世界各国のさまざまな分野の第一人者たちから多くの学びを得られる「TEDトーク」。筆者にもお気に入りや勉強になったトークがいくつもあります。
では、TED代表でキュレーターのクリス・アンダーソンさん自身が、公開してよかったと心から思うトークはどんなものだったのでしょうか。2016年、彼は「学びがあった動画は?」という質問に答えて、次の5本を挙げています。
1. 問題は回避不可能。けれど、解決は可能/デイヴィッド・ドイッチュ
クリスさんがトップに挙げたのは、イギリスの物理学者、デイヴィッド・ドイッチュさんの2005年のトーク「Chemical scum that dream of distant quasars」(日本語字幕あり)です。タイトルを直訳すると「彼方のクエーサーを夢見る化学ゴミ」……なんだか難しそうですね。
ですが、このトークのメッセージは、問題は回避することはできなくても、解決はできる、そしてその第一歩は、問題があると認めることから始まる、ということ。クリスさんが選んだ時点ですでに11年前のトークですが、どんな状況にもあてはまる普遍性があります。
2. 組織とコラボレーション、問題解決にはどっち?/クレイ・シャーキー
2005年のトーク「Institutions vs. collaboration」(日本語字幕あり)。クレイ・シャーキーさんはアメリカのライター兼コンサルタントで、『みんな集まれ!ネットワークが世界を動かす』(筑摩書房)などの著書があります。
目的の遂行や問題解決のために人が集まるシステムとしては組織またはコラボレーションがあります。クレイさんは社会の基盤が組織からコラボレーションへと移行している現状を分析。インターネットを通じてさまざまな人からあらゆる協力が得られる現状はメリットばかりのような気がしますが、その落とし穴もあることが指摘されています。
3. 「幸せ」についての考察/ナンシー・エトコフ
TEDトークの中でも「人気のテーマトップ5」に入る「幸せ」をテーマにしたものから、この1本が選ばれました。
アメリカの心理学者、ナンシー・エトコフさんによる2004年のトーク「Happiness and its surprises」(日本語字幕あり)は、幸せと不幸せは連続した1本の線の両端ではないということ、幸せにはいろいろな種類があるということに気づかせてくれます。
クリスさんはこの動画によって幸せについての考え方が変わり、よりハッピーになったと「Quora」で語っています。
4. 司法制度や死刑制度を考え直す/ブライアン・スティーブンソン
4番目に挙げられているのは、2012年に公開されたブライアン・スティーブンソンさんの「We need to talk about an injustice」(日本語字幕あり)。
弁護士のブライアンさんがアメリカの司法制度や死刑制度、犯罪状況について力強く語ったトークです。クリスさんによるとTED史上で最長のスタンディングオベーションを受けたそう。自分では見ようと思わないようなテーマも、クリスさんのおすすめとあれば視聴してみる価値がありそうです。
5. もはや理性的な思考は力を失ってしまったのか?/スティーブン・ピンカー×レベッカ・ニューバーガー・ゴールドスタイン
最後に挙げられているのは、心理学者スティーブン・ピンカーさんと哲学者レベッカ・ニューバーガー・ゴールドスタインさんによる2012年の対話「The long reach of reason」(日本語字幕あり)。
現在、失われつつあるようにも思われる「理性」や「倫理観」は、長い歴史の中でどうやって生まれ、変化し、そのうえで今後どのように培われていくべきと考えるか——。心理学者のスティーブンさんと哲学者のレベッカさんが、対話の中であざやかに説いていきます。また、アニメで表現されているのも新鮮で効果的です。
以上、さすがTEDのキュレーター。いつ見ても古くならない、学びのある5本でした。

イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。