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パリ16区イヴ・サンローラン美術館で、天才クチュリエの世界にひたる

パリ16区イヴ・サンローラン美術館で、天才クチュリエの世界にひたる

ジョルジュ・サンクにシャンゼリゼ。あらゆる通り、地下鉄構内、バス。いまパリの至るところで見かけるのが、セピア色の繊細そうな男性のポートレート。

20世紀を代表する「モードの帝王」、イヴ・サンローランの若かりし日の姿を写したポスターです。

天才クチュリエの栄光を支えた場所が美術館に

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2017年10月3日に、パリ16区に「Musee Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン美術館)」がオープンし大盛況です。長蛇の列は美術館の幅を超えて次のブロックまで続きます。

待ち時間1時間以上、それでも並ぶ人が続々。この美術館に対するパリの関心を感じました。

サンローランが、公私にわたるパートナーであった実業家ピエール・ベルジェとともにオートクチュールサロンをパリ、スポンティーニ通りにオープンしたのは1962年。

そして、成功を収めた彼らは、サロンを1974年7月14日(フランス革命記念日)にアベニュー・マルソーのナポレオン3世様式の邸宅に移します。

2002年10月のサンローランの引退までカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ多くのセレブリティが訪れたであろうサロン。今回、彼の栄光と足跡をたどる美術館として生まれ変わったのです。

「シック」を絵に描いたような瀟洒な建物が並ぶエリア。枯葉が埋めつくす通りを歩けば、すらっとした美青年であった彼とすれ違いそうな錯覚に陥ります。

今もなお輝き続けるタイムレスなコレクション

美術館は4フロア、12のセクションに分かれており、サンローランのファッションデザイナーとして軌跡のほか、ともにモード界に変革をもたらし、50年に及ぶパートナーであったピエール・ベルジェとのユニークな関係についての展示があります。

エントランス左手に位置する、クライアントのフィッティングを行っていたというサロンでは、彼のコレクションをまとめたビデオを鑑賞することができます。

ビデオにはスーパーモデルたちがランウェイを歩く姿が登場し、ファッションが一番華やかだった時代の空気を感じとることができます。BGMとしてバッハのほかに、坂本龍一の音楽も登場し、華麗で繊細な彼のコレクションのヒストリーを盛り上げていました。

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エントランス右手から始まる展示部門は、「僕たちは20世紀最大のアーティストだ」とサンローランを讃えたアンディ・ウォーホルによる彼のポートレートでスタートします。

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オートクチュールショーのハイライトであるウェディングドレスをはじめ、彼の代表的な作品のアーカイブ。

そのほとんどが2004年から2016年にかけてメトロポリタン美術館など各都市で開催された展示で、すでに私が目にしたものであったものの、あらためてこの小規模な美術館で見るとその繊細な手作業の技に感動を覚えます

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作品のなかでも特に有名なのが1965年に発表された、オランダの画家ピエト・モンドリアンの画風に着想を得たミニドレス。いま見ても強烈なインパクトでまさにタイムレスな作品です。

服はシンプルに、アクセサリーはクレイジーにするのが好き」と語っていたサンローラン。

ジュエリーのコレクションは木にメタル、ラインストーンなどの異素材を縦横無尽に組み合わせたものも。彼のクリエイティブさが存分に発揮されています。

20世紀を代表する天才クチュリエのデスクとは

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最大の見どころと言えそうなのが、2階(ヨーロッパ式だと1階と呼ぶ)のスタジオ。30年近くもこのアベニュー・マルソー界隈を盛り上げていたサロンの心臓部です。

豪華な他の部屋と雰囲気を異にした、明るく静かで、ニュートラルな室内。

サンローランのデスクの上にはまるで今日も彼がここで作業していたかのように、たくさんの鉛筆やガラスのコップ、彼のトレードマークだった縁の太いメガネ、感受性の強い彼がいかにも好きそうなパワーストーンなどが並び、天才をつくるエレメントを観察できました。

背後のボードには、色見本の他、カトリーヌ・ドヌーヴの写真や、アンディ・ウォーホルによる、サンローランの愛犬であるフレンチブルドックの「Moujik(ムジーク)」のアートもありました。

ファッションショーの準備段階を感じさせるセッティングにしたというこのスタジオ。イブの他に6、7名がこの場所で毎日創作に打ち込んでいたそうです。

美術館では、リボン、ボタン、生地などのサンプルのほか、それだけで絵になるようなオリジナルスケッチや、ショーのプログラム、コレクションボードなども展示してあり見応え十分です。

公私にわたるパートナーであったピエール・ベルジェがオープンを待たずに先月なくなり、美術館はベルジェの遺産となりました。

これまで3度も映画化されたサンローランの美しくドラマティックな人生と、この瀟洒な館。この秋のごほうび旅をすれば、心を存分に満たしてくれるはずです。

Musee Yves Saint Laurent Inaugural Display

期間:2018年9月9日まで場所:Musee Yves Saint Laurent(Paris 5 avenue Marceau 75116 Paris - France)営業時間:火~日/11:00~18:00(最終入場は17:15)、金曜日は21:00閉館(最終入場は8:15)定休日:月曜 、元旦、5月1日、12月25日

※2017年10月19日、モロッコのマラケシュにもイヴ・サンローラン美術館オープン。

Musee Yves Saint Laurent

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神田朝子
NY系東京人のライター/ピアニスト。 立教大学法学部を卒業後、外資系メーカーに勤務。2009年に渡米し音楽修行の傍らライターデビュー。2018年春に帰国。 得意分野はファッションやトレンド。楽しいことを探して東京を漂流する様子はInstagramでほぼ毎日更新中。 英語で学ぶ音楽教室「epiphany piano studio」主宰。

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