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「ペラペラ」って何のこと?/鈴木亮平さんに学ぶ、ボーダレスなコミュ力・後編

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俳優・鈴木亮平さんに学ぶコミュニケーション術。前編に引き続き、後編ではボーダレス時代を生き抜く心構えや、鈴木さん流の「ながら勉強術」をお聞きします。

「さらけ出す」ことで親しくなれる

東京外国語大学英語専攻を卒業し、英検1級を取得している鈴木さん。優れた英語力の持ち主ですが、帰国子女ではなく、試行錯誤しながら「伝えるコツ」を学んできたといいます。

英語がそれほど得意ではなかったころ、困っていたのは「無口になってしまう」ことだったとか。

「言葉が変わっただけで、話したいことが話せなくて人格が変わってしまう。俺、そんな性格じゃないんだけどな……って自分でも戸惑いました」(鈴木さん)

15歳でオクラホマに留学した当時は、無口な自分がもどかしくてたまらなかったものの、事態は予想外の方向へ。

「『あいつ無口でクールだな』って思われたみたいです(笑)。日本人はクールだって、違うほうにとってくれたみたいで、結果オーライ。でも、結局そのまま、留学時代は自分の殻を破れなくて、僕はそれを良しと思わなかったので、『次からはもっと英語力を上げて、なるべく素の自分を出していこう』って。完璧にしゃべれなくてもいいから、自分らしさを出していこうと思うようになりました」(鈴木さん)

「ペラペラ」ってなんのこと?

『anan』での『鈴木亮平の中学英語で世界一周!』連載も3年を超え、最近では「鈴木さんって英語ペラペラなんですよね」と聞かれることも増えてきたそう。

「そういうときは、もう『ハイ!』って言うようにしているんですけど(笑)。何をもって『英語がペラペラ』って言うのかなって考えると、わからないことを聞けたらペラペラだと。聞くことさえできれば、相手は答えてくれるので、それでもうコミュニケーションが成立するわけです。

100%正確に伝えようとするのは大事ですが、それは母国語でも難しい。そこにこだわって話せなくなるくらいだったら、何%でも、まずは伝えればいいんじゃないかと思うんです。

『ちょっとニュアンスが違うかもしれないけど、まあとりあえず』みたいなユルさがあったほうが、結局はペラペラに近づきやすいと思います」(鈴木さん)

完璧にできるようになってからじゃないと、仕事や実生活では使えない。それは英語に限らず、完璧主義の人が陥りやすい思い込みなのかもしれません。

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モチベーションを高めるのは「悔しさ」

英語力を上げたいと思っても、日々に追われてモチベーションが持続しない人も多いもの。高い学習意欲を持ち続けるにはどうしたらいいのでしょうか?

『悔しい』って思うことが必要なのかなぁ。旅行に行ってみたら全然通じなくて悔しいとか、ホテルで言いたいことがあったのに言えなかったとか……。悔しいと頑張れますよね。僕はそうだった気がする。

俳優の仕事も、難しくて、できなくて悔しいから、続けられる。英語も一緒かな。もっと簡単な表現で伝えたいとか、もっとスムーズに伝えたいとか。いま、言いたいことを言うのに1秒の間ができちゃったけど、これをなくしてポーンと言いたいなとか。そういうのはいまだにありますね。

逆に、シンプルな言葉でうまく伝えられたときは快感です。『言えたー!』『うわ! 俺、今、かっこいい?(笑)……見た?』ってニヤニヤしちゃうみたいな。誰も見てないんですけどね(笑)」(鈴木さん)

僕はノマドワーカー。鈴木さん流、ながら勉強術

現在は大河ドラマ撮影の合間を縫って、薩摩ことばの習得に励んでいるという鈴木さん。忙しい毎日のなかでどうやって勉強の時間を作っているのか、鈴木さん流のTIPSを教えてもらいました。

「僕の方法は2つあります。ひとつは、家でやらない。外に出てやる。ノマドワーカーです、僕は。家にいると必ずほかのことをしたくなりますから。

もうひとつは、徹底的に「ながら」です。家にいるときは、たとえばお皿を洗いながら、台詞の方言をイヤホンでずっと聴いています。歯を磨いたり、お風呂に入っているときも、ずっとブツブツ。

「ながら」はとても理にかなっていると思うんです。例えば、電車に毎日15分乗る人は、その時間を何も考えずに過ごすか、何か勉強して過ごすか……1ヶ月に換算すると、すごく差が出ます。

言語的なことならなおさら、繰り返しが大事だったりするので。短期集中よりも、時間をおいて何度もやる。本も1回読んだだけでは覚えられないから、まずはパラパラっとでも全部読んで、3日後くらいにまた読むとか。そうやっていくと、どんどん頭に入っていく気がします」(鈴木さん)

語学が視野を広げてくれた

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「スティーブ・ソレイシィさん(右)との対談はいつも本当に楽しい」と鈴木さん。

英語を通して身につけたコミュニケーション術は、俳優という仕事にも生きている」と鈴木さん。海外の人と話す機会が増えたことや、語学を通してその国の文化を学ぶことで、さまざまな角度からものを見られるようになったと話します。

俳優は、その役に対してどれだけ自分が共感できるかを試されるお仕事だと思うんです。この人のやっていることは、一般的にいうと悪いことかもしれないけど、この人の立場になってみたらそれが正義だよなとか、そうせざるを得ない環境だったよなとか。そういうことが、世界の色々な価値観に触れてきたことでわかってきたところはありますね」(鈴木さん)

4月に出版した鈴木さん初の英語本『鈴木亮平の中学英語で世界一周! feat.スティーブ・ソレイシィ』では、英語教育のプロであるソレイシィさんが、鈴木さんの表現力に驚く場面もちらほら。独得の「英語観」と、優れた「英語勘」が、「ネイティブスピーカーにとって、とても新鮮」だと話していました。

「僕はサバイバル術というか、なるべく簡単な方法で言いたいことを伝えたい。そうすると、ソレイシィさんがハッとするような表現を教えてくれるので、お互いに気づきがあるというか……本当に感謝しています。

これは英語の本ですが、コミュニケーションの本にもなっている気がしていて。言葉を学ぶということは、その国の文化や歴史を学ぶということ。視野が広がり、脳の構造もちょっと変わる気がします」(鈴木さん)

言葉を愛して、それを話す人を愛してほしい——と語る鈴木さん。見えない壁をなくし、お互いに発信しあう楽しさを知ること。そんなオープンマインドから、ボーダレスなコミュニケーションが始まるのかもしれません。

鈴木亮平(すずき・りょうへい)さん
1983年3月29日生まれ。兵庫県出身。2006年俳優デビュー。2014年、連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインの夫役を演じ注目を集める。映画『俺物語!!』『海賊とよばれた男』『忍びの国』ドラマ『天皇の料理番』『銭形警部』『宮沢賢治の食卓』、舞台『ライ王のテラス』『トロイ戦争は起こらない』など出演多数。2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』では、主人公の西郷隆盛役を演じる。6月8日に映画『羊と鋼の森』が公開。

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『鈴木亮平の中学英語で世界一周! feat.スティーブ・ソレイシィ』

著者:鈴木亮平 スティーブ・ソレイシィ
本体価格:1400円(税別)
出版社:株式会社マガジンハウス

女性誌『anan』で3年以上続く人気連載を書籍化。俳優・鈴木亮平さんの「話すだけなら中学英語で十分」という気づきをもとに、鈴木さんと英語教育のスペシャリストであるスティーブ・ソレイシィが、対談形式でキーフレーズを紹介していきます。自力で英語を身につけた鈴木さんの、ノンネイティブだから気づける視点や役立つ知識が満載です。

撮影/小笠原真紀(マガジンハウス) スタイリング/ 臼井 崇(THYMON Inc.) ヘア&メイク/宮田靖士(THYMON Inc.)

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田邉愛理
ライター。学習院大学卒業後、センチュリーミュージアム学芸員、美術展音声ガイドの制作を経て独立。40代を迎えてヘルスケアとソーシャルグッドの重要性に目覚め、ライフスタイル、アート、SDGsの取り組みなど幅広いジャンルでインタビュー記事や書籍の紹介などを手がける。

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