「働きがいのある会社」に何度もランクインし、働き方改革のリーディングカンパニーとしても知られるサイボウズ株式会社。かつては離職率が高く、人が定着しないことが大きな課題でした。100人規模の会社で離職率28%は危機的状況……! 人材確保のためにと着手した改革が、現在のサイボウズを作り上げました。
注目したのは、チームワーク。試行錯誤を重ねて作り上げたノウハウを広く社会に伝えるべく、2017年11月にはチームワーク総研を設立。学生や企業にむけて、チームワークを教える活動も行っています。
十余年にわたるサイボウズの取り組みから見えてきた「よいチーム」のあり方について、チームワーク総研でアドバイザーを務める椋田亜砂美さんに伺いました。
チームワークをロジカルに分解
サイボウズ株式会社チームワーク総研アドバイザーの椋田亜砂美さん
サイボウズの企業理念は「チームワークあふれる社会を創る」。2005年にマークした不名誉な数字、“離職率28%”を改善しようと試行錯誤するなかで浮かび上がってきたのが、チームワークでした。
「私たちのソフトウェアは、仕事の情報やスケジュールを共有し、チームワークをサポートするもの。チームワークこそサイボウズが提供できる価値である、と気づいて、さまざまな取り組みを始めたのが2007年ごろのことです。では、そもそもチームワークとはなんだろう? 多くの文献、論文にあたり、チームワークを学術的に理解するところからスタートしました」
イメージで語られがちなチームワークを、とことん掘り下げて言語化。チームワークを発揮するために最も大切なステップとして位置づけられたのが、「理想を創る」という作業です。
「チームとは、同じ目標をもった集団。なんのために集まったのか、なにを理想とするのか一致していないと、メンバーの行動はちぐはぐに。スポーツで例えるなら、優勝をめざすのか、ベスト8に食い込みたいのか、あるいは体を動かしてリフレッシュできればよしとするのか。一方的やひとりよがりではなく、みんなが共感できる理想を作り上げるためには、ある程度時間をかけ、じっくり話し合う必要があります」
社外研修の様子。チームのゴールをどこに置くのか、時間をかけて話し合う(サイボウズ提供)
100人100通りのワークスタイルを実現
「話し合いをするときには、具体的な事実を出発点にするのがポイント。『チームの雰囲気を明るくしたい』『みんなが生き生き働ける職場にしたい』。こうした思いを、私たちは解釈と呼びます。解釈は感覚的に理解できて共有しやすい反面、具体的な行動に落とし込むのが難しい。これが、『ミーティングの出席率を80%にあげる』『残業時間を20時間に削減する』といった数字や事実に基づいた目標になれば、やるべきことはより明確になります」
ゴールを明確に設定し、メンバーの強み、弱みをいかして役割分担を決めれば、チームワークを発揮するための土台はできたも同然! 目標に対する進捗がわかりやすいから、自ずとモチベーションも上がります。
こうしたチームワークのメソッドをひとつひとつ開発し、自分たちで実践し始めてから、サイボウズは180度違う会社へ生まれ変わった、と椋田さんは言います。
「チームワークをよくするための取り組みが、結果的には多様な働き方を応援する企業文化醸成につながったんですね。今、サイボウズにはパリや新潟でリモートワークをする社員もいれば、週に数日は違う企業で働く社員もいます。副業は申請なしで可能ですし、ライフステージに合わせて柔軟に働き方を選べるように。100人100通りのワークスタイルが実現できるようになりました」
チームワークメソッドを実践し、サイボウズは180度違う会社へ生まれ変わった(サイボウズ提供)
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当初の課題だった離職率は4%までに低下し、年間の採用希望者も数十人から数千人へ! サイボウズの軌跡は、まさにチームワーク向上のメソッドを着実に実施してきたことによって描かれたものだと実感させられます。
2005年に28%あった離職率は4%に(サイボウズ提供)
ただ、大きな変革を成し遂げるまでには、戸惑いや葛藤もあったそう。後編は、価値観の異なる多様な人材がチームとして機能するための2つの条件をテーマにお届けします。
椋田 亜砂美(むくた・あさみ)さん
サイボウズ株式会社チームワーク総研アドバイザー、チームワークブランディングプロデューサー。法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻修了。経営学修士。教育、IT企業の人事を経て、2006年サイボウズ株式会社に入社、人事を担当。育児介護休暇6年の制定など社員が長く働けるための人事制度を整える。2010年4月より広報を担当し、現在は企業ブランディングと、サイボウズのチームワークのノウハウを様々な組織に伝えるチームワーク総研にてアドバイザーを担当する。サイボウズがチームワークと言い始めた当初から一貫してチームワークに関する活動に携わる。
撮影/今村拓馬(1・2・6枚目)、取材・文/浦上藍子

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