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チームビルディング ーチームを変える魔法の言葉−

「最終責任は私がとる」。ザ・リッツ・カールトン東京のチームビルディング


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最高峰のサービスの裏側で繰り広げられる、ザ・リッツ・カールトンホテルの「言葉」にフォーカス。前編に続き、「ザ・リッツ・カールトン東京」チーフコンシェルジュの伊藤正子さんに、ザ・リッツ・カールトン東京流のチームビルディングやメンバーとの向き合い方をうかがいます。

チーム力を引き出す3種のミーティング

女性のコンシェルジュチームを率い、英語での接客やメールの対応、顧客からのリクエストに応えている伊藤さん。お客様の要望は、レストランの予約やツアーガイド、ベビーシッター、歌舞伎やコンサートのチケット、旅行先への交通手段の手配から、こんなものを探しているんだけど……といった質問までさまざま。コンシェルジュデスクは、早番、中番、遅番でローテーションしているため、お客様の情報を共有し、交代時の引き継ぎをいかに正確に行うかがカギになってきます。 コンシェルジュチームでは、部署内さらには社内全体の重要な情報共有のために3つのミーティングを設けています。

1.毎日行われる「ラインアップ」

各部署ごとで、その日の重要事項(VIP対応やイベントの手配など)が記載された資料をもとに行われるブリーフィング「ラインアップ」。ラインアップの資料は全スタッフがアクセスできるようになっており、資料の冒頭に記載される「本日のゴールドスタンダード」と「本日のWOWストーリー」は全世界共通。連絡事項だけでなく、企業理念と世界中のザ・リッツ・カールトンホテルの活躍ぶりが共有されます。

2.月1回コンシェルジュ全員で行う「チームミーティング」

コンシェルジュチームはシフト制のため、全員が顔を合わせる機会を作る必要がある。伊藤さんはチーム全員の日程をすりあわせ、月に1回のチームミーティングを確保。チームの現状や目標、さらにはゲストへのエンゲージについて話し合いをし、作業分担、ときには作業自体の見直しを行う。何か新しいことを決めるときは、必ず全員の意見を聞いた上で決定するようにしている。

3.個人面談「1 on 1」

スタッフとの1対1の面談。仕事のことはもちろん、将来の目標、得意なこと、不得意なこと、困っていることや悩みを聞くための場。まずは、思っていることや悩んでいることを吐き出してもらうための機会と捉えている。フィードバックや注意の仕方は、スタッフそれぞれの性格や考え方を考慮し変えるようにしている。

「最終責任は私がとる」

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伊藤さんが率いるコンシェルジュチーム。左から由良さん、杉山さん、チーフ伊藤さん、廣沢さん。

トラブルが起きたときは、早い段階で報告をするようにと伝えている伊藤さん。とはいえチームメンバーは、トラブルになりそうだと思った段階で報告してくれることがほとんどだといいます。

「クレームが上がりそうですとか、お客様がちょっとご立腹かもしれませんとか、かなり早い段階で相談してくれますね。まずは、お客様の温度感を確認し、話を聞いた上で、本人たちにハンドルしてもらうようにしています。すべて私が引き取ってしまうと、ハンドル能力が育たないですから。でも、最後の責任は私がとるから大丈夫と伝えています」(伊藤さん)

考えてみると「最終責任は私がとりますから」とチームミーティングのたびに言っているかもしれない……という伊藤さん。スタッフのモチベーションを上げることは、マネージャーの最重要課題。

「大げさかもしれませんが、いつでも辞表を出しにいける覚悟でいます。スタッフにこの仕事を伸び伸びと楽しんでもらいたい。目の前にいるゲストをハッピーにする、それだけを考えてほしいから」(伊藤さん)

「怒るは感情、叱るは愛情」

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胸に輝く、日本コンシェルジュ協会の正会員バッジと、ザ・リッツ・カールトンのファイブスターバッジ。ファイブスターバッジはチームビルディングの功績を認められ授与されたもの。

伊藤さんの胸には、2つのバッジが飾られています。日本コンシェルジュ協会の正会員バッジと、ザ・リッツ・カールトン東京の「ファイブスターバッジ」。「ファイブスターバッジ」は、ザ・リッツ・カールトン東京で四半期に一度選ばれる「5つ星社員」の証です。

このバッジを受けたとき、伊藤さんは入社からわずか3か月目だったそう。コンシェルジュチームのマネージャーに抜擢され、チーム作りに貢献した功績が認められました。

「まずはスタッフと距離を縮めるところから始めました。人は十人十色。それぞれ性格も考え方も違うので、ひとりひとりへの対応の仕方を変えるようにしています。叱ったりもしますが、怒るではなくて“叱る”。怒るは感情、叱るは愛情だと思うんです。愛情をもって話したい。どういう言い方が一番伝わるのか、心に響くのか、それを考えてから話すように心がけています」

信頼、尊敬、感謝がチームを創る

チーム力を高めたいとは、リーダーなら誰しも感じる願い。そのために必要なものは、「信頼と尊敬」ではないかと伊藤さんは話します。

個の力が強くても、お互いがきちんと信頼し尊敬し合い、感謝し合っていないと、チームとして成り立たない。みんないいところと弱いところがあるから、それをいかに理解しあって、尊重できるかが大きいのかなと思います」(伊藤さん)

会社の方針として部下に裁量を与えても、直接の上司が部下を信じることができなかったり理念を共有できていなかったら、システムはうまく働かないでしょう。個人の裁量でなにかを実践した場合、予想外の反応が出ることも必ずあるはず。それでも迷いなくチャレンジしてほしい、そんな信頼感を伝えるリーダーの言葉が、常識や通例を超えた新しいチームを生み出す秘訣なのかもしれません。

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伊藤正子(いとう・まさこ)さん

「ザ・リッツ・カールトン東京」宿泊部 チーフコンシェルジュ。航空会社の客室乗務員を経て、某クレジットカードVIP専用のコンシェルジュをつとめ、2015年1月から 「ザ・リッツ・カールトン東京」のコンシェルジュとなる。

撮影/YUKO CHIBA、取材・文/田邉愛理、企画・構成/寺田佳織(カフェグローブ編集部)

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田邉愛理
ライター。学習院大学卒業後、センチュリーミュージアム学芸員、美術展音声ガイドの制作を経て独立。40代を迎えてヘルスケアとソーシャルグッドの重要性に目覚め、ライフスタイル、アート、SDGsの取り組みなど幅広いジャンルでインタビュー記事や書籍の紹介などを手がける。

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