責任ある立場に立って仕事をしていると、ちょっとした指示にも説得力や相手の心に届くような言葉が必要になってきます。ビジネスの場で揉まれて、伝える力はそれなりについたかもしれないけれど、なぜだか相手の心に響かない。それは、「自分の言葉」ではないからなのかも。
では、自分の言葉で話すには? 川上徹也著『1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる』より、「言葉の木」を育て、自分の言葉で話せるようになるプロセスをご紹介します。ポイントは、ノートです。
まずは「日気ノート」で言葉の土台作り
仕事や日常のコミュニケーションで重要なのは、まず誤解なく正確に相手に伝わるということです。伝えたつもりが正確に伝わっていないのは最も困ります。そして伝わった上で、相手が行動したくなる言葉になっていることも重要です。以上のような目的を実現するためには、できるだけシンプルかつ強い言葉を使っていくことが必要になってきます。
18〜19ページより引用
コピーライター・CMプランナーとして活躍し、現在は「言葉の力」を身につけるための講演・企業研修などに取り組んでいる著者は、言葉を育てることを木の成長に例えています。
どんな木も最初は種から出発するのだとしたら、言葉も種をまくことが、重要であるのだとか。そのため、著者は、日々の「気づき」を記す「日気ノート」を書くことを推奨しています。日々あったことだけではなく、気づいたことを書き記し、まずは木の種を拾ってまくのです。
そしてこのとき、「どんな言葉の木を育てたいのか」ということを、自分自身が明確に押さえておくことも重要です。ちなみに本書では、仕事や日常のコミュニケーションで使うための言葉を考えているのだそう。
「内幹ノート」で自分の軸を確立する
仕事上での「軸」とは、大きく二つに分かれます。自分に対しての「軸」と、他者に対しての「軸」です。もちろん、自分の仕事に対する「哲学」「方針」を明確にすることがまず大切です。同様に、それを他者に向かってどう発信していくかも重要なのです。発信しないと、誰かがあなたの「軸」に気づいてくれることは滅多にありません。(中略)他者に対して「自分の軸」を発信・アピールすることは、「自分のウリ(セールスポイント)」を明確にすると、言い換えることができるでしょう。
93ページより引用
会社を辞めてフリーランスで活動し始めた頃の著者は、きちんとした「軸」がないまま受注した仕事を請け負い、こなしていたといいます。しかし、そんな仕事の仕方を10年近く続けていたら「一体何をやっているんだろう」と、徐々に消耗していったのだとか。
そこで、「仕事の軸」を確立しようと思い至ったそうです。それは、著者のようにフリーランスだから、コピーライターだからということではなく、たとえば会社員であっても同様。自分が生かされない仕事を続けていると、やがて消耗して続けられなくなってしまう。どんな職業でもどんな立場でも、「軸」を明確にして自分の強みを発信することはきわめて重要といえるでしょう。
その「軸」を探すためのノートを「内幹ノート」と名付けた著者は、自分の内なる「軸」を考えるために、自分の「ウリ」を、一言や一行でいえるように書いて模索したといいます。自分を表現する研ぎ澄まされた一行を導き出すために、まず自分の過去をノートに書き出して棚卸し。次に、現在の自分を分析して、自分の強みを導き出したのだとか。この軸は、木で言うと「幹」と言えそうです。
「内幹ノート」を使って、自分を表す究極の一行を作り上げる作業は、一回だけではなくアップデートが必要。忙しい毎日の中で消耗されがちな私たち世代は、自分の強みを見失わないためにも、さっそくやってみたい習慣です。
「出言ノート」でオリジナルのネタを作る
そのためにまずすべきことは、オリジナルの「ネタ」の数を少しずつでも増やしていくことです。そうすることで「自分の言葉」で語れるようになります。(中略)ゼロからオリジナルの言葉を作ろうとすると、肩に力が入って逆に「自分の言葉」から遠ざかってしまう。もともとは借り物の言葉でいいのです。それを自分の中で咀嚼して消化してから、違う形にしてアウトプットすれば「自分の言葉」になると考えましょう。
125〜126ページより引用
「日気ノート」と「内幹ノート」で、毎日、言葉の木の種を拾い、根から幹へと育てていると、実はもうかなり成長しているのではないかと著者はいいます。
そして、その蓄積で「枝葉」を作り、アウトプットに生かしていくためには、「出言ノート」を書いていくといいのだとか。そこにオリジナルのネタを書いていく。手法としては、前出の「日気ノート」にストックしていた「言葉」がベースになるといいます。そして、「出言ノート」で「ネタ」に変換していくのだとか。
「出言ノート」を使ってオリジナルのネタを作るためには、7つの切り口があると著者はいいます。
1. 「体験」や「ミニエピソード」を語る
2. 「比喩」を使い、「たとえ話」をする
3. 「言葉の発見」を伝え「知識から知恵」を導く
4. 抽象化して「法則」にする
5. 「オリジナルの単語」を作る
6. 教訓風名言を作る
7. 勝手に「新定義」する
ここまでで出てきた、著者が提案する3つのノートの名称も、5つめのヒントに則っているといえるでしょう。順を踏んで一つ一つ丁寧に積み重ねていけば、「自分の言葉」がやがて大きく育っていくことがよくわかります。
結局、近道はないということ。面倒臭いことをやり続けることだけが「言葉の木」を成長させるただ一つの道。まずは、お気に入りのノートを買うところから、スタートしてみてはいかがでしょうか。
1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる
著者:川上徹也
発行:朝日新聞出版
定価:1,400円(税別)
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