クラフトビールは、グラスと注ぎ方でさらにおいしくなります。
おすすめの飲み方を、「SPIEGELAU(シュピゲラウ)」のテイスティングマネージャー・チーフ グラス・エデュケイターであり、ソムリエの資格を持つ庄司大輔さんに教えていただきました。
グラスを変えるとビールが変わる
南ドイツで1521年に誕生した「シュピゲラウ」は、2004年「リーデル」グループに参画。「グラスを変えるとビールが変わる」をテーマに、クラフトビールが持つ魅力を最大限に引き出すグラス開発を行っています。
シュピラゲウのビアグラス。
リーデルでは、「ワインを飲むならグラスを知ろう」をコンセプトに、香りと味わいがグラスで変化することを体感できる体験型セミナーを実施。このセミナーには、クラフトビールコースもあり、これをシュピゲラウのグラスで実施しています。
今回はこのコースの内容にそって、ビールグラスの選び方を庄司さんに教わりました。
ポイント1:グラスの薄さ
ビアグラスには、うすはりからジョッキまで、さまざまな厚さのものがあります。
実は、暑い日にはグラス自体の温度も高くなります。そうなると、せっかく冷やしたビールの温度を上げてしまうことに。ガラスの部分が多ければ多いほど、その現象が起こるので、分厚いガラスほどビールの温度を上げることになるそう。
シュピゲラウの薄いグラスと、ビアホールで使われているような一般的なパイントグラスに同時にビールを注ぎ、グラスを持ってみると、薄いグラスを持つ手が一気に冷たくなるのに比べ、パイントグラスはじわじわと冷えてくるのを実感。
グラスにビールの冷たさが移っていくということは、その分、ビールがぬるくなっていくことになります。
冷蔵庫でグラスを冷やしておくという手もありそうですが、脱臭剤を使用しても、家庭用冷蔵庫ではにおいが残るそう。ビールの香りを邪魔するためおすすめはできないそうです。
熱の伝わり方の違いを教えてくれる庄司大輔さん。写真・右がシュピゲラウのグラス。
ポイント2:注ぎ方と注ぐ量
グラスを斜め45度にして途中までゆっくり注ぎ、最後は、グラスを平らにして、泡を作るように注ぎます。
ここまではやっている人も多いと思いますが、気をつける点は、ビールを注ぐ量。グラスの口ギリギリまで注いでいませんか。これは、NG。
ワインのように、飲み口に空間を開けておきます。グラスに対して、半分そそぐイメージです。これは、クラフトビールの香りを楽しむためです。
飲む前に、泡がグラスの内側全体にいきわたるイメージでワイングラスと同じように揺らし、香りを楽しみます。
ポイント3:ビールの個性に合わせてグラスの形を変える
それぞれのビールの特徴を活かすため、タイプ別にグラスを選びます。
「ビールは“舌のどの場所で感じるか”で印象が変わってきます。グラスの形で飲む姿勢、顔の向きが変わることによってビールを感じる場所が変わり、その変化が楽しめます」(庄司さん)
今回は、キリンビール協力のもと、代表的なタイプ別クラフトビールをご用意いただき、それぞれに合わせたグラスを教えていただきました。
【写真 A】左・一般のパイントグラス、左から2番目・グラス「AMERICAN WHEAT BEER/WITBIER 」と「グランドキリン WHITE ALE」、中央・グラス「IPA」と「グランドキリン IPA」、右から2番目・グラス「STOUT」と「スプリングバレーブルワリー Afterdark」、右・「グランドキリンJPL」と「グランドキリンJPL」の専用グラス。
インディア・ペールエール系×グラス「IPA」
この形状(写真A・中央)は、ホップ由来の柑橘系の香りを引き出し、強い苦みとモルトの甘味を調和させてくれます。
ワイングラスのように口がすぼんでいるため、まず鼻から香りを感じます。そして、注がれた量が少ないためそのまま顔が上向きに。すると、ビールは舌先から真ん中を流れていきます。
ビールの苦みは泡についていくそうで、下の部分が細くなっていることで、ビールが少なくなってきたときに、泡がリチャージされ、最後まで一定の苦みが楽しめるそう。
泡のリチャージは、見た目も華やかで楽しくなりました。
傾けた飲み口を元に戻すと、泡が戻ります。
スタウト系×グラス「STOUT」
スタウトの特徴である焙煎したモルトの豊かな風味を引き出してくれるグラス(写真A・右から2番目)で、傾けずに、置いたまま一気に注ぎ入れます。
ムースのような細かい泡が立ち、ちょっとお醤油のような香りに、コーヒーやチョコレートのような深い香りが追いかけてきて、甘さと苦みを調和させてくれます。
今回使用した「Afterdark」が黒ビールの中でも軽やかなこともあり、コーヒーゼリーのような風味も。
こちらは、舌先から舌の奥までビールが一気に広がります。グラスのわずかな違いで舌の上のビールの流れ方が違うことが実感できます。
ホワイトエール系×グラス「AMERICAN WHEAT BEER/WITBIER 」
ベルジャンスタイルのフルーティーさのある酵母の特徴を引き出すグラス(写真A・左から2番目)です。舌全体でビールを感じられるグラスで、舌先から奥に向かって、舌の形状に合わせたように風味が広がります。
「パイントグラスだと、このフルーティーさがなくなってしまうんですよ」と、庄司さん。比べてみると、驚くほど違いが感じられました。
クラフトビールは缶のまま飲まない
「クラフトビールを試すとき、多くの人はひと口目の印象でビールの評価を決めてしまいます。ですが、飲み方で味は変わります。通常よりも少し高価なクラフトビールを試すなら、缶そのままで飲まず、グラスに注ぐことをおすすめします」(庄司さん)
ビールの作り手のこだわりの美味しさを最大限に感じられるように飲んでほしいという庄司さん。
ビールの種類別にグラス開発を行うほか、「グランドキリンJPL(ジャパンペールラガー)」のように、特定の商品にあわせたオリジナルのビールグラス開発も行っています。JPLのためだけに生まれたグラスは、最終的に3つのサンプルを作り、最後はビールの作り手側の「この味」というのを決め手に製品化したのだそう。
「生産者が思う“うちの味”を飲む人に伝えるのが、グラスメーカーの仕事ですから」(庄司さん)
口の狭くなった大きめのグラスが、ビールの香りをふくらませてくれる。
ビールの美味しさを倍増させてくれるビアグラス。「でも、いくつも揃えるスペースが……」という方には、幅広いビールと相性がいいという「BEER TULIP」がおすすめです。
広く相性のいい「BEER TULIP」。
もちろん、グラスに注ぐビールの量は半分程度で。
リーデル青山本店 テイスティング・セミナー クラフトビールコース
日時:毎週土 13:00〜14:00(要予約)/ 場所:東京都港区南青山1-1-1 / 費用:5400円(税込)※グラス3個(5400円相当)の持ち帰り費込み / 問い合わせ・予約:リーデル青山本店
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