2018年2月22〜23日にトランクホテルで開催されたビジネスカンファレンス「MASHING UP」。Unleash Yourself (自分自身を解き放とう)のテーマの下、多彩なセッションやワークショップが繰り広げられました。カフェグローブはイベントに密着取材、パワフルな現場の様子をレポートします!
リーダーシップ、と聞いて頭に浮かぶイメージはどんなものでしょうか。力強くメンバーを引っ張るカリスマリーダー? それとも、言葉ではなく背中で見せる寡黙なリーダー?
Mashing Upでは、「Soup Stock Tokyo」をはじめ数々の事業をプロデュースする株式会社スマイルズ代表取締役社長の遠山正道さんと、SAMURAIのマネージャーとしてクリエイティブディレクター佐藤可士和さんを支える佐藤悦子さんをゲストに迎え、今求められるリーダー像のヒントを探りました。 モデレーターはカフェグローブの遠藤祐子編集長です。
会社員10年目で開いた絵の個展
株式会社スマイルズの遠山正道さん
冒頭から「 私自身、リーダーという意識がほぼなくて」という言葉でトークをスタートさせた遠山さん。「でも何かプロジェクトを進めていくと、そこに共感してくれた人が集まってチームが組まれて……、はたから見るとリーダーということになるのかな」
飾らない人柄がその語り口にもにじむ遠山さんは、大学卒業後、三菱商事に入社。10年目を迎えた頃、「このまま定年を迎えて果たして満足できるだろうか」と思い、なんと絵の個展を開いたそう。
「なんでそんなことをしたのかというと、いまだに合理的な説明ができないんです。でも、それでよかったと思っています。合理的な説明は合理的な説明で打ち返されて終わる。うまく説明ができない、ただやりたいとしか言いようがない、ということが、今日につながっているんです」
カフェグローブの遠藤祐子編集長
手探りで進めた個展の開催から学んだことは多く、そのすべてが今のビジネスに生きていると言います。そのひとつが「マーケティングはしない」ということ。
「アーティストが個展のアイディアを出すときに、アンケートを取って上位3つを描いたりはしないですよね。ビジネスにおいても同じ。マーケティングよりも、自分たちが何をやりたいかがとにかく肝心だと思うんです」
絵の個展で突破口を見つけた遠山さんは、2000年株式会社スマイルズを設立し、代表取締役社長に就任。その後の活躍ぶりは皆さんもご存知の通りで、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、レストラン「100本のスプーン」、中目黒高架下のレストラン「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」など、アートとビジネスを組み合わせたような、遠山さんならではのユニークな事業を次々に展開しています。
小さいからこそできること
遠藤編集長に「三菱商事とスマイルズの違いは?」と問われると、「スマイルズを始めてから、人生って言葉を使うようになりましたね」と遠山さん。
「一人ひとりの気づきやネットワーク、情熱、努力。会社にとって、それがすごく大事な宝物。仕事と人生がつながっているっていうのをいかに会社が引き上げられるか。それぞれが何をやりたいか、何をやるべきかを考えて行動すれば、それが会社のためにも自分のためにもなる」
組織が小さいほどリスクも少ないので、一人ひとりがリーダーシップを持ち、思い切った挑戦ができる、とも。
「小さい会社だからこそ、みんなが『自分がやらないと会社がつぶれちゃう』『自分が会社を引っ張ってるんだ』と思ってくれているんです」
白か黒か? の対立には、ピンクで!
SAMURAIの佐藤悦子さん
一方の佐藤悦子さんは、佐藤可士和さんというリーダーをマネージャーとしてサポートし、仕事でもたくさんのトップたちと接する立場です。
「リーダーと呼ばれる方々とお仕事をしていてつねづね感じているのは、彼らは、いわゆる『お仕事』という意識で仕事をしていない。『仕事が生き様』になっているんですよね。それを遠山さんは体現していらっしゃる」
プロジェクトでは、クリエーターとクライアントの間に立ち、それぞれの代弁者として意見の調整をすることが多いそう。
「たいてい相反する意見で対立するのですが、白か黒かでもめているときに、ではピンクで! というソリューションを提示できるように心がけています。そこでグレーを出しても双方に必ず不満が出る。そうではなく、議論を別の次元に持って行くのが大事なんです」
都内のとある幼稚園をリニューアルするプロジェクトに携わったときには、幼稚園と建築家の間で意見がまとまらない時はいつも、「屋根の上で遊べるような、毎日行きたい場所になるには?」とコンセプトに立ち返ってビジョンを提示。「僕たちだけだと、下駄箱の置き場所だとかドアのサイズだとか現実的な話ばかりになってしまうけれど、可士和さんがいると、夢やビジョンを語れる場所になる。すごくありがたい」と感謝されたそう。
「これこそがリーダーのあり方かな、と思いました」
結果、その幼稚園は園舎そのものが巨大な遊具になる、という斬新なコンセプトの建築に生まれ変わったといいます。
社会にポジティブな風を起こす風穴に
UNIQLOやセブンイレブン、今治タオル、国立新美術館など、手がけたものを見ない日はないのでは、というほど数々のブランディングやプロデュースを手がけているSAMURAI。
参加者から、「たくさんの依頼がある中で、仕事を選ぶ基準は?」と問われると、悦子さんは「世の中や社会に、新しいビジョンや価値の転換を提示できて、ポジティブな風を起こす風穴になれそうだな、と感じたときです」と答えました。
「忙しくてもうこれ以上引き受けられないよ、という声が社内から上がることもあります。そんなときは、そのプロジェクトが社会にとってどれほど意味があるかを丁寧に伝える。小手先の説得ではなく、根本をつかんで伝えれば、たいてい通じると思います」
その力強い言葉に、遠藤編集長が「悦子さんこそが一番の『侍』ですよね!」と「縁の下のリーダーっぷり」を賞賛し、和やかなセッションは幕を閉じました。
新時代リーダーに必要なものとは?
MASHING UP 2018年2月23日 11:30 - 12:15@トランクホテル 2F
佐藤悦子(SAMURAI)、遠山正道(株式会社スマイルズ)、遠藤祐子(カフェグローブ)
撮影/YUKO CHIBA、取材・文/中村茉莉花(cafeglobe編集部)
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