前回、いわゆる3高エリートとリアルで会ったあたし。でも、ついついジャッジすることばかり意識してしまって......。大人になったからこそ語れる女の本音と、大人だからこそ迷走する日々を語るシリーズ vol.8。
恋愛をテーマにしたコラムやエッセイばかり書いてきたあたしは、商売柄いろんな世代の男女に取材やリサーチを行ってきた。だから恋愛偏差値が年齢に比例しないことくらい、百も承知していた。
とはいえ、恋愛経験が少なくても、40年以上生きていれば、いいかげん異性との接し方も慣れてくる。異性の友達を含め、デートくらいは数をこなしているだろうと思っていた。少なくとも、過去あたしが収集した限りのデータでは。
しかし婚活市場には"例外"もいた。
ときに、"真面目"が悪い方向へ発揮されることも......
登録していた婚活サイトは、クレジットカード情報や運転免許証のコピーなど「身分を証明できるもの」を提出している人のプロフィールに所定のアイコンが付く仕組みだった。当然ながら、そのアイコンがついていれば「年齢を詐称していないこと」も証明される。
どんなサイトでも同じだと思うが、女性がネットの出会いで危ない目に遭わないためには、怪しそうな人を迂闊に信用しないことだ。
たとえ好みの顔や気の合いそうなメッセを送ってくる相手でも、どこか胡散臭かったら会わない。少しでもリスクを回避するためには、あらかじめ顔写真を何枚も送ってもらったり、先に電話で話しておくなど、慎重すぎるくらい段階を踏んで距離を縮めるほうがいい。
プライベートな婚活サイトにおいて、メッセのやりとりでもビジネス口調を保っている人は「きっと真面目なんだろうな」とあたしは思っていた。
真面目なのはウソではない。だがその度合いは会ってみなければわからない。
上場企業で法務関係の仕事をしているB氏と会うことにしたのは、穏やかそうな人柄がそのまま顔に表れていたからだった。20年前に離婚した元夫と面影が似ていたのは微妙だったが、根本的な男の好みがずっと変わっていないのだから仕方がない。
B氏は、外見だけでなく中身も元夫に似ていた。彼の「女性への免疫のなさ」は、まるで出会った当時の元夫を見ているようだった。
元夫と結婚したのは24歳。あの頃のあたしは周囲に遊び人ばかりいたせいか、朴訥な元夫のようなキャラが新鮮だった。真面目だし浮気しなさそうだし、夫にするには最適だと思っていた。
しかし真面目すぎて女とあまりつき合っていなかった男性は、その免疫のなさが悪い方向に発揮されないとも限らない。B氏と元夫の姿が重なるうちにフラッシュバックが起こり、あたしは食事の途中で気分が悪くなってしまった。
B氏は女に免疫がないため、終始あたしをどうエスコートしていいのかわかっていない様子だった。レストランだけは選んでくれたが、メニューを決める段階から額の汗をハンカチで必死に拭う有り様だ。
食事中ナイフを2度も落とすほど緊張している彼をリラックスさせようと、あたしはできるだけ会話をリードした。しかし元夫のトラウマがよみがえってからは、ほぼ無言で過ごしてしまった。
B氏は何も悪くない。ただ緊張したままずっと下を向いていたから、目の前の女の顔色が青ざめたことすら気づいていなかったのは減点だ。
「女に免疫がない」からこそ、婚活サイトに登録しているという男性もいるだろう。40代になってもデートすらまともに進行できないB氏のような男性は、大人の女性にリードしてもらうか、同じくらい純情な女性と足並み揃えて進むのがベストかもしれない。
「登録してから女性に会えたのは初めて」とB氏は言っていた。その後、初デートであたしと気まずくなってしまったことが、彼のトラウマにならないよう、祈るばかりだ。
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image via Shutterstock

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