ビジネスの世界では、どんな局面にあっても必ず成果を出す人と、そうではない人がいるものです。その違いはいったいどこにあるのでしょうか。茶道の世界には「守・破・離」という言葉があり、さまざまな「道」において、通じていく過程をあらわしているといいます。
久保憂希也・芝本秀徳著『頭の回転を速くする45の方法』 より、ビジネスにおいて確実に結果を出していくための「守・破・離」のアプローチをご紹介します。
「守」のステージ・中庸を知る
「守」のステージでは、主に仕事をしていくうえでの心構えや取り組み方、そして、頭の回転を速くするための基礎訓練について説明する。中略
「中庸が肝心」。よく聞く言葉だ。「何事もほどほど、中ぐらいがいい」という意味で使われることが多いようだ。しかし、これは中庸の本来の意味ではない。中庸の本来の意味は「偏らない」ということ。中庸の「中」は「真ん中」ではなく、「中る」。「的中」の「中」と同じである。つまり時と場合によって、その状況においてふさわしい対応を偏らずにできることを指している。
20・26ページより引用
守りに入るというと、とかく悪い印象で表現されがちですが、新人ならともかく、中堅以降、ことに管理職ともなれば「守」のスキルは必須と言えるでしょう。中庸の本来の意味をふまえて、どのようなときも偏らない的確な対応ができる人になるには、2つのことが重要であると著者はいいます。
① 両極端を経験する
② 他人の視点を持つ
たしかに豊富な経験がなければ、「中る」の位置関係すら分からないものです。経験の幅を広げることで知恵を培っていくことができるといえるでしょう。成果を生み出している人の話を聞いてみると、学生時代にとことん何かに取り組んだ経験を持っていることが多いといいます。どんな分野でも「極端にやる」ことで経験の幅が広がると同時に、他の分野においても必ずそれが活きてくるようです。
そして、他人の視点という観点で考えると、世に「傍目八目」という言葉がありますが、打っている人より傍で見ている人の方が八目先まで読めるという意味があるのだとか。それは、第三者的立場から見れば、より客観的に状況が判断できるということを指しています。ビジネスの場でも、状況が変化したり、問題を突き放してとらえると、より的確な判断ができるといえるでしょう。
自分だけの視点ではどうしてもフラットな判断はできにくいもの。両極端の経験と他人の視点が中庸のコツといえそうです。
「破」のステージ・過去をなぞらない
「破」とは「守」を愚直に続けていくことでそれが身についてくる、「ひらける」境地のことを指す。ビジネスにおける「破」は、教えられたこと、学んだことを実践するようになる段階だ。中略
人は一度成功すると、その成功に執着する。うまくいった方法にこだわってしまい、新たな方法を試すことを怖がってしまう。しかし、よりよい結果を生み出そうとするならば、同じやり方ではむずかしい。同じ方法で、同じ結果以上のことを期待することはできないからだ。よくて、同等、多くの場合はそれ以下の結果しか期待できない。
104・164ページより引用
一度の成功に執着し、うまくいった方法にこだわってしまうことは、誰にでもある傾向といえるでしょう。たとえば、部下の育成においても、自分がうまくいったセオリーをつい押しつけてしまうことは、よくある話です。
① 過去の事実を成り立たせていた要員を探る
② 過去の成功を陳腐化させる
③ 居心地の悪いところに身をおく
過去の失敗・成功要因をふまえ、状況の変化と照らし合わせてみたら、すでにそれらが要因ではなくなっていることもあります。それを正しく把握することで、新しい取り組み方につながるといえるでしょう。
そして、自分の地位や実績を早く陳腐化させるためには、強制的に実績をリセットするのも一つの手であるのだとか。異動や転職などで、今までのキャリアをリセット。一度リセットしたかのように見えるキャリアは、長い目で見れば大きな流れの一つになっているといえそうです。
「離」のステージ・あえて表層の問題から解決していく
「離」のステージの目的は、形にとらわれずに本質を得ることだ。鍛錬と実践を積み重ね、やがて基本に還る。ビジネスの現場において、本質を得るためには、考えの次元を上げること、そして人間への理解を深めることが大切だ。思考の次元を上げることで、既存の考え方に縛られない自由な発想をすることができるようになる。中略
問題を真に解決するためには、起きている現象ではなく、根本原因を突き止めることが大切である。なぜならいくら表面的な解決をしても、原因がなくなっていなければ別の現象として現れてくるからだ。しかし、いつも「根本原因」ばかり探すのも考えものだ。
174・208ページより引用
最後の「離」は、考えの次元を上げることであると著者はいいます。問題究明に関しては、何かと根本的な原因究明が必要であるという議論におさまりがちです。しかし、いつも根本原因にばかり終始するのはいかがなものかという見解を著者は提案しています。そればかりでは、ただの評論家になってしまうからです。
根本原因を突き止め、それを改善するには時間がかかることが多くあります。組織・プロセスなど、構造的な部分に問題があることが多いからでしょう。こんなときに必要なこととして、まず目の前にある問題を解決することだと著者はいいます。起きている現象を止めることは、根本的問題を解決するプロセスとして必要なことだからです。さらに、そのアプローチとして2つの重要なことがあるといいます。
① 表層の問題を解決しながら根本原因を探る
② 提案は、目の前の問題を解決してからにする
問題発生時に「根本原因はこれだろう」といつまでも机上で話し合っていても、実際の問題が起きている現場には、違う部分に真の原因が潜んでいることもあります。自らの目で見て解決することで、次の提案への説得力が深まるといえそうです。そして、そこで信頼を得ていけば、難しい構造的問題にも切り込んでいくことができます。
表層の問題からアプローチして根本原因へとたどり着く。仕事のステージを上げていくための地道な実践方法であるといえそうです。
頭の回転を速くする45の方法
著者:久保憂希也・芝本秀徳
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
定価:1,000円(税別)
Image via Getty Images

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