“変態”……!?
日本フィルハーモニー交響楽団(以下、日本フィル)の公演名にこの文字を見つけ、「え!」と驚きました。公演名は「落合陽一×日本フィル プロジェクトVol.2《変態する音楽会》」。
この「変態」の意味は、「トランスフォーム」です。何がトランスフォームするのか。それは、オーケストラの聴き方や楽しみ方。
動機は、聴覚に難がある人とも向き合いたかったこと
この取り組みは、実は第2章にあたります。第1章は2018年4月に開催された「落合陽一×日本フィル プロジェクトVol.1《耳で聴かない音楽会》」。
《耳で聴かない音楽会》にも導入され、《変態する音楽会》でも楽しめるバルーン型デバイス、SOUND HUG。音楽をハグしているかのように、音の速さやリズムを振動で感じることができる。
すべての人びとと音楽を分かち合いたいと、多彩な活動を展開してきた日本フィル。そのなかで模索していたことの1つが、耳が聴こえない人たちとの向き合い方です。耳の聴こえに関わらず、音楽はそれぞれの人の心にあるはず。そんな折に出会ったのが、振動によって音楽を届ける「オーケストラジャケット」だったのだそう。
落合陽一さん。メディアアーティスト、ピクシーダストテクノロジーズCEO、筑波大学 学長補佐・デジタルネイチャー推進戦略研究基盤 基盤長/准教授ほか。著書に『魔法の世紀』など。
このデバイスを開発した落合陽一さんを中心に、聴覚障害を持つ人ともシェアできる音楽体験を企画・実現しました。音楽会は大成功、そして落合さんとともに第2章を迎えることになったのです。
脈々と受け継がれたオーケストラの形に変化を
今回、日本フィルと落合さんが着目したのは、オーケストラという「メディア」を、21世紀の形にアップデートすること。
ほかの娯楽やメディアが多様化してきた一方、オーケストラは約300年にわたる歴史を持つからこそ磨き上げられた文化ではあるものの、「指揮者と楽器奏者で構成され、人が演奏し、人に伝える」という構造に変化はありませんでした。
指揮を担当する海老原光さん。日本フィルハーモニー交響楽団やクロアチア放送交響楽団など国内外で指揮、客演を重ねる。
そこで考えられたのが、長い時をかけ、築かれてきた芸術の力=演奏という根本部分はそのままに、テクノロジーの発想で聴き方や楽しみ方をアップデートすべく、ヴィオラやフルートのように、オーケストラの一奏者として映像というパートを作ってみよう、ということ。
音楽と映像を対等に。どんな化学反応が起きる?
映画のように音楽が映像に従うわけでも、ミュージックビデオのように音楽に映像を合わせるわけでもない。音楽と映像の主従関係を壊し、対等な関係としてオーケストラを再構築するのです。今回ももちろん落合さんがプロジェクトに加わり、映像装置のための楽譜=映像譜を彼が書き起こすことに。
どんな音楽会になっているのか。あまりにも新しい試みのため、こればかりは会場へ行って、体験してみるしか語る方法がありません。制作サイドですら「手探り」と話しているくらいですから。
ちなみに、そもそもクラシック音楽には詳しくなくて……なんて音楽に関する前提の知識も不要。この音楽会では、ここで聴いたもの、見たものを自由に解釈してOK。フラットな気持ちで楽しんでいいので、気軽にフラッと寄ってみてください。ただしチケットの確保はお早めに!
落合陽一×日本フィル プロジェクトVol.2《変態する音楽会》
開演日時:2018年8月27日(月)19:00〜 / 会場:東京オペラシティコンサートホール / プログラム:ビゼー:《カルメン》組曲、ラヴェル:ボレロほか / 料金:SS席24,000円、S席9,000円ほか ※障がい者手帳を持っている人向けのダイバーシティ対応価格、またヤングシート(25歳以下)価格あり / 出演者:海老原光(指揮)、落合陽一(演出)、ビジュアルデザイン(WOW)、進行アシスタント(江原陽子)
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