本業のサブとして行う副業ではなく、本業がいくつもあるという意味の「複業」。
時代とともに働き方の選択肢が増えていくなかで、「複業」を実践するサイボウズ「サイボウズ式」編集長・藤村能光さん、TABLE FOR TWOのCMO・大宮千絵さん、スマイルズ クリエイティブ本部広報・中神美佳さんのトークイベントを取材してきました。
ファシリテーターはWebメディア「灯台もと暮らし」を運営するWasei代表・鳥井弘文さん。
「はじめたきっかけ」や「複業をやってみてよかったこと」、「1つの会社の仕事にフルコミットしている人との溝をどう埋めるか」という実践的な話までが飛び出しました。
そもそも、なぜ複業を?
本当に、偶然だった
複業としてタオルメーカーのIKEUCHI ORGANIC(イケウチ・オーガニック)で新たなメディアやコミュニティ運営に携わる藤村さんのきっかけは「10年前くらいに一緒に仕事をしていた方から、本当にたまたまお声がけを頂いた」から。
「以前から、このまま会社1本でいいのかな? 複業したいかも? くらいには思っていたけど、ずっと会社勤めをしていたので、正直、『自分にそんなことができるのか?』という疑問があったんです。なのでそのぶん、お声がけを頂ける関係性に感謝して、思いきってやってみることにしました」
「最近、毎年同じことしていますよね」の一言から
世界中から累計100万人が参加したSNS上のマーケティング企画「おにぎりアクション」で、日本マーケティング大賞奨励賞、アジア・マーケティング3.0アワードを受賞した大宮さん。複業もソーシャル×マーケティングの分野で活躍しています。
複業を始める前、あるとき知り合いに言われた「TABLE FOR TWOさん、最近毎年同じことをしていますよね」という言葉がグサッと刺さったそう。
「3年間同じ組織で働いていて、思考がパターン化しているとは感じていました。やはりもっとどんどん外へ出ていかなければならない、いろんな組織の人と交流したほうが良いと改めて思ったんです」
地域への関わりもやめずに、新しいこともしたい
中神さんは、東京で働いたのち、地元である北海道にUターンして、地域おこし協力隊として活動。その間にローカルのマーケティング支援を行う自身の会社を設立。東京では「Soup Stock Tokyo」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」など多様な業態を展開するスマイルズで働いています。そんな中神さんが現在の働き方に至った経緯は、このようなもの。
「Uターンして数年後、地元で地域おこしや移住促進をしているとき、『このままだと自分が止まってしまうのでは?』と感じて。地域には関わり続けたい、けれども、新しいことにも挑戦してみたい。そこで、北海道の自分の会社は続けつつ、もう一度東京へ出て働くことを決意し、いまは北海道と東京で2拠点生活をしています。
『複業可能な会社』が東京で就職する際の前提条件だったのですが、当時、スマイルズは『業務外業務』という、やりたかったけれど誰からも頼まれなかったこと、本業以外のことを仕事として提供してみるという複業の先駆けのような『仕事の試し打ち』ができるサービスを始めていて。そういう会社なら、自分の理想の働き方にも近づけるかもしれないと思ったのが決め手でした」
やってみて、見えてきたもの
皆さん違う経緯で始めた複業。実際、やってみてどうだったのでしょうか。
会社を超えた自分の価値を実感
藤村さんは「自分の価値を認めてくれるとか、必要と思ってくれる人がいることがわかった」と語ります。
「それを社内で感じることは難しいのですか?」と鳥井さんに問われると、「社内でも感じることはできると思います、でもやっぱり、複業は、会社を超えたところでの自分の市場価値を実感しやすくなるんです」と藤村さん。
「具体的に言うと、複業を始めるとき、本業で編集長をやっている僕にいちばん求められるものは、メディア構築とか、編集長育成とか、そういったわかりやすいスキルだと思っていました。
でも実際にやってみると、そういったものは単なるひとつの要素。たとえば、チームの潤滑剤になってメンバーの共通言語を作ってみたりとか、僕の人脈をそのチームに引き入れたりとか。僕がこれまで培ってきたものが、わかりやすいポータブルスキル以外のところでも生きることをすごく感じたんです」
複業から、自分の価値というものを教えてもらった、複業をすることで、自分がまだ発見していない自分もきっと知れると藤村さんは話します。
客観的な自分の強み
「“私、使える!” と思った(笑)。すみません、冗談です」と切り出し会場を盛り上げた大宮さんは次のように感じたそう。
「ずっと同じ会社の中にいると、自分の強みがわからなくなる部分があるというか。でも複業をしたことにより、“組織”の中だけでなく“社会”のなかで自分の価値がどこにあるのかがわかって、すごく良かったと思いました」
ひとりの良さ、組織の良さ
自分で会社を経営しつつ組織に属する中神さんは、どちらの良さもわかったと言います。
「毎月定期的にお給料が入るベーシックインカムがあるからこそ、チャレンジできることがあったり、企業だからこそ長期的に価値づくりができたり。足元に安心感があるから初めてできることもあるということを、実感したというのがいちばんですね」
両方してみることで見えるものがあり、かつ2拠点生活により、北海道の自然が心のヘルシーさを保ってくれるのだとか。
複業で大変なこと。どう対処している?
複業を始めてみたくなるような話が多数飛び出し、セッションの最後には会場から実践的な質問があがりました。
Q. 会社とフルコミットしている方との溝をどう埋めていますか?
「複業の経験を本業で生かし、それによって結果が出せていれば良い印象を持たれやすい」と藤村さんは答えます。「複業で得たものを持ち帰って会社にシェアし、還元することが大切です」。
また、会社の代表をしている鳥井さんは、人材を管理する側の意見として「管理する側も人間ですから、社員が複業をしたいと言ってきたときに自分のメリットを得るためだけに提案されると応援しにくいけれど、複業で得たものを会社にも還元しようという姿勢など、こちら側のメリットをも考えていてくれるのがわかると快く応援できる」と教えてくれました。
Q. 複業先と継続的に良い関係を保つために気をつけていることは?
「オープンに話すことが大切」と中神さん。
「地域の企業や自治体さんからお仕事をいただいていますが、私の場合だと、週5日スマイルズで働いていること、そのために平日はメールの返信も遅れることなど、ちゃんと理解をしてもらったうえで仕事をもらうようにしています」
トラブルを避けるためにも、継続して仕事をもらうためにも、しっかりと「できないこと」と「できない理由」を話しておくことが肝心なようです。
まずは、「発信」することから!
最後に、皆さんが口を揃えて語ったのは「複業をしたいと考えているなら、それを自分で発信することが大事」ということ。
会った人に直接話すほかにも、いまはSNS経由で仕事が入ることも多いのでこちらでの発信もあなどれないのだとか。
「いきなり大きなことでなくていいから、まずは小さく小さくやってみることがおすすめです」と中神さんが会場へエールを送り、イベントは終了。最後まで、刺激を受けるセッションでした。
人生 100 年時代の働き方 Work Talk #1「"複業"〜わたしたちの複業のカタチ」
藤村能光(サイボウズ株式会社「サイボウズ式」編集長)、大宮千絵(NPO 法 人 TABLE FOR TWO International CMO)、中神美佳(株式会社スマイルズ 広報)、鳥井弘文(株式会社 Wasei 代表)
日時:2018 年8月9日(木)19:30~21:30
会場:株式会社スマイルズ
撮影/今村拓馬

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