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チームビルディング ーチームを変える魔法の言葉−

「女性の園」はどうしてる? 元CA漫画家に聞くCREWたちのチーム術

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かつては“大人になったらなりたい職業”の第1位を長年キープしていた「スチュワーデス」。キャビンアテンダント(CA)として親しまれる現在も、多くの若い女性が憧れる仕事の代表格であることは間違いありません。華やかなイメージのある航空業界では、どのようなチームビルディングがなされているのでしょうか

お話をうかがったのは、CAとして務めた経験を持ち、現在は漫画家への転身を果たした御前モカさん。華やかに見える世界の裏側で繰り広げられる体育会系なクルーたちの姿をユーモアたっぷりに描いた『CREWでございます!』シリーズは、働く人にとっても学びが多いと話題を集めています。お会いした御前さんは、隠していてもCAの雰囲気が出てしまうエレガントで美しい女性でした。

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©御前モカ(秋田書店)2016

リーダーに必要な資質は「チームの雰囲気を読める」こと

フライトを守るクルーの数は、コックピットクルー含めてほんの数人のこともあれば、大きな機材では30人になることも。いつも一緒にフライトを守るチームが編成されるケースと、初対面のクルーたちがチームになるケースがあって、それは会社の方針によりけり。初対面で十数時間、あの狭い空間で最高のパフォーマンスを発揮しなくてはいけないなんて、大変そうです。

チームの上に立つ人たちがもっとも心がけていることは、クルーたちの雰囲気をよくすること。お客様はとても敏感で、クルーの関係がギクシャクしていたり、怖い先輩に萎縮する新人クルーがいたりすると、『今日は雰囲気がよくないね』『あの先輩怖いの?』などのお声をいただいてしまうこともあります。逆に今日は雰囲気よく仕事を終えられたなと感じる日は、お客様の反応も比例して『すごく快適な時間を過ごせた』というようなお言葉が増えます。基本的なことですが、一挙手一投足をお客様の前でおこなう仕事なので、チームの雰囲気づくりは何より大切です」(御前さん)

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©御前モカ(秋田書店)2016

現役時代、御前さんが心がけていたのが「仲間に対して感謝を忘れず、それを言葉にすること」。御前さんが新人クルー(漫画では“ヒヨコちゃん”といっている)だったとき、失敗をして落ち込んでいたところ、チームの一番上の先輩が「ありがとう、今日はあなたと飛べて楽しかった」と声をかけてくれた経験が忘れられないそうです。

「ありがとうと言ってもらえたことで、自信につながり、居場所ができたような気持ちになりました。のちに新人教育に関わってわかりましたが、CAになる人は、それまでの人生で成功体験を重ねてきた人が多いです。ですので最初は少しのミスでも自信を喪失してしまいがち。そんなとき、先輩からの感謝の言葉は自己肯定につながり、笑顔につながります。どんなに業務ができても、チームの雰囲気づくりができなければリーダーに相応しいとは思われません」(御前さん)


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©御前モカ(秋田書店)2016

フライトを守るチームの雰囲気が、お客様の安全を左右しかねない

風邪気味で、毛布をもう一枚リクエストしたとき、複数のクルーが通りかかるたびに「お寒くないですか?」と声をかけてくれたことがあります。また、機内販売で両替に応じたところ、降機時、別のクルーに「両替くださり、ありがとうございました」と言われたことも。誰がどんな状態であるのか、何を望んでいるのか、情報共有はどのようにおこなっているのでしょうか。

「体調やアレルギー、初のフライト、結婚記念日など、お客様の情報はスタッフ間で共有します。ブリーフィング(フライト前におこなうすりあわせ)でも情報共有はおこないますが、フライト中にお客様と接することで得る情報はとても多いです。機内電話を使ったり、ギャレーと呼ばれる調理室や通路ですれちがうときに話したり。まるで伝言ゲームですね(笑)。各クラスの責任者に必ず伝わるようにします。また、すれ違う際は必ず声を掛け合う習慣もありました」(御前さん)

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©御前モカ(秋田書店)2016

もし情報共有ができなかったせいでお客様の体調が悪化するなどの事態になれば、引き返したり別の空港に緊急着陸したりする可能性が増えてしまいます。クルーたちの最大のミッションは、「お客様を安全に目的地へお連れすること」。先ほど紹介した”雰囲気づくり“も、このミッションを遂行するためには必要不可欠。情報共有すべきことも、チームの雰囲気が悪く、「今は話しかけにくいな」と後回しにしてしまえば大きな事故につながりかねません。チームの雰囲気がよければ仕事に集中することができ、お客様や機内のちょっとした異変にも気付くことができます。

女性が多い職場ならでは。会社としてのチームビルディング

小さなミスが思いがけない大きな事故につながることは、どの業界でも同じ。さらにお客様の命に関わる業界では、ミスをなくすことはもちろん、ミスを報告しやすい環境づくりに力を入れている企業も少なくありません。

上に立つ人は、メンバー同士の風通しをよくするため、意見交換がしやすい環境をつくるための教育を受けます。もともとコックピットクルーから始まったシステムですが、それがキャビンクルーに広まり、現在は医療業界や鉄道業界でも取り入れられています。それほどコミュニケーションは大切ということです」(御前さん)

また、社員が働きやすい環境を会社が整えるということも社としての“チームビルディング”というならば、育休・産休制度もそのひとつ。以前は、CAは家庭との両立が難しい職業だと思われていた時代もあったそうですが、現在は路線の選択やフライト時間の調整をできるようにしたり、産休・育休の制度を整えたりして支援する企業が増えています

「女性が働きやすい環境が整えられたのは、先輩方のおかげ。子育てしながら仕事を続けるCAはとても多く、なかにはお孫さんがいるクルーも。寂しい思いをしていたお子さんがCAとして働くママの姿を見て憧れ、自分もCAになったという話もよく聞きます」(御前さん)

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©御前モカ(秋田書店)2016

お客様のお荷物を棚にあげるとき、「重いなと思った瞬間に別のクルーの手がスッと伸びてきたことは一度や二度ではなかった」と御前さん。いつも仲間同士が気にかけあい、助け合ったCA時代の経験は宝物だと話します。御前さんの作品の端々に愛が感じられるのは、今までに関わったクルーメンバーへの“感謝”が込められているからかもしれません。

CREWでございます! 流チームビルディングのコツ

1. リーダーはチームの雰囲気づくりを大切に。
2. 感謝をしっかり言葉にして伝えること。
3. こまめな情報共有を行うことで、大きなミスを防ぐ。

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©御前モカ(秋田書店)2016

御前モカ(おんまえ・もか)さん

キャビンアテンダントとしてキャリアを重ね、2016年に漫画家デビュー。自身の新人・中堅時代の経験をベースに航空会社の事情を漫画にした『CREWでございます!』シリーズは、航空業界の舞台裏をユーモラスに描くだけでなく、仕事を持つ人が気づきを得られると好評を博す。5月16日に待望の第3弾『CREWでございます!newスチュワーデス物語』(秋田書店)が発売。

イラスト/御前モカ、取材・文/大森りえ

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大森りえ

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