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誰かの支えになる香りを世に出したい/ライオン株式会社 高橋典子さん

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脳機能や自律神経にまで作用するといわれる「香り」。ライオン株式会社の香料科学研究所で、ヒトに心地よい香りとは何かを日々研究しているのが高橋典子さんだ。

300種類もの香料素材を記憶する高橋さんが目指すのは、「24時間心地よくまとえる香り」。香りのプロとなるまでの軌跡や、市場で際立つ商品を生み出すノウハウを伺った。

厳しい特訓で香りのプロへ

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大学卒業後、ライオン株式会社の技術開発系研究所のスタッフとなり、主に髪の毛の構造を研究していた高橋さん。枝毛を防ぐ仕組みやキューティクルを整える化合物をミクロの視点で分析する、いわゆる「基礎研究」がキャリアの出発点だった。やりがいのある仕事だったが、いつしか別の欲求が目覚めはじめる。

もっとお客様とダイレクトに関わりたい、と。製品の基礎研究ではなく、じかに反応がもらえる開発研究をやりたくて、全く畑違いの香料科学研究所に異動希望を出しました」

希望は叶えられたものの、試練はそこから始まった。この仕事には、頭脳だけでなくもっと身体的な能力――つまり、何百種類もの香りを嗅ぎ分け、瞬時に構成要素を分析する嗅覚が求められる。半年間にわたり、無数の香料素材とそれらが織りなす香調を記憶していく、単調かつハードな特訓が続いた。

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香りを記憶するコツは、身近なものに紐づけること。例えば、ある有名な香水には微量の『アルデヒド』が含まれますが、これは頭皮のようなにおいなんです。そんなふうに香りの記憶を蓄積していって、一週間に一度テストを受ける。成績が低いと『向いていない』とみなされるので、研修期間は必死でしたね」

嗅覚を鍛え上げた結果、日常生活では悩みもある。夏場の通勤電車では、意識的に「鼻を止める」という高橋さん。

「嗅がないって決めるとできるんですよ。よい香りだけでなく悪臭分析もしますから、嗅覚はコントロールできないとつらいんです」と笑う。

研究者目線を痛感した失敗

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研修期間を終え、晴れて開発研究に携ることになった高橋さん。制汗剤「Ban」など主力製品の香料開発に加わり、主担当として開発を主導していくなかで、築いてきた自信が揺らぐ出来事があった。

それは2009年から2012年にかけて、入浴剤「バストロジー」を開発していたときのこと。通常ラボで香りの評価をするときは、トイレほどの個室が並ぶ閉鎖空間のなか、風呂桶に入浴剤を溶かしてチェックする。入浴剤と湯の「比率」は、家庭の風呂場と同じ。理論上はこれで確実な評価ができる、はずだった。

「ところがサンプルを市場調査したら、ラボでの私の評価とお客様の反応が全く違っていたんです。簡易的な空間ではなく、お客様と同じ環境で、同じ手順でチェックしなければダメなんだと......。自分の研究者目線に気づかされました

以来「これはいける」と睨んだサンプルは、自宅でチェックすることに。2014年から担当になった柔軟剤「ソフラン アロマリッチ」の開発品も、何度も家に持ち帰り、洗濯を繰り返した。

「夫と小学4年生の息子と3人暮らしなので、すぐに洗濯物がなくなっちゃう。でも家庭の洗濯物って、たくさんのものを一緒に洗うから、やはりラボとは違うんですよね。洗い上がりに洗濯機を開けたときの柔軟剤の香りも、ラボよりずっと強く感じる設計のはずが思ったほど強く感じないこともある。気づかなかった課題を抽出して改善するには、実際に家庭で試すのが一番だと実感しています

柔軟剤ほど難しいものはない

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1月31日より新発売の「ソフラン アロマリッチ フェアリー」。すずらんの花とりんごと洋梨を生かした爽やかな香りが特徴。

現在「アロマリッチ」は、天然のアロマオイルを配合。ナチュラル感があり上質な香りが続く柔軟剤として、多くの女性から支持を得ている。柔軟剤の香りに含まれる香料素材は、だいたい200種類から300種類。高橋さんたちは、企画部門である事業部や数千種類以上の素材を持つ香料会社と相談しながら、多くの素材を組み合わせて香りを作っていく。

アロマリッチ』が目指すのは、洗い立ての清潔感の、その先を行く香り。女性らしさとか、ワクワクするような気分とか、気持ちに作用する香りを作りたいんです」

制汗剤、入浴剤、ボディソープ。これまで数多の香料開発を手掛けてきた高橋さんをして、「もっとも難易度が高い」と言わしめるのが柔軟剤。洗い上がりに洗濯機を開けた瞬間、洗濯物を干しているとき、乾いた洗濯物を畳んでいるとき、衣類を身につけたとき、日中、衣類を脱ぐときと、さまざまなシーンで「適切に香る」ことが求められるからだ。

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すべて1月31日から新発売。左から、ロマンティックな気分をイメージしたスイートフローラルアロマの香り「ジュリエット」、明るく前向きな女性をイメージしたハッピーフルーティアロマの香り「スカーレット」、華やかで凛とした女性をイメージしたロイヤルローズアロマの香り「ダイアナ」、上品で清楚な女性をイメージしたピュアフローラルアロマの香り「ソフィア」、透明感のある爽やかな女性をイメージしたウォータリーフラワーアロマの香り「フェアリー」。

「柔軟剤は、洗濯機をあけたときに一番強く香ります。それが水分と一緒に揮発してしまうので、一日中『よい香り』を長続きさせるのは至難の業。しかも日本人が好む自然なアロマやフルーティな香りは軽く、パウダリー系やウッディ系の重い香りよりも飛びやすい。研究を重ね、香りを決めるだけで3~4か月は必要でした」

苦労の末に誕生したのは、高橋さんが理想とする「24時間心地よくまとえる香り」。香水よりもさりげなく、ふとした瞬間にふわりと香る。そのおだやかな心地よさこそ、日本人が求める香りの姿だと高橋さんは語る。

いつか「香りのビッグデータ」を作りたい

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国が違えば、好まれる香りの傾向も違う。アロマリッチ」は日本人の約80%が好むといわれる香りをベースにしている。高橋さんは将来、今までの研究や調査の蓄積をビッグデータのように活用して、お客様にぴったりの香りを提案し、なぜその香りが好きなのかもさらに解明したいと考えている。

一日100種類以上のサンプルを嗅ぐこともあるなかで、感覚をリセットする方法も学んできた。麻痺してきた鼻を回復させるには、ゼロ地点に戻れる自分の肌のにおいを嗅ぐこと。仕事の悩みやストレスをリセットするにも、自分をゼロに戻してくれる何かを見つけることが大切だと言う。

好きな香りを嗅ぐと、一瞬、心が悩みから離れる。これはとても効果的なリセットになります。私の場合は、やんちゃな息子に付き合う時間もリセットタイム。最初はイライラしていたけど、いつの間にか仕事の悩みが吹き飛んでいることに気づきました」

ストレスは「自分でリセットする」と決めるほど軽くなる、と高橋さん。研ぎ澄まされた感覚でオンオフを操りながら、日本人のための香りを作る日々は続いていく。

アロマリッチ

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高橋典子(たかはし・のりこ)さん

1997年、ライオン株式会社に入社。技術開発系研究所に配属される。2000年に香料科学研究所に異動。調香技術、評価技術、感性工学を駆使して香りを創造し、製品開発を専門的な立場でサポートしている。2009年よりビューティ製品を担当し、制汗剤「Ban」をはじめ、入浴剤、ボディソープ、シャンプーなど主力製品の香料開発を手掛ける。2013年から「アクロン」「香りつづくトップ」など、香りにフィーチャーした液体洗剤を開発。2014年8月から「ソフラン アロマリッチ」担当。現代女性に寄り添った、香りを楽しめる柔軟剤として支持を得ている。

撮影/柳原久子 取材・文/田邉愛理

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