日々の仕事の中で学び、成長し続けるためには、「振り返り」を的確に行うことが必要です。
立教大学・経営学部教授の中原 淳先生は、著書『働く大人のための「学び」の教科書』で、「振り返りの原理」について述べています。
振り返りとは、「過去の自分の行動を見つめ直し、意味づけたうえで、未来に何をしなければならないのかを、自分の言葉で語れるようになること」です。
66ページより引用
子供が学ぶときは、学校で先生が指導をしてくれます。しかし、大人の学びは、何をしたいのかを能動的に決めなくてはなりません。そこで、次に学ぶべき方向性を定めるために、振り返ることが求められるのです。
学ぶための、3ステップ
振り返るための具体的な方法として、中原先生は3つのステップを挙げています。
振り返りは、 ① What?(過去に何が起こったのか?) ② So what?(どのような意味があったのか? 何がよくて何が悪かったのか?) ③ Now what?(これからどうするのか?) この3つの問いに対して、考えを巡らすことで深まっていきます。
67ページより引用
たとえば仕事でミスをしても、この3つのプロセスをきちんと行えば、「根本的な原因にたどりつき、今後のあり方を考えること」ができると中原先生は強調します。
ネガティブな経験も放置せず、その意味を探る
そうはいっても、忙しい日々の中で、振り返る時間を持つのはむずかしいかもしれません。とくに失敗については嫌な記憶もよみがえり、振り返ることでつらい気持ちになることもあるでしょう。
中原先生もその点に言及し、毎日振り返ることは求めていません。しかし、「経験は、そのまま放置しておいても、学びにはつながらない」と言います。
毎日ではなくてもよいので、日常の自分には何が起こって、それにはどんな意味があって、そのうえでこれから何を成していくかを、自分の頭で考える習慣をもちたいものです。
71ページより引用
振り返る時のコツは、「高見に立つ」こと。自分の状況を俯瞰して見ることで、「自分をコントロールし、正しく自らのキャリアを歩む」ことができるのだそうです。
客観的なフィードバックで、知らない自分に気づく
それでも、自分自身を振り返ることが難しければ、「第三者に自分を映し出す鏡」になってもらい、フィードバックをもらうことも有効だそうです。
仕事を通じて成長をしていくためには、「自分が、今、どのような状態で仕事をしているか」とか、「第三者から見て、自分が、どのような状況に見えるか」を客観的に指摘してもらい、自分を立て直す必要があるのです。
134ページより引用
フィードバックを求めるときには、ポジティブなこともネガティブなことも含め、具体的に情報を聞き出すことが大切です。とくに、「他人にはわかっているが、自分にはわかっていない」部分を引き出すことが重要なのだそう。
そして、フィードバックはそのままにせず、先に紹介した3つの段階を経てしっかりと振り返ることで、「これから何をすべきか」ということが明らかになっていきます。
自分を振り返るということは、痛みを伴うこともあるかもしれません。しかし、経験をそのまま放置しておけば、また同じ過ちを繰り返すことにもつながります。 少しずつでも振り返りの時間を持つことは、正しい学びを見極め、豊かな人生を送るための指針となるのです。
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同書では、普段の仕事意外での学び方についても言及しています。将来のために勉強したいけれど何から学べばいいのかわからない、という人は、「他人から感謝されること」などをキーワードに考えるとよいそう。詳しくはこちらの記事をどうぞ。
働く大人のための「学び」の教科書
著:中原 淳
出版社:かんき出版
定価:1620円(税込み)
[働く大人のための「学び」の教科書]Image via Shutterstock

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