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インタビュー/働くあなたに伝えたいこと

クリエイティブの力を信じて歩んできた/ロフトワーク 代表取締役 林千晶さん

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コンクリート打ちっぱなしの天井に、窓から差し込む光。パーテーションに付箋紙がたくさん貼られた活気あふれるオフィスでインタビューしたのは、株式会社ロフトワーク代表取締役の林千晶さん。

クリエイターとクライアントをつなぐビジネスを、今までもこれからも。まるで天真爛漫な少女のように輝く表情で、歩んできた道と希望に満ちた未来を教えてくれた。

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林千晶(はやし・ちあき)さん

早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王株式会社を経て、2000年に株式会社ロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。その他、 クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD(アワード)」、グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL(マテリアル)」も運営する。

「一年は人の意見を聞かない」と決めた創業前

早稲田大学を卒業後、花王へ入社しマーケティングを担当していた林さん。その後、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科を出て、ニューヨークで記者として活動した。それだけでも眩しく感じるほどのキャリアだが、その後帰国して、起業を志す。

「ニューヨークで取材をしながら、たくさんのカルチャーに触れました。ブルックリンにあるダンボというエリアでは、デベロッパーがアーティストやデザイナーを集め、カルチャーを“つくって”いたんです。とてもかっこいいと思ったし、時代の最先端はアーティストやデザイナーなんだと感じました」

林さんの胸に生まれたのは、「日本でクリエイティブを実現するプラットフォームをつくりたい」という思い。起業しようと考えたが、ビジネスモデルは、あってないようなものだったという。

誰に相談しても、ことごとく『うまくいかないからやめたほうがいい』と言われました。当時はビジネススクールを卒業した人が続々と起業していたドットコム・バブル時代でしたが、お金も信用もネットワークもない私には無理だと思われてしまった。だから、アイデアが形になるまで、これから一年は人に意見なんて聞かない! って思っていました」

「無理」だと言われても起業に踏み切った理由

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そこまで言われても起業に踏み切れた心の中には、どんな信念があったのだろうか。

「アメリカでは起業が特別なことではなかった、というのがひとつ。また、ニューヨーク・DUMBO地域をこの目で見て、クリエイターがいる街は絶対に栄える、と信じていたから。日本では稼げないからと、日本人のアーティストたちもたくさんニューヨークに来ていたので、日本にもアーティストやクリエイターがたくさんいると知っていたのもあります」

日本の街を歩き、はっとしたり心が動いたりするような看板や店構えがあまりないと感じ「この街にはクリエイティブが足りない!」と思った林さん。そのようなシーンで「デザイン」と呼ばないのには理由がある。

クリエイティブは、『生み出すこと』に重きを置いている言葉です。かたや、デザインは課題を解決することに重きを置く。また、デザインは効率や機能性を求めることに近いのに対し、クリエイティブには遊びや実験の要素も含む広がりを感じました

林さんが目指したのは、あくまで「クリエイティブのためのプラットフォーム」。そうして、ロフトワークが誕生した。

FabCafeをつくったことで得たもの

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クリエイターやアーティストと、クライアントをつなぐプラットフォームをWebで実装した。そのサービス運用を通じて、プロジェクトマネジメントの必要性を痛感。世界標準のプロジェクトマネジメントを導入し、ロフトワークが担うようになった。「クリエイティブを流通させる」という創業時から今も続く思いの実現に必要だったクリエイター、クライアント、プロジェクトマネジャー三者の立場がフラットな関係ができあがったのだという。

その後、林さんにとって印象深いできごとは、3Dプリンタなどのデジタル工作機械が手ごろな価格で流通し身近になる頃に、ロフトワークが「FabCafe」を手がけたこと。クリエイターが手軽につくるための機材、材料などを利用できる場所だ。

「それまでは『社会との直接的な接点』がなく、クライアントを経由するしかなかったんです。ところが、FabCafeに直接お客さんが来ることで、リアルな接点ができたのは大きい。また、私たち自身が身体的で物理的な感触を手に入れたのも重要でした。時間もお金も、心理的なハードルも少なくて済むから、ものづくりのトライアンドエラーができる。2017年の末に開催したロフトワーク展では、クリエイターと共に什器や展示物などを自作しました」

「つくる」という行為を外注すると、当然、時間もお金もかかるため、「絶対に必要なもの」しかつくれない。でもFabCafeがあれば、まさに「遊びや実験的な要素も含む」クリエイティブなものづくりを、ロフトワークのメンバーが自分たちでできる。その結果、生み出すことができる表現の幅が確実に広がったという。

毎日ちゃんと料理をすると、忙しい日々をリセットできる

プライベートでは朝の時間を大切にしているという。早起きで、4時半から5時半の間に朝食と昼食をつくるのが日課だ。

どんなに忙しくても、毎日一回リセットすることが大切そうすると自分の軸ができるんです。ここ2年くらい、おいしいものをちゃんとつくるよう心掛けていて。頭もすっきりして調子がいいです。ほかに、ランニングとヨガ、パーソナルトレーナーについてもらって骨格筋も鍛えています」

たくさんの仕事を抱えていて、自らは「うまくバランスが取れているほうじゃない」と言うが、毎日の習慣が心を穏やかにしてくれるのだとか。

好きなことを、興味の赴くままに進めてきたとも思える林さん。これからはどんな目標やビジョンを据えているのだろう。

「渋谷という街に拠点を構えているので、これからもっとおもしろくしていきたい。世界中の人が新しいことを試すときに『渋谷を選ぼう』と思うような街になってほしいです。次の100年をつくる若者を応援するプロジェクト『100BANCH』や、渋谷区のスマートシティプロジェクト『渋谷未来デザイン』にも関わっているので、おもしろくてクリエイティブで、ユニークなプロジェクトを次々と仕掛けていきたいですね」

これからも新しいことに挑戦していく林さんは、いよいよ創業当時の思いだった「街」や「文化」をつくり始める。「もっと日本はおもしろくなる」という林さんの言葉は、そう信じている人にしか見えない世界を見せてくれるに違いない。

Q. お気に入りの化粧品は?

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左からクレーム ドゥ・ラ・メール、ポーラのV リゾネイティッククリーム。気分で使い分ける。

Q. 現在読んでいる本、愛読書は?

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現在読んでいる本は、『The Field Study Handbook』(Jan Chipchase著)。愛読書は『発想法』(川喜田二郎著)。

Q. お気に入りのファッションアイテムは?

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もらったばかりのBlanc Irisのピアス。

Q. 欠かせないスマホアプリは?

LINE、Evernote、Slack。

Q. 1か月休みがあったら何をしたいですか?

手付かずになっている大切な仕事を、じっくりやりたいです。

撮影/柳原久子、取材・文/栃尾江美、企画・構成/寺田佳織(カフェグローブ編集部)

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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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