2018年2月22〜23日にトランクホテルで開催されたビジネスカンファレンスMASHING UP。Unleash Yourself (自分自身を解き放とう)のテーマの下、多彩なセッションやワークショップが繰り広げられました。カフェグローブはイベントに密着取材、パワフルな現場の様子をレポートします!
あまたある日本企業のなかで、いわゆる「大企業」に分類されるのは全体のたった0.3%にも満たないとか(中小企業庁「2017年版中小企業白書」より)。
そんなひと握りならぬ“ひとつまみ”の大企業で、管理職として働く女性3名をゲストスピーカーに迎えたセッション「大企業でキャリアアップするために知っておきたいこと」。業種も違えば積み上げてきたキャリアも違う3名の女性たちは、どのように管理職としての自身の働き方を貫いているのでしょうか。
淡々と仕事を積み重ねていたら、いつの間にか管理職へ
カルビー株式会社 藤原かおりさん
女性管理職というと、入社したとき、もしくは学生時代からすでに志が高い優秀な人材が築き上げたポジションというイメージがありますが、まず驚いたのはそれぞれに共通していたのが「管理職に就く気もなく、ひとつひとつ目の前の仕事をこなしていたら、いつの間にか管理職になっていた」というスタンス。
たとえば、国内企業と外資系企業を経て、2011年よりカルビー株式会社に勤める藤原かおりさん。朝食グラノーラ「フルグラ®」事業部の責任者として、「30億円の売り上げを100億円の売り上げに」という目標をクリアし、国内外で300億円のビジネスへと成長させた立役者です。
キャリアを重ねながらもブレなかったのは、「マーケティングのプロでありたい」という一途な思い。管理職にはまったく興味はなかったものの、いざその職に就いてみると「やりたいことを思う通りに進めるためには、必要なポジションだった」と語ります。
KDDIコマースフォワード株式会社 矢野絹子さん
一方、矢野絹子さんは転職経験はなく、新卒で入った会社が合併してKDDI株式会社という大企業になりました。現在は、KDDIコマースフォワード株式会社に勤務。管理職になったのは30代で、気がついたらauの“三太郎”シリーズで人気を博すCMなども取りまとめる宣伝部の部長に。
「小さな会社がいいなと思って選んだ会社が大きな企業になることも、自分が管理職になることも、まったく想像していませんでした」と矢野さん。理想のリーダー像を模索し悩んだこともあったそうですが、人を引っ張っていくのではなく“みんなで一緒につくっていく”というチームビルディングにたどりつきました。
自分がいないゴルフ場や喫煙所で物事が決まってしまう
JapanTaxi株式会社 金高恩さん
男性社会の業界において、前例のない“女性初の管理職”という立場の厳しさを味わったエピソードも。
「IT×レガシー」というテーマを掲げ、タクシー業界に乗り込んだのが金高恩さん。これまでにサイバーエージェントなどで経験を重ね、起業も経験し、現在はJapanTaxi株式会社CMO。24時間365日、止まることのないタクシー業界にITを持ち込み、アプリによる配車や相乗りのサービスを実現してきました。
男性社会で女性の意見は聞き入れられないことも多く、「ゴルフや喫煙室といった私がいない場所で、知らないうちに大切なことが決まっていたことは一度や二度ではない」と振り返ります。これには登壇者全員が大きくうなずく場面も。
「Business Insider Japan」浜田敬子統括編集長
さらに司会を務めた「Business Insider Japan」浜田敬子統括編集長も、新聞社入社直後から“女性である”という理由で数えきれないほどの歯がゆい経験をしてきました。ニュース週刊誌『AERA』で“女性初”の編集長を務めることになったとき、別業種で管理職を務める女性から受けたアドバイスが「社内的政治力を身につけなさい」ということ。
「自分の意見を通したり物事をスムーズに進めたりするときに、口説くべきキーパーソンが誰であるのかを学べ」という厳しいアドバイスに戸惑いながらも、「そういう戦い方もあるのか」と腑に落ちたのだそうです。
「女性上司が増えると、社会はもっと働きやすくなる」
多くの女性が管理職として活躍できる時代でありながら、進む一方なのが、若い女性の“管理職離れ”。結果を出さなければいけない責任へのプレッシャーや、出産や子育てとの両立の不安、勤務時間が長くなりそうといったイメージがその理由として考えられます。それでも「管理職はぜひ経験してみてもらいたい」と、登壇者は口を揃えます。
「はじめて部下ができたときは不安でコーチングまで勉強しましたが、いざ管理職として働いてみると、やりたいことがどんどんダイナミックに広がっていって……。責任も重くなっていきますが、喜びや得るものはそれ以上に大きい。ぜひこの価値観を体験してほしいです」(藤原さん)
「子どもがまだ小さいので『16~22時はママ業に専念する』と職場で公言しています。この働き方が実現できたのもチームメンバーとのコミュニケーションがあってこそ。女性はもともとコミュニケーション能力に優れていますから、女性上司が増えることでもっと働きやすい社会に変わっていくかもしれませんね」(金さん)
「管理職になって広がった人的ネットワークは計り知れません。友人や知人とはまったく違った強い結びつきは、ビジネスマンとしてはもちろん個人としても得難いものです。私自身も考えていない道でしたが、管理職になったからこそ見える世界もあるのだと知りました」(矢野さん)
キャリアアップをして現在の働き方を確立するまでは、さまざまな苦労があったはず。しかし、「ここまでがんばってきてよかった」という思いは、口に出さずとも自信に満ちた3名の笑顔が物語っています。
今回お話を聞いて感じたのは、大企業でキャリアアップを重ねて活躍する女性に必要なものは、人を引っ張っていくことができる資質だけではなく、チームメンバーとコミュニケーションを取りながらそれぞれが自分らしく働ける環境をつくるポジティブでしなやかな発想。そしてそれは大企業に勤める女性に限らず、仕事を持つすべての女性に置き換えることができる。そんな前向きな気持ちにさせてもらえたセッションでした。
大企業でキャリアアップするために知っておきたいこと
MASHING UP 2018年2月22日 13:15〜14:00 @トランクホテル 2F/金 高恩(JapanTaxi株式会社)、藤原かおり(カルビー株式会社 )、矢野絹子(KDDIコマースフォワード株式会社)、浜田敬子(Business Insider Japan)
撮影/今村拓馬、取材・文/大森りえ
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