2018年2月22〜23日トランクホテルで開催されたビジネスカンファレンス MASHING UP。2日目のSPOTLIGHT TALKは、米国の広告業界の第一線を30年以上も走り続けているカリスマ起業家で、商業ポルノではなく一般人が自分のセックス動画をシェアするソーシャルサイトMake Love Not Pornの創始者、シンディ・ギャロップ(Cindy Gallop)さんが登壇。セッション直後のギャロップさんにバックステージでインタビュー!
女性主催のイベントは断然楽しい!
──MASHING UPの印象は?
シンディ・ギャロップ:参加前から女性のエンパワーメント、ダイバーシティ、ジェンダー間の平等に関するイベントだと聞いて、本当に素晴らしいと思いました。実際MASHING UPにはとても感心させられています。まず会場が実にいいですね! もちろん表面的なことではなく。
今までの私の経験から言うと、男性主催のイベントに比べて女性が主催するイベントの方が、断然楽しいのです。男性主催のイベントは大概おもしろみのないホテルを会場に、ありきたりの企業文化の枠組みのなかで行われます。でも女性の主催者は、おしゃれな会場を選ぶ。ですから、来場者は会場に一歩足を踏み入れた段階で、何かいつもと違うなと感じるのです。トートバッグに入って渡されるスキンケア製品なども、とても好みです。こうした演出の全てが気が利いていて、気持ちが盛り上がります。
──ギャロップさんは、初日からずっと熱心に会場をまわっていましたね。
ギャロップ:ええ。様々な分野で活躍する登壇者が、多岐にわたるトピックについて語っている。どのテーマも本当に興味深いし、私が常に推進してきた先進的な考えと共振するものです。オーディエンスも皆熱心ですね、心から楽しんでいるのが表情から見て取れます。ところで、来場者のなかには男性も多いことに気づきました。これはいいことですね、男性もこうした議論に加わらなければなりませんから!
来年はより大規模に、さらに充実した内容で開かれることを今から期待しています。そしてMASHING UPから生まれたムーブメントが社会にインパクトを与えること、そこから具体的な変化が訪れることを期待します。
動画シェアに99.9パーセントがYES!
MASHING UPに登壇するシンディ・ギャロップさん
──先ほどのセッションで、Make Love Not Pornを日本で展開したいという話が出ました。日本で受け入れられると思う確信はなんでしょう?
ギャロップ:これまで中国やインドなど、性をオープンにしない国々で話を聞いてきました。だから言えるのですが、日本のような社会では人々が自分のセックス動画を私たちのプラットフォームでシェアするなんてあり得ない、ということはないと思います。このプロジェクトを始めて9年になりますが、みんなびっくりするほど肯定的です。日本でも動画を投稿する「メイクラブ・ノット・ポルノ・スター」を見つけるのは難しくないでしょう。
ちなみに、こうしたことをやりたがるのは、みな露出狂やセックス狂ということでもありません。makelovenotporn.tvを5年前に立ち上げた時、最初にプラットフォームに載せるコンテンツを探す必要がありました。私とコミュニティ・マネージャーのサラ・ビールは、それぞれ自分の友人知人、そして全くの他人に手当たり次第に声をかけたんです。Make Love Not Pornの企画について話したあと「サイトが開設されたら、あなたも自分がセックスしている動画をシェアしてみたいと思う?」と聞いてみたら、なんと99.9パーセントの確率で答えはイエスでした。え、この人も? と意外に思うような人までです。「まさかあなたがイエスと答えるなんて!」と言いたいのをこらえて真顔を保つのが大変でしたよ。実際には抑圧はそれほど強くなくて、やってみたいと思っている人はいっぱいいるのです。(征服的なポルノではなく愛に溢れたセックスを見たい・見せたいという)私たちのミッションや価値観に賛同し、社会を変化させたいという夢に共鳴してくれることで、躊躇なくイエスと言ってくれるのでしょうね。
変化はボトムアップであらわれる
多くの参加者が熱心にギャロップさんのスピーチを聞いていた。
──なるほど。それでは、具体的に日本でどのような展開を考えているのでしょう?
ギャロップ:インドや中国で計画しているのと同じアプローチになるはずです。日本版をローンチする資金が集まったら、まずは日本人の現地チームを採用します。そして彼らとブレインストーミングをして日本市場で成功するための戦略を練ります。サイトの打ち出し方やデザインなどを、日本人が馴染みやすいものに完全に作り変えます。外国からきたものではなく、日本で生まれたサービスだと思わせることが重要です。インドや中国と同じく、輸入品ではなく、自国のものだと思ってもらいたいのです。ある市場での社会規範や人々の行動様式を変えたいと思ったら、ますはその市場のことを知り尽くし、理解しなければなりません。
──日本人のもつセックス観や取り巻く環境は、欧米とは大きなギャップがあるように感じられますが……。
ギャロップ:ですから、「日本人はこうだ。それを変えるには、こんなアプローチがとれる」ということを考えなければなりません。日本でMake Love Not Pornの話をすると、大概みんな悲観的に「シンディ、あなたは知らないかもしれないけど日本人は……」と口にします。そんなとき、「私が日本人を変えてみせる」と言っています。傲慢だと思われるかもしれませんが、これは30年以上広告業界で働いてきた人間としての発言です。クライアントのために人々の態度や行動様式を変えさせる。これこそが広告マンの仕事です。Make Love Not Pornを日本で開設するとしたら、日本での文化的問題をまずはよく理解したうえで、人々の考え方を変えるにはどうしたらいいか戦略を練ります。
──社会変革としても、ビジネスの可能性としても、実に楽しみな話です。
ギャロップ:私の哲学は「変化が訪れるときはトップダウンではなくボトムアップだ」というものです。立ち上げるとしたら、「Make Love Not Porn日本版」としてではなく、全く新しいサービスとして始めます。日本での展開を大々的に宣伝せず、ひっそりと現地のチーム・メンバーを採用し、オフィスを借りて開発を始めます。そして、今やっているサイトと同じくバイラル性を重視して根付かせます。気づいた頃には広がっていて、とてもいいものだとの認識が共有されるようになっている、というようにしたいですね。
シンディ・ギャロップさん(起業家/MakeLoveNotPorn)
ブランド構築、マーケティング、広告が専門。1998年に広告代理店Bartle Bogle Hegartyの米国オフィスをニューヨークで立ち上げ、2003年にAdvertising Woman of the Yearに選出された。ソーシャル・セックス・プラットフォームMakeLoveNotPornを設立。Twitter「テクノロジー分野で最も影響力のある女性100名」の33位、「広告業界でフォローすべき人物30名」の1位に選ばれている。Twitter @cindygallop
SPOTLIGHT TALK - 自由でパワフル。ビジネスアイディアに年齢制限はない -
MASHING UP 2018年2月23日 10:10 - 10:40 @トランクホテル 1F
シンディ・ギャロップ(MakeLoveNotPorn)
取材/カフェグローブ編集部 通訳/野澤朋代 撮影/野澤朋代(1枚目)、YUKO CHIBA(セッション)
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