離婚2回、婚約解消2回、まだ再婚は諦めていない年女4巡目。世間から見ればとっぷり熟女だが、愛する男の前では乙女にもなる。大人になったからこそ語れる女の本音と、大人だからこそ迷走する日々を語るシリーズです。
およそ1年前。あたしはネット婚活市場に足を踏み入れた。
47歳独身。戸籍上はバツイチだが、入籍婚より長い事実婚も経験している。婚約解消に至っては、20歳と直近(44歳)の2回もやってしまったという、およそ経歴的には恥の多い人生を送ってきた。
そんなアラフィフ熟女でもまだ需要はあるのか──そんな好奇心が、ネット婚活にチャレンジする浅はかな動機だった。
作家という商売柄、あたしは体験取材をすることが多い。ここ数年は「熟女でもまだイケるのか」をテーマに、興味の赴くまま、さまざまなことに首を突っ込んできた。本題とずれるのでここでは割愛するが、45歳のときにクラブホステスを秘密裏にやっていたこともある。
今回、某婚活サイトに潜入取材として登録した際、あたしはプロフィールを詐称した。年齢、婚歴(子なしバツイチ)、居住地(東京)、ペット(犬)あたりまでは事実を記載したが、職業(フラワーアレンジメント講師)、趣味(料理)については完全に嘘だ。職業は作家だし、料理はむしろ苦手である。
職業をフラワーアレンジメント講師にしたのは、女らしいジャンルであることと、生徒が女性ばかり=出会いが少ない雰囲気を演出したかったから。趣味を料理にしたのは、単純に「いい嫁になりそう」なイメージを抱かせるためだ。
"盛った"スペックでどれだけ男性からアプローチがくるのか、あたしはワクワクしながら毎日サイトにログインした。
しかし毎日届く男性からのメッセージは、同世代から50代の冴えないオッサン(失礼)ばかり。食指をそそるような男は皆無で、あたしはガッカリした。
そのサイトでは、有料会員になるかオプション料金を払わなければ、相手にメッセージを送ることはできない。だからこそ、わざわざメッセージをくれた男性への感謝の気持ちくらいはあった。
しかし返事をしたが最後、あたしは彼らに「なぜあなたには出会いがないのか」というアドバイスや、アピール下手なプロフィールの添削をしかねない。無料でそんなお節介はしたくないので、申し訳ないが華麗にスルーさせていただいた。
いくら「いい嫁になりそう」な盛り具合であろうと、枯れる寸前の花に寄ってくるのは微妙なオッサンばかりという現実。年収だけはそこそこあっても、それ以外のところにすべて目をつぶれるかといえば、やっぱり難しいわけで。
希望年齢25歳~60歳、希望年収350万以上という設定は、決して高望みではないはず。それでも登録者のボリュームゾーンである30代(のイケメン)からのメッセージが皆無だったことに、あたしは改めて己の市場価値を知った。
もちろん、そんなことで落ち込むあたしではない。なぜならそれは詐称した「あたしではない」プロフィールでの結果だったから。
誰ひとり「会ってみよう」と思う男がいない──メールだけの潜入取材がしんどくなった頃、あたしは職業と趣味を正直ベースのものに変えた。自己PR欄も、物書きならではのウィットに富んだ内容にしてみた。
するとどうだろう。以前は皆無だった20代や30代からのメッセージが届くようになったのだ。「なぜこんなところに?」と問いたいほどのイケメンもやってきた。
やはりプロフィールの詐称はよくない。だが「素の自分はまだまだイケる」という勘違いを再び増長させてしまったのは、あたしにとって功罪だったかもしれない。
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image via Shutterstock

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