ふっくらした手すきの紙にシルクスクリーンの多色印刷、そして製本までもがハンドメイドの美しい絵本。南インドのちいさな出版社「タラブックス」が、今、世界の注目を集めています。
絵本づくりから社会や働き方を変革する
タラブックスは、1994年、南インドのチェンナイに生まれた出版社。創設者で発行人のギータ・ウォルフと、共同発行人でもあるV・ギータはともに女性で、出版や教育などにかかわる活動を行っています。
タラブックスの出版物は、今や世界で計90万部以上も刊行。なかでも中央インドのゴンド民族のアーティストが神話的世界を描いた『夜の木』は、2008年イタリアで開かれた「ボローニャ国際絵本原画展」でラガッツィ賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ています。
印刷技法や造本の妙に目を奪われがちですが、タラブックスの真髄は、その編集方針にあるようです。まずは本づくりのアイデアが生まれると、インド各地に調査に赴むき、民俗画家と出会い、彼らとワークショップを繰り返しながら時間をかけて本づくりに取り組むのだそう。
このことは、良質なプロダクト生産だけでなく、インド社会のあり方に一石を投じるアクションにもつながっているはず。
とかく所得や地域、教育において格差が深刻なインド社会では、高等教育を受けてない農民や技術者などに正当な対価が支払われないという社会背景があります。そこでタラブックスでは、民俗画家たちに著作権の概念を知らせるなど、「誰もが平等である」という環境を作り、よい社会への変革を目指しているのです。
この現場の問題とじっくり対峙して、納得するものを生産し、世界を変えていくという姿勢は、スモールパブリッシングの枠組みを超えて、私たちの仕事の取り組み方にもヒントを与えてくれそうです。
タラブックスの全てに触れる展覧会&シンポジウム
板橋区立美術館では、そんなタラブックスの出版活動を、原画・映像など300点近い資料と共に紹介する「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展を11月25日より開催します。
また、併催シンポジウム「世界を変える本作り」では、ギータ・ウォルフさんの基調講演のほか、アフロヘアーがトレードマークのフリーランサー稲垣えみ子さん、画家・装丁家の矢萩多聞さんなど魅力あふれる7名の登壇者が、これからの本のあり方を話し合っていきます。
手仕事とイノベーションの未来を考える絶好の機会をお見逃しなく。
世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦
場所:板橋区立美術館期間:11月25日(土)〜2018年1月8日(月)開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで) 休館日:月曜(但し1月8日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日観覧料:一般650円、高校大学生450円、小中学生200円 ※土曜日は小中高校生が無料巡回展:刈谷市美術館(2018年4月21日〜6月3日)など予定
図録『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』(ブルーシープ刊)、Amazonほか書店で発売中。
シンポジウム「世界を変える本作り」
11月28日(火)14:00〜18:00会場:コクヨホール(港区港南1-8-35) 料金:参加費1,000円(同時通訳あり、要事前申込、定員300名)※申込が定員数に達したため、キャンセル待ちのみ受付中。問い合わせ:http://bluesheep.jp
写真/吉次史成
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