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破天荒なアメリカ人禅僧と僕の共通点/映画『禅と骨』ウエンツ瑛士さんインタビュー

破天荒なアメリカ人禅僧と僕の共通点/映画『禅と骨』ウエンツ瑛士さんインタビュー

平和な時代のなかで誰かが敷いたレールの上を進むことは、何よりも安定感を得られるかもしれないが、道なき道を自らの力だけで歩んでいる人の生き様には、やはり刺激を感じてしまうもの。そこで、そんな欲求を満たすにとどまらない異色のドキュメンタリーとして、まもなく公開される映画『禅と骨』が話題となっている。

本作の主人公となるのは、横浜生まれの日系アメリカ人禅僧であるヘンリ・ミトワ。これだけでも「一体何者だろうか?」と興味が湧いてしまう人も多いはず。1918年にアメリカ人の父と新橋の芸者だった母との間に生まれ、単身で渡米した際には日系人強制収容所に収監。

その後、日本に帰国してからは、さまざまな日本文化に身を投じ、54歳にして京都の天龍寺で僧侶になった人物である。文字通り波乱に満ちた人生を駆け抜けた男だが、その魅力について、ドラマパートで青年時代を演じたウエンツ瑛士さんにいまの心境とあわせて語ってもらった。

固定概念がなく、未来を作っている人だと感じた

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今回は、ヘンリさんの若い頃のパスポート写真を見た監督から顔が似ているということもあって、オファーを受けたというが、これほどまでに複雑なキャラクターの役作りで意識したことは?

「ヘンリさんがどんなに破天荒だったとしても、そういう部分が見えるということより、色んな見方ができるようにしたかったので、あくまでもヘンリさんの何層かあるうちの一層でありたいと思っていました」

瞬間瞬間でまるで違う顔を見せる人物だけに、観る人によってもその印象は大きく異なる。では、ウエンツさんの目にはどのように映っていたのだろうか。

「自分を信じてやまない人だなと思いました。固定概念がなくて、世の中の枠に囚われていないので、みんながよしとする価値観の輪を広げてくれる存在。たとえば、家族だから愛してやまないけど、でも一生愛し続けなきゃいけないというわけではない。

僕も以前は家族とは常に仲良くしないといけないと思っていましたが、ヘンリさんみたいに大事にできない瞬間もあるんだというのを見てからは気が楽になって、逆に前よりも大事にできるようになりました。ヘンリさんは僕よりも昔の人間なのに、ずっと先の未来を作ってる人物という感じがあるんですよね」

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知らず知らずのうちに、人は社会が作った価値観に自分を合わせて生きてしまいがちであり、それを打ち破るにはそれなりの勇気と労力が必要だと感じてしまう。

しかし、次々と常識を覆すヘンリさんを見ていると、自分の心の声に従って生きることが本来の姿であり、それこそが人生の醍醐味なのではないかと感じさせられるほど。ウエンツさんもこの作品と出会ったことで、ある変化があったという。

「こういう役をやらせてもらったというのもあって、興味のあることには突っ走って行くようになりましたね。そうすると、多少周りにも迷惑がかかることもあるんですけど、でも不思議なことにそのおかげで気持ちが充実して、それ以外のことがうまくいくようになる。

そうすると、他のところで恩返しできたりするんですよ。そういう思いもしないことって、やってみないとわからないこともあるんだなといまは思っています」

周りを巻き込む激しいヘンリさんと、優しくて爽やかなウエンツさんとでは、同じドイツ系アメリカ人の父と日本人の母のもとに生まれたこと以外は正反対のようにも思われたが、実は似ていると感じるところもあったという。

「意見とか考えが変わったときに、少し前に言ったことを忘れている感じはちょっと似ているなと思いました。しかも、まったく悪気がないんですよ(笑)。

でも、自分にとってその瞬間にいい選択をしているだけで、後ろに落としていったものがいいとか悪いとかはあんまり気にしないんです。そういうところは同じかなと思いますね」

愛されキャラとして人気の理由は、相手の話を聞く力

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ヘンリさんもまた、利害に関係なくそのときそのときの自分に正直に生きていた人といえる。そして、もうひとつ2人の共通点を上げるならば、何よりも周りから愛されていること。

幅広い層から人気を誇るウエンツさんも、4歳でモデルデビューをはたしてから、キャリアは27年以上となるが、これほど長い間、第一線を走り続けられる秘訣についても探ってみた。

「自分では第一線にいるとは全然思ってないんですけど、ここ何年かで意識するようになったことは、共演者や仕事仲間でも、『まずは相手が思っていることや考えていることを聞く』ということですね。ときには、おかしいなと思うこともあるんですけど、それでもすごく聞くようにしています。

そうすると、途中からそういうのが面白くなってくるんですよね。以前はちょっと義務的だったときもありましたけど、初対面の人でも相手のステキなところを引きだせたらいいなとか、カメラが回っていなくても思うようになっているので、職業的なところから自分の日常にも降りてきた感じです。いまはそういうことが楽しくなってきたので、年数はかかりましたけど、それが秘訣かなと思っています」

取材中も周りに対して細かい気遣いが自然とできるウエンツさんの姿からは、相手の気持ちを汲みとる意識が体に染みついていることを感じさせる。現在は数かずの人気番組でレギュラーを持つだけでなく、舞台や音楽にとにかく多忙な日々を送っているが、どのような方法で息抜きをしているのかも聞いてみた。

「死んだように眠りたいので、1日の動きを多くして、異常に疲れるまで動くようにしています(笑)。僕にとっては、それがリラックス方法かもしれないですね。なので、家に帰って眠くなかったら、そこから普段やっているタップやバレエを家ですることもあります。そうやって寝ると、眠りが深くなるので、睡眠時間が短くても、かなり回復しますよ」

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毎日を全力で過ごすことで、仕事やプライベートを充実させられる上に、質のよい睡眠が取れるのならば、働く女性にとってもある意味理にかなっている方法なのかもしれない。

最後に、ウエンツさんから「この作品を観るとヘンリさんにパワーを吸い取られてしまうので、ちゃんとご飯を食べてよく寝た次の日に、この映画と戦う気持ちで劇場に行ってください」というメッセージもあっただけに、ウエンツ流リラックス術で力を蓄えてから、鑑賞するのがおすすめ。

信念を貫き、愛憎渦巻くヘンリ・ミトワの生き様は、観る者の心だけでなく骨の髄にまで衝撃が駆け巡りそうだ。

禅と骨

監督・構成・プロデューサー:中村高寛ドラマパート出演:ウエンツ瑛士、余 貴美子、利重剛、伊藤梨沙子、チャド・マレーンほかナレーション:仲村トオル配給:トランスフォーマー©大丈夫・人人FILMS2017年9月2日(土)より、ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルほか全国順次公開[禅と骨

撮影/柳原久子 文/志村昌美スタイリスト/渥美 千恵ブランド名:ブルックス ブラザーズ レッド フリース問い合わせ先:ブルックス ブラザーズ ジャパンヘアメイク/Aico

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志村昌美
映画宣伝マンとして洋画や邦画の宣伝に携わったのち、ライターに転向。イタリアとイギリスへの留学経験を経て、日・英・伊・仏のマルチリンガルを目指しながら、現在は海外ニュースや映画紹介、インタビューなどを中心に女性サイトや映画サイトで執筆中。女性目線からみたオススメの映画を毎月ご紹介していきたいと思います! 日々の試写の感想などをつぶやき中:https://twitter.com/masamino_19

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