前回、彼との交際がスタートし、紆余曲折あったネット婚活リポートも今回が最終回。婚活したからこそわかった、パートナーの存在意義とは?
信じられないかもしれないが、あたしはずっと「結婚願望が薄い女」だった。
ある程度長く交際していれば、もしかして自分も「この人と結婚したい」と意識するようになったのかもしれない。だがこっちが将来を考えていない段階で相手が先にプロポーズしてきたら、願望を抱く間もなく具体的な話へと進んでしまう。
同棲中に別れたり、結婚しても続けられなかったのは、ひとえにあたしの覚悟が足りなかったから。結婚には勢いも必要だが、勢いだけではいつか破たんする。
どんな結婚生活だとしても、愛し合って一緒になった相手とうまくやっていけず別離となれば、少なからず心に傷を負う。
適齢期を意識するより先に結婚し、あげく離婚となってしまった経験は、再婚願望をなくすほどの痛手をもたらした。その後懲りずに事実婚や婚約をしたのは、ひとえに相手の情熱の賜物だ。
自身がそんな経歴だからか、相手もいないうちに「結婚したい」と婚活を始める人たちの気持ちは、いまいちピンとこなかった。
そんな自分に再婚願望が芽生えたのは、潜入取材で出会った男たちの影響だ。
この歳になって、初めて芽生えた「結婚願望」
婚活サイトで初デートまで進んだ男性のうち、未婚だったのは3名。あとは全員、あたし同様「再婚活」の人だった。
会ったうちの何名かに、あたしは「なぜもう一度結婚したいと思うのか」尋ねた。ディテールこそ違うものの、返ってきた答えは概ね同じだった。
「もう一度、家族を作りたい」
離婚を経験した人は「独りの気楽さ」も「ふたりの楽しさ」も知っている。同様、独りでいる寂しさも、ふたりで暮らすわずらわしさも知っている。
そこであえてパートナーを求めようとするのは、ひとりよりふたりで生きるほうがいいと思ったからだ。
ただ恋愛がしたいのとは違う。彼らは非日常を彩る相手ではなく、日常に寄り添う"家族"を求めているのだ。
未婚でずっと「おひとりさま」生活をしていた人に比べたら、あたしはあまり孤独を味わっていないほうだと思う。だけど「ふたりの楽しさ」を知っているからこそ、独りの寂しさがより強く感じられるのも事実。
求める恋愛のカタチも、昔とは変わってきた。非日常のドキドキよりも、日常に溶け込んだ穏やかな「好き」が、今は心地よく思える。
今のあたしが求めているのは、たぶん家族なんだろう。恋愛の「好き」を抜きに家族を作りたいとは思わないが、恋愛の先に家族を作る=結婚という展望は、ハッキリとあたしの中にある。
48年生きてきて、つき合う前に結婚を意識したのは初めてだ。フィーリングを重視したとはいえ、交際前に「この先結婚するとしたら」という仮定で秘かに相手をチェックしたのも、初めての経験だった。
過去、本能のまま選んできた相手との結婚はギャンブルだった。だが大人になった今、冷静に選んだ相手ならば、よほどのことがない限り結婚してもうまくいくだろう。
どうせ死ぬときは独り。だから「パートナーと共に生きる」時間は尊い
アラフィフ世代にとっての結婚は、若い頃の意識とは大きく異なる。
20代で結婚した夫婦は、人生の半分以上をパートナーと共に歩むことになる。だが50代から結婚生活をスタートさせた場合、もう一緒にいられる時間はそう長くはない。
どれほど長生きしようと、パートナーと一緒にいられる最長の時間は、20代よりもはるかに短い。どんなに愛しても、旅立つ刻(とき)は独りだ。
だからこそ、生きている間くらいは誰かと一緒にいたい。愛する男と共に生きていきたい。
あたしにとっては、それが「結婚」なんだ。
<終>
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photo by Getty Images

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