新しい年の始まり。お正月はいつも忘れてしまいがちな日本の心や和の伝承についてあらためて意識する機会となる。大掃除をした後はお飾りや鏡餅をしつらえる。年越しそばを食べ、荘厳な除夜の鐘にゆく年を振り返り、くる年の幸運を思う。初詣で清々しい気持ちになり、おせち料理に舌鼓を打つと「ああ、日本っていいなぁ」などとしみじみと思う(ほんの数日前にはクリスマスを楽しんでいたのに、変わり身の早いところはご愛嬌、笑)。
お正月は受け継がれていくものの価値や意味について考えるきっかけとなる行事やしきたりがたくさんある。年々、齢を重ねるごとに日本の美しい伝統をちゃんと体感したり、体現したり、そして大切にしたい気持ちが高まってきている。
伝統に新しい解釈をもたらす
そんな折、毎年簡略化したおせちを作っていたけれど、本格的なおせちに挑戦したいと思わせる素敵な御重に出会った。輪島塗の作家、赤木明登氏の作品だ。これまで見たことのある御重とはまるで違う、モダンでシャープな佇まいは衝撃的とも言えるほど。これがあったら絶対に新しい感覚の素敵なおせち料理が出来そうだ。インスピレーションを掻き立てるその様に、心を奪われてしまった。赤木氏の他の作品も、技法は輪島塗であるのに、従来のものとは一線を画するデザイン力が加わり、新たな魅力が加味されている。伝統工芸に新しい解釈を持ち込むセンスと才能に感服、そしてこれこそが正しい伝承の形ではないかと思う。
進化なくして伝承なし
ネットの普及によって、様々な価値観や情報が多方面からどんどんと押し寄せる昨今、アップデートは必須である。あったものをそのまま伝えていくのではなく、価値あるものとして受け継いでいくことがこれからはもっと求められていくのではないだろうか。古き良きものでも、今に通用する魅力を持ち続けていなければ、いつしかそのものの存続は難しくなるだろう。伝承はこれまで以上に進化なくしては成り立たない時代になってきたように思う。
変わらずあり続けるということは、変わらず変わり続けることで初めて成り立つ。色あせない魅力を放つとは常に新しい側面を削り出していくことなのかもしれない。そして伝承していくのは私たち一人一人。しきたりや文化を大切に伝えていくことは大人の嗜みと愉しみの一つではないかと思う。
撮影/柳原久子

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