1. Home
  2. ライフスタイル
  3. 水泳金メダリストがうつ病と戦い、再び希望を見つけるまで

水泳金メダリストがうつ病と戦い、再び希望を見つけるまで

The New York Times

全米水泳選手権の女子200メートル自由形は、競技水泳のメンタルヘルス文化を研究するのに最適な、いわば巨大なペトリ皿のようなものだ。

決勝に進出したアメリカの記録保持者のアリソン・シュミットは、これまで三度五輪に出場し計8個の五輪メダルを獲得しているが、その彼女もパフォーマンス不安症やうつ病との闘いをオープンに語ってきた。

Cファイナルで3位、全体では19位でフィニッシュしたミッシー(メリッサ)・フランクリンは、五輪への出場経験が2回、五輪メダル獲得数は6個。そんなフランクリンは、準優勝したシュミットの様子を見ながら、いつの日か自分も復活できるはずだと思っていた。

期待された元気少女 フランクリンがうつ病に

swim-2

真ん中に座るのが、16歳のミッシー・フランクリン (Anya Semenoff/The New York Times)

いつも元気いっぱいの女の子だったフランクリンは、非常に多くの人々から「次のマイケル・フェルプス(オリンピックと世界水泳選手権の金メダリスト)」として期待されてきた。そんな彼女は今、深く暗い水の底からなんとかして水面に上がろうと必死にもがいている。

6年前、17歳だったフランクリンはロンドン五輪で4つの金メダルを獲得。昨年は、長引くうつ病と闘いながら両肩の手術も受けた。

そして2018年7月末、彼女は全米代表チームに落選した。

これはつまり、大規模な国際大会に参加できる次のチャンスは、2020年の東京五輪ということになる。もちろん、それにも落選しなければの話だ。

シュミットの活躍を見て、勇気づけられたフランクリン

「今夜のアリソン・シュミットの活躍ぶりを見て、とても勇気づけられました」

ウーレット・アクアティクス・センターで開催されたレースが終わった後、フランクリンは、自分と同じように精神疾患と闘ってきた“もう一人の王者”アリソン・シュミットについてこのように語った。

「彼女が成し遂げたこと、それもとても早く復活できたことは本当にすごいと思う。でも同時に、決して自分と彼女を比べないよう、そして自分の今の立場をひしひしと実感して激しく落ち込むことのないよう、細心の注意を払わなければいけないとも思います」

そう言い終えるまでに、フランクリンは涙で言葉を詰まらせた。

道しるべを作ってくれたシュミット

落選した週の木曜の夜には、さらにたくさんの涙をこらえながら「一度はこんな気持ちになった水泳を再び愛せるようになるまで試行錯誤しましたが、それは本当に、本当に厳しい道のりでした」とフランクリンは語った。

23歳のフランクリンのために、先に道しるべを作っておいてくれたのは28歳のシュミットだ。

レースを終えた彼女は、「Mental health is as important as physical health(精神の健康は、肉体の健康と同じくらい大切)」というロゴが書かれたTシャルを着ていた。

そして、胸を突き出して「このロゴ、好き?」と言った。

偉大な先輩が伝える「希望」へ向かうための知恵

swim-3

ミッシー・フランクリン (Doug Mills/The New York Times)

シュミットが感情のネガティブ・スパイラルに陥ったのは、2012年ロンドン五輪で金メダル3個を含む計5個ものメダルを獲得した直後のことだった。

フランクリンの精神状態が悪化したのも、ロンドン五輪で計5個のメダル(うち金メダル4個)を獲得、さらに2013年世界選手権で6回も金メダリストの座に輝いた後だった。

素晴らしい夢のような心地を味わった後には必ず精神的危機が訪れる「達成の法則」について誰よりもよく知り尽くしている人と言えば、五輪メダル獲得数28個のマイケル・フェルプスだろう。

2014年、リカバリーセンターに8週間入院していたフェルプスは、苦しみながら身をもって学んだこの知恵を、他の一流選手にも伝える活動を始めた。

「どんな結果でも自分の価値は変わらない」

木曜日のレースは、シュミットにとって2016年五輪予選以来の大規模な大会の決勝だった。彼女の心の中の不安に気づいたフェルプスは、レースがどんな結果に終わっても自分の価値は変わらないという趣旨の文章を送って励ました

2015年、シュミットの精神的落ち込みをすぐに察したフェルプスは、もし必要なら自分のカウンセラーを紹介すると申し出た。

そして、2016年にはフランクリンにも同じ提案をした。明るく朗らかな性格がトレードマークだったフランクリンから、以前よりも温かみが消えているのに気づいたからだった。

フランクリンは昨年、パフォーマンス不安症とうつ病と闘っていることを公表した。200メートル自由形の現在のタイムは、1: 59.25。五輪チームのメンバーになるためのラインである1:56.18を大幅に超えている。

しかし今の彼女はタイムについてくよくよ悩まないようにしている。なぜなら、結果への執着こそがメンタルヘルスを悪化させたからだ。

自分の心を救出できるのは、自分自身だけ

誰も——あのフェルプスでさえも——自分の心を救出することはできなかった、とフランクリンは話す。

「もしフェルプスが私のところにやってきて、いつもそばにいるからねとか言って色々支えてくれたとしても、それでも私はどうしたらいいのか全然わからなかったと思います。あくまでも、自分ひとりで乗り越えなければならない問題なのです」

まずフランクリンは、何よりもまず自分を最優先することから再発見のプロセスを始めた。“お人好し”を自称する彼女にとっては、大きな前進だ。

「いつだって勝つことは楽しいけれど、私がスポーツをしていたのは勝つためではありません。今再びスポーツの世界にもどるにあたって、自分がなぜこのスポーツをやりたいのかを突き詰めて考えようとしているところです」

その答えとは、ひと言でいえば、「後悔のない人生を送りたいから」だ。

“If”ばかり考えない。結果がダメでも「やりきった」と思いたい

swim-1

ミッシー・フランクリン (Doug Mills/The New York Times)

ネブラスカ州オマハで開催予定の2020年五輪予選に向けて取り組んでいるフランクリンは、「過去2年間を振り返りながら『もしあのとき挑戦していたら……?』とクヨクヨ考え続けるよりは、たとえオマハで五輪代表チームに落選したとしても自分はよく頑張ったと思いながら座っているほうが100倍マシだと、いつも自分に言い聞かせています」と語った。

一方、シュミットが再び水泳を楽しめるようになってきた頃、面白いことが起こった。彼女の木曜日のタイムは1:55.82とケイティ・レディッキーの1:54.60には及ばなかったものの、2016年全米予選の自己記録より約1秒も速かったのだ。

「2016年はとても良いコンディションだった。まだまだ本調子とはいえないけれど、日に日によくなっていると感じています」

© 2018 The New York Times News Service[原文:Battling Pain Both Physical and Mental, Missy Franklin Finds Hope/執筆:Karen Crouse](抄訳:吉野潤子)

*こちらもおすすめ

最近のアメリカ人が子どもを欲しくない理由

アメリカ人は子どもを持つことに消極的であることが調査で判明した。理由は、自分の時間や自由がほしいから、パートナーがいない、育児費用が払えないなど。男...

https://www.cafeglobe.com/2018/08/nyt_equality.html

坂本龍一さん「お店の選曲にがまんできず、プレイリストをつくりました」

ノーギャラでプレイリストを作った坂本龍一。好きなレストランに合ったBGMで食事をしたいからだった。これからもプレイリスターを務める予定だ。

https://www.cafeglobe.com/2018/08/nyt_ryuichi.html

  • facebook
  • twitter
  • hatena
    2019.04.13.Sat

    【終了】シチズン時計株式会社「NewTiMe, New Me」キャンペーン × MASHING UP
    〜明日からできる、世界をほんの少し変える選択〜

    common ginza (GINZA PLACE 3F)

    水泳金メダリストがうつ病と戦い、再び希望を見つけるまで

    FBからも最新情報をお届けします。

    メールマガジンにご登録いただくと、 MASHING UPの新着記事や最新のイベント情報をお送りします。

    また、登録者限定の情報やイベントや座談会などの先行予約のチャンスも。

    MASHING UPの最新情報をご希望の方はぜひご登録ください。