。

20170213_singapore_food.jpg
シーフードをふんだんに使ったディナーコースの一例(季節によって変更あり)

米国のスターシェフ、キャット・コーラ氏がプロデュースしたこの『オーシャン・レストラン・バイ・キャット・コーラ』のキッチンを仕切るのは、シンガポーリアンのシェフで、アジア人の食の好みを捉えた味つけが特徴。

たとえばシーフードの塩味にスイカのソルベで甘みを加えるなど、1皿に異なるテクスチャーを組み合わせて表現している。複雑なようでいてスっと受け止められる、絶妙な味わいだ。

おいしい食事に美味しいお酒で、いよいよエンジンがかかって、女2人のおしゃべりは止まらない。あともう1軒行って、東京で溜めたストレスを出しきってしまいたいと思っていたら、こんな提案をされた。

「ねえ、野外フェス好きだったよね? 実は今日明日、セントーサ島で『ズークアウト』が開催されているの。事務所の先生からチケットをいただいていたから、ちょっと行ってみない? MARTIN GARRIXとかZEDDとかKSHMRとか、結構すごい人が出るみたいなの」

フェス! 水族館を訪れたのよりは近い記憶だけれど、それでももう10年は行ってない。旅の思い出、リゾートの思い出、セントーサの思い出だ、この誘いは乗るしかないだろう。

「行く!」

zoukの人気DJの音と光で弾ける夜

20170213_singapore_17.jpg

20170213_singapore_18.jpg
2016年12月9、10日の2日間開催された『ズークアウト2016シンガポール』

昼のシロソビーチにまた戻ってきた。が、昼とは打って変わった雰囲気。エントランスにいても聴こえる重低音に、気持ちが逸る。

「From Japan? コンニチハ!」

日本語で挨拶をしてくれたチケットもぎりのお兄さんに「イエス!」と返事をし、2人してビーチにセットされたステージに向かって急いだ。ステージから放たれるネオンの勢いといったら。私たちは、あっという間に、正面からガンガン届く音のシャワーに包まれた。

20170213_singapore_21.jpg

20170213_singapore_19.jpg
ギラギラのネオンが放たれる。危険な雰囲気はなく、女2人にちょうどいい。

シンガポールの国旗を掲げて盛り上がる若者、無心で体を揺らす欧米人。

早い時間はローカルの若手DJらが登場するらしい。新星発掘の気分で楽しむのも面白そうだ。

20170213_singapore_20.jpg
12月とはいえ夏の気温なので、リゾートファッションで楽しめるのが嬉しい。

「今日のメインは、最後に出てくるHardwellだからね。でも午前2時半ごろ登場予定だから、はしゃぎすぎて寝ないように!」

忠告している彼女のほうがよほど興奮気味で心配だ。

「こんなに楽しいんだもの、眠くなるわけないじゃない!」

音に負けぬよう叫ぶように返し、私たちは音の波にみずからのまれていった。

取材協力:シンガポール政府観光局

撮影/網中健太

  • facebook
  • twitter
  • hatena

    おすすめ

    powered byCXENSE

    メールマガジンにご登録いただくと、 MASHING UPの新着記事や最新のイベント情報をお送りします。

    また、登録者限定の情報やイベントや座談会などの先行予約のチャンスも。

    MASHING UPの最新情報をご希望の方はぜひご登録ください。