歳を重ねれば重ねるほど、身も心も着飾ることばかりを考えてしまい、自分らしくいることの大切さを忘れがち。そんな女性たちが憧れる存在といえば、いつも自然体な魅力を放っている女優の永作博美さん。46歳となったいまなお、まったく年齢を感じさせない姿は同世代の女性たちから羨望の眼差しを受けているのもうなずける。
まもなくWOWOWにて放映が開始される「連続ドラマW 沈黙法廷」で主演を務めている永作さんだが、本作で演じているのは老人の連続不審死事件の容疑をかけられてしまう謎の女。そこで、この作品を通じて感じた思いや仕事への向き合い方、そして圧倒的な人気を保ち続ける秘訣について語ってもらった。
さまざまな経験を積んだいまだからこそ演じられる役
今回は感情の起伏がない地味な女性の役に挑んでいるが、この役柄に対してはどのようなアプローチを心がけたのだろうか。
「私にとっては、紙一重の際どいところに入っていくような新しい挑戦だと思いました。セリフが少ない分、普通に喋るということがすごく難しく、どんな声や音量なのかというのがわからなくて、一言を発するのも結構怖かったですね」
難度の高い役でありながらも、永作さんが演じることでキャラクターの持つ多面性に説得力が生まれ、「この女性は悪女なのか淑女なのか」と観る者を惑わせる。そんななか、本作を通じて"人との距離の取り方"を考えるきっかけになって欲しいと話している永作さんだが、自身が人と付き合うなかで気をつけていることは?
「まずは人に対する先入観です。そういうものは排除しているつもりでも、周りからこういうことらしいよって言われると、しっかりインプットされていなくても、潜在意識みたいに残ってしまい、それが積み重なってリアルになることがありますよね。だから、人と会ったときに感じることをより正確にジャッジしていきたいですし、自分から発する言葉というのもより慎重になっているとは思います。みなさんも会社や友人関係においての距離感は、どこまで信用していいのか探りを入れていると思いますが、人らしい豊かな生活が送りたいと思う反面、そういう風になってしまうのは残念なところですよね」
今回、市原隼人さん演じる年下の男性から一途に想われるという女性ということもあり、人との出会いが与える影響の大きさについても改めて考えさせられる。永作さんにとって何かを与えてくれる存在とは?
「私の場合、幸いにしてそういう出会いは毎日ありますね。たとえば、近所で会った人からにこやかに挨拶されたたけで、目の前がパッと明るくなりますし、誰かとたわいもない話をできることをうれしく思ったりできるからです。日々のそういう何気ないことから気づかされることが多いというか、それがすべてかもしれないと思いますね。私はあまり先のことを考えられないタイプなので、いまの一瞬にいいことがあるとそれだけで楽しく過ごしていけるところがあるんです」
日々の暮らしのなかでは、大きな出来事ばかりに気を取られてしまいがちだが、実は些細なことの積み重ねこそが生活を支えているのだと教えてくれる。そんな風にさまざまな経験を蓄積していくなかで、仕事への向き合い方で意識していることは? 「より力を抜きたいなと思いながらも、やっぱり慎重になっている気はしますね。特にこの作品では、考えないようにしながらも注意深くなってしまう自分との葛藤がつねに行われている感じがしています」
仕事へ意味を求めだしてから考え方が変わった
永作さんだけ時が止まっているのではないかとさえ思ってしまうほど、変わらぬ魅力で男性も女性も虜にし続けているが、40代になって変化を感じることはあるのだろうか。
「40代も相変わらず忙しいんだなとは思います(笑)。でも、それって幸せなことですよね。もうちょっと大人になっているかなと思っていたんですけど、実際はあんまり変わらないですし、生きているのって楽しいなとつねに感じています。ただ、私たちは演じる役によって成長させてもらっているので、作品が変わっていくことで、考え方が変わっていく部分はあると思いますね」
そのなかで、女優という仕事に対して、どんなところにやりがいを見出しているのかについても教えてもらった。
「役を選ぶときの基準として、まずは『自分が助けられることがあるかもしれない』と思う役はやりたいと思っています。つまり、脚本では埋まっていない空白の部分、行間とかもですけど、自分がやることでこの役をこういう風にできるかもしれないと感じられたらということですね。なので、何か明確なことではないんですが、30歳を超えたくらいから、『なぜ女優をしてるんだろうか』と仕事の意味を求めだしたときに、そういう方向に向かっていくようになった気がしています」
40代にもなると、ただただ全力で走っていた若い頃とは仕事や人生の意義も変わってくるだけにその思いに共感している読者も多いはず。しかし、これだけ多忙な毎日で仕事とプライベートのオンオフはどうやって切り替えているのだろうか。
「ありがたいことに、私は役に引きずられることがない性格なんですよ。それに、いまは台本を読む時間がないくらい家でも山ほど仕事があるので、家に帰った瞬間にスイッチとか関係なく勝手に切り替わりますね(笑)」
こんなところにも永作さんの自然体でいる姿勢を感じずにはいられないが、女性たちにとってはそこが一番見習いたいところでもあり、一番難しいところでもあるのかもしれない。では、そんな風にありのままでいられる秘訣は?
「誰でも生きているのは絶対に大変だと思うんですけど、笑っていたら大丈夫だと私は思っています。大変なことが起こってしまうのはしょうがないことであって、そこで笑わなくなってしまう方がダメだと思うんですよ。だから、周りに何と思われようとも、辛いときこそ意識的に笑っていると、とりあえず前に進めるような気がします。そうやって気持ちが楽になれば、胃や脳も働いて活力が生まれるし、新しいことを考えられるようにもなりますよね。何よりも止まってしまうことがよくないので、頭がいっぱいになったら、息を思いっきり吐いて深呼吸して笑うことが大切だと思います!」
これからも同世代の女性たちの指針的存在であり続ける永作さんの今後については、もっとも興味が湧くところ。いまは40代女性の間でセカンドキャリアを考える人たちも増えてきているだけに、女優として成功を収め、2015年にはカフェのプロデュースもされたことがあるという永作さんがどのような未来予想図を描いているのかも聞いてみた。
「まだまだやりたいことはいっぱいあるんです! ただ、いまは仕事があるので、もう少し落ち着いたらかなとは思いますね。現時点ではまだ構想中なので、『やってみたいことはいろいろある』としか言えないんですけど、いまの年齢でもわからないことがこんなにあるんだと感じているので、多分私は死ぬまでいろんなことを勉強し続けるんだろうなと思っています」
いるだけでその場の雰囲気を明るくさせてしまう屈託のない笑顔の裏にあるのは、周りには感じさせないような努力。それこそが多くの人を惹きつけ、絶大な人気を誇る理由なのだろう。永作さんのようなバイタリティ溢れる聡明な女性を目指すなら、まずはどんなときも笑顔を絶やさないことから一歩を踏み出してみては?
連続ドラマ W 沈黙法廷 (全5話)
9月24日曜夜10:00 第1話無料放送 [WOWOWプライム] 出 演:永作博美、市原隼人、大倉孝二、臼田あさ美、 甲本雅裕、北村総一朗、杉本哲太、田中哲司ほか 原 作:佐々木譲『沈黙法廷』(新潮社刊) 脚 本:尾崎将也、三浦駿斗 監 督:村上牧人、東田陽介 音 楽:遠藤浩二
撮影/柳原久子 文/志村昌美

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