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- 「言い換え力」は「会話力」/鈴木亮平さんに学ぶ、ボーダレスなコミュ力・前編
母国語ではないのに英語がうまい人は、なぜかコミュニケーション力も高い気がします。アウェイな状況でも緊張しすぎない。相手の立場を素早く察する——それはきっと、慣れない言語でサバイバルしてきた経験があるから。
俳優の鈴木亮平さんは、まさにそんな英語上手のひとりです。
4月に刊行された初の英語本『鈴木亮平の中学英語で世界一周! feat.スティーブ・ソレイシィ』(マガジンハウス)は、英会話の本でありながら、コミュニケーション術としての学びも得られる異色の一冊。そこには、人と人がよりよい関係をつくっていくための普遍的なヒントがたくさん詰まっていました。
自信がないときほど声を張る
NHK大河ドラマ『西郷どん』の主演俳優であり、ストイックな役作りでも知られる鈴木さん。実はかなりの語学マニアで、高校生のときには1年間オクラホマに留学。そのほかにも2度ほど短期留学をしています。こうした体験を通じて学んだコミュニケーション術は、今も鈴木さんのベースになっているそう。
そんな鈴木さんに、まずは、母国語以外で楽しくコミュニケーションをするコツをうかがいました。
「一番は、大きな声で話すことです。僕は自信がない言語ほど大声でしゃべります。『Ola!』とか、『マドモワゼーーール!』とか(笑)。そうすると、この人には話しかけていいんだな、と思ってもらえる。
自信を持っている人って話しかけたくなりますからね。自信がなさそうだと、声をかけたら悪いかなって思うでしょ。ハイテンションで、『ヘイ、アミーゴ! アミーゴ!』なんて言っていたら、現地の人も話しかけたくなりますよね(笑)」(鈴木さん)
サービス精神満点に状況を再現してくれる鈴木さんに笑わされつつ、「確かに」と一同納得。自信なさげな態度がチャンスを遠ざけてしまうこと、日常生活でもよくある気がします。
「ビビる」気持ちを態度で封印
「それに、自信があるように振る舞うと、自信が出てきたりしますよね」と、鈴木さん。
「僕はいつも海外に行くときは、ちょっと胸を張るんです。なめられないように(笑)。海外に対して『ビビるな』みたいな気持ちがあるから。
コンプレックスを自分のなかに封印するために、必要以上に胸を張り、自分を奮い立たせるんです。自信を持っているように見せると、不思議と自信がわいてきます」(鈴木さん)
確かに、振る舞いや姿勢が自分の心持ちに影響することがあります。背筋を伸ばすと気持ちがシャキッとしたり。
「そうそう! そういうことです。背筋を伸ばすとスタイルもよく、より魅力的に見えて、一石二鳥です」(鈴木さん)
コンプレックスはあえて口にする
声の出し方や姿勢で自分のマインドを上手にコントロールしている鈴木さん。仕事も順調でコンプレックスなどなさそうですが……。
「コンプレックスも、できないことも多いんです。でも、これは持論なんですが、オープンにすれば、みんなそこを愛してくれませんか? 恥ずかしがっていると自信のない態度になったり、逆に周囲に触れたらいけない、と気を遣わせてしまったり。
僕、耳がすごく立っていて、大きくて。昔はそれが嫌だったんですけど、どこかのタイミングで、『チャームポイントは?』と聞かれたら『耳です』って答えるようにしたんです。そうしたら『その耳がいい』って言われるようになって。そうすると、だんだん自分でも好きになってくるんですよ。
字が下手なのも本当は嫌なんですけど、そうやって『そんな俺もアリ!』『かわいいとこあるんだよなー』って自己肯定する(笑)。そうすると、自分を認められるようになるんです」(鈴木さん)
言い換え力が会話力を上げる
鈴木さんが本書で主張するのは、汎用性のある簡単な表現を使って、言いたいことが言えるようになろう、ということ。完璧を目指さない、日本人らしい英語でいいというアドバイスに、肩の力が抜ける人も多いのではないでしょうか?
「ネイティブのように英語を話せることが、英語学習のゴールではない気がするんです。日本人の感性ってあるじゃないですか、たとえば『嫌いじゃない』みたいな。『ブドウは好き?』って聞かれて、嫌いじゃないけど、とか。一度、『I don't hate this. 』って言ってみたら、ぽかんとされちゃって。でも、そこであきらめずにピタッとくる表現を探したい。『It's OK.』なら近いかな、とか。そうやって違う言い回しで近いものを探せるようになると、英語力はぐっと上がっていくのではないかと思います」(鈴木さん)
日本語から英語に翻訳しながら話そうとすると、つい「I(私は)」から話そうとして、違う表現が出てこない、ということも多いもの。
「そうなんです。『Do you like grapes?』と聞かれたら、『I……』って始めたくなりますよね。でも、『They are』などから入ると、また違った表現ができたりします」(鈴木さん)
日本人の武器は人間関係。日本人らしい英語でいい
「それに、『I don't like grapes.』と言うと、ちょっと角が立つような気がする。日本人にはそういう感覚がありますよね」(鈴木さん)
確かに、間違ってはいないけれど、日本人だとためらわれる言い回しです。
「そこまで現地の人の感覚に合わせていくと、日本人の良さがなくなってしまう。僕は『日本人ならではの英語』というのがすごく大事だと思うんです。そうでないと、日本人の良さが伝わりません。
今は色々な国の人が、それぞれの英語をしゃべっていますよね。それは全然恥ずかしいことではないし、当然のことです。目標はアメリカ人のように英語を話せることではなく、日本人なりの英語をスムーズに話せるようになること。僕のテーマでもあります」(鈴木さん)
温かみのある表現を使いたい
『鈴木亮平の中学英語で世界一周!』は、カリスマ英会話コーチのスティーブ・ソレイシィさん(写真・右)との共著。ソレイシィさんはしばしば、鈴木さんの英語を「温かみのある英語」と表現しています。実際、入国審査官やホテルのスタッフに話しかけるときにも、語尾に「sir」や「ma'am」をつけるなど、丁寧な話し方を心がけているそう。
「やっぱり、スムーズな人間関係をつくることは大事だと思います。日本人は特にそこが武器になる。アメリカ人は直接的な表現を好むといわれていますが、それで角が立たないかというと、必ずしもそうじゃない。日本人だったらもう少し柔らかい言い方をするだろうなという場面もあります。
ソレイシィさんのおっしゃる『温かみのある英語』、そういう英語ができるようになると、コミュニケーションが楽しくなる気がしますね」(鈴木さん)
日本人同士のやりとりでも、丁寧な印象で好感度を上げることは大切なこと。6月1日公開予定の「鈴木亮平さんインタビュー・後編」では、ボーダレス時代を生き抜く心構えや、鈴木さん流の「ながら勉強術」をうかがいます。
Profile
鈴木亮平(すずき・りょうへい)
1983年3月29日生まれ。兵庫県出身。2006年俳優デビュー。2014年、連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインの夫役を演じ注目を集める。映画『俺物語!!』『海賊とよばれた男』『忍びの国』、ドラマ『天皇の料理番』『銭形警部』『宮沢賢治の食卓』、舞台『ライ王のテラス』『トロイ戦争は起こらない』など出演多数。2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』では、主人公の西郷隆盛役を演じる。6月8日に映画『羊と鋼の森』が公開。
『鈴木亮平の中学英語で世界一周! feat.スティーブ・ソレイシィ』
著者:鈴木亮平 スティーブ・ソレイシィ
本体価格:1400円(税別)
出版社:株式会社マガジンハウス
女性誌『anan』で3年以上続く人気連載を書籍化。俳優・鈴木亮平さんの「話すだけなら中学英語で十分」という気づきをもとに、鈴木さんと英語教育のスペシャリストであるスティーブ・ソレイシィが、対談形式でキーフレーズを紹介していきます。自力で英語を身につけた鈴木さんの、ノンネイティブだから気づける視点や役立つ知識が満載です。
撮影/小笠原真紀(マガジンハウス) スタイリング/ 臼井 崇(THYMON Inc.) ヘア&メイク/宮田靖士(THYMON Inc.)

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