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女性エコノミストが少なすぎる。未来への深刻な影響とは [The New York Times]

The New York Times

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米国でも、経済学者やエコノミストなど、経済関連の専門職に就く女性は、男性と比べてまだまだ少ない。全米の大学で経済学を専攻する女子学生の割合が増えていないことから、この傾向はこの先何年も続く見込み。(Jenn Liv/The New York Times)

米国では、過去数10年にわたり、経済学者やエコノミストなど、経済のスペシャリストとして活躍する女性たちが増えてきた。だが今、その増加傾向に歯止めがかかっている。というのは、全米各地の大学で経済学を専攻する学生全体に占める女子学生の割合が過去20年近くの間、伸び悩んでいるのだ。将来、経済の専門家として活躍する女性候補者たちの人材プールは、むしろ縮小し始めている危機すらある。

女子学生の比率の少なさは、どの学術分野でも心配されることだが、経済学の場合、公共政策にはるかに大きい影響を及ぼすため、その影響はより深刻だ。つまり、この先何年も、重要な政策議論の多くが男性の意見に独占されてしまう可能性が高いのである。

経済学を学ぶ女性はどのくらい少ないの?

経済学の分野における、ほぼ全ての教育課程、研究職のキャリアパスの全段階で女性は少数派だ。なおかつ、女性は、進路の決定時に上のステージに進む割合が男性と比べて低いため、キャリアパスの先に進めば進むほど女性比率はさらに低下する。こうした、途中で人材が漏れていく状況は、「水漏れパイプ(leaky pipeline)」に例えられる。それでも、このパイプに入ってくる女子学生の数が増え続けていれば、社会で活躍する女性の経済専門家の数も増加し続ける。しかし、世紀の変わり目頃から、この女子学生の比率自体の伸びが止まってしまっている。

アメリカ経済学会による最新報告によれば、2017年の経済学の博士課程1年目の学生全体における女子学生の割合は32%で、33%であった2000年と同じ水準であった。極端な例を挙げると、全米「トップ20」の経済学部博士課程のうち6課程では、1年目の女子学生の比率が20%未満であった。

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Photo by Gettyimages

こうしたキャリアパスの初期段階での女性比率の伸び悩みは、既にその先の段階に影響をもたらしている。アメリカ経済学会の女性研究者支援を目的とする委員会、CSWEPの調べによると、博士課程を開始する女性比率が減少し始めてから約6年後に、博士課程を修了する女性比率も減少し始め、さらに、その約7年後に、終身在職権のある経済学准教授の女性比率の増加が止まった。

経済学部の正教授の女性比率(現在、博士課程のある経済学部の正教授全体の14%)は、これまで順調に伸び続けてきた。少なくともその要因のひとつは、1970年代から90年代にわたり大学の経済学部の女子比率が増加し続けたことであり、よって、経済学教授の女性比率も今後、横ばいで推移することが予想される。

筆者が国勢調査「アメリカン・コミュニティ・サーベイ」を用いて上記のデータの検証を試みたところ、全学部の合計では、女子学生の占める割合は増加し続け、2016年にはとうとう過半数を超えた。ところが、経済学専攻だけみると、女子比率は1990年代後半にピークを迎えた後、横ばいか減少に転じている。2016年に経済学学士号を取得した女子学生の比率はわずか35%であったが、これは、1980年代初期と同水準である。

学会の男性エリートが女性の機会均等を阻んでいる?

現状をみると、社会でリーダーシップを取り、活躍する経済学の女性専門家は極端に少ない。これまでに、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長を務めた女性は、2月に退任したばかりのジャネット・イエレン氏のみである。その彼女ですら、ハーバード大学のテニュア(終身在職権)を取得できていない。女性の財務長官に至っては1人も誕生していない。大統領に助言する経済学者の集まり、大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めた女性は、イエレン氏を含め過去に3名のみ(しかし、共和党の大統領政権下ではゼロ)。また、全米トップ20の経済学部における正教授の男女比は6対1と、やはり圧倒的に男性が優勢。女性の正教授は、シカゴ大学には1 名のみ、ノースウェスタン大学には1人もいない。

全米中で男女の機会均等に向けた議論が活発化するなか、経済学の世界は果たして真の能力主義と言えるのか、業界内部でもこうした不均衡を問題視する声が高まっている。先日、アメリカ経済学会はその最新報告のなかで「無言の忍耐により、容認しがたい態度が存在し続けた」として学会内にミソジニー(女性嫌い)の風潮があることを認め、それを非難する声明を発表した。また同会は最近、経済学者やエコノミスト向けに「行動規範」を新たに作成した。

女性の視点を政策・方針決定に反映させるために

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Photo by Gettyimages

本来、国や地域の経済政策には、多様な視点や発想が反映される必要がある。女性の経済専門家が極端に少ないという現状は、既に重大な影響を及ぼしている。

2014年に経済学者・エコノミストを対象に行われた調査をみると、プロの間にも男女間の視点に明確な違いがあることがわかる。例えば、「米国の所得を均等に再配分すべき」と回答した女性は優に63%に達したが、男性は45%であった。「政府は大きすぎる」に同意した女性は男性より13ポイント、「政府は規制緩和すべき」に同意した女性は男性より18ポイント少なかった。また「雇用主は従業員に健康保険を提供すべき」に同意した女性は男性より20ポイント、「現在の政策は環境保護よりも経済成長に重点を置きすぎている」と同意した女性は男性より16ポイント多かった。

中でも最も男女の意識差をはっきりと浮かび上がらせたのは、賃金に関する質問であった。「男女間の賃金格差は、教育と個人の職業選択の違いが主な原因である」に同意した女性はわずか14%であったが、男性は過半数の54%であった。

また、経済学者が選ぶ研究テーマについても男女間に違いがある。男性の場合、マクロ経済が圧倒的に多いのに対して、女性は、労働市場、医療・衛生、教育といった分野での活躍が目立つ。経済学会において女性出席者が過半数を占めるトピックとしては、子供の経済学、スクーリング、家族構成、子供の福祉などがある。政府に「経済にもっと積極的な役割」を担うよう求めて嘆願書を提出するのは、女性の経済学者のほうが多いという調査もある。

もし、女性の経済学者が増えれば、こうした問題への世間の関心は確実に高まり、政府の政策・方針決定に女性の発想・視点が反映されやすくなるだろう。逆に言うと、今後、このフィールドに女性の数が増えない限り、経済学の社会はいつまでもグッドオールド・ボーイ(訳注:陽気だが保守的で偏狭な男といったニュアンス)らのネットワークに支配され続けるだろう。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Women’s Voices Are Scarce in Economics/執筆:Justin Wolfers](翻訳:Ikuko.T)

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