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人は失敗に引き寄せられる。SNS時代のコミュニケーション/山田ズーニーさん[伝わる言葉の方程式 #1]

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相手の気持ちを揺さぶり動かし、お互いが「幸福」だと思える結果に導くためには、伝え方のよしあしが分かれ道になります。

ビジネスにおいてもSNSの活用が広がり、言葉で自己発信することが身近になった現在、伝え方を磨くことは必須の課題。文章表現インストラクターの山田ズーニーさんに、いま知っておきたい“伝わる言葉”の扱い方についてお話をうかがいました。

山田ズーニーさん
文章表現・コミュニケーションインストラクター。フリーランスで全国の大学や企業の依頼を受け、文章表現力・コミュニケーション力・プレゼン技法・自己表現力のワークショップを行っている。1984年ベネッセコーポレーション入社後、進研ゼミ小論文編集長として、高校生の考える力・書く力の育成に尽力したのち独立。2000年より『ほぼ日刊イトイ新聞』にて「おとなの小論文教室。」を連載中。2007年より慶應義塾大学非常勤講師。著書に『伝わる・揺さぶる!文章を書く』『理解という名の愛がほしい』など多数。

挫折から得た、新しい“伝わる言葉”

『あなたの話はなぜ「通じない」のか』などの数々の著作を通して、自分の想いを言葉にする方法、相手に伝わる表現技術を説いてきたズーニーさん。教育業界最大手のベネッセで小論文編集長をつとめ、38歳で独立したとき、大きな挫折を味わったといいます。

「当時の私はあまりに不自由だったので、会社を離れたときに『さぁ、これで自由に編集者をやれる』と思いました。しかし実際は、働き盛りなのに朝から何もすることがなくて、電話も鳴らなければメールも来ない。私のように企画をやりたい編集者はきちんと出版社にいて、媒体を持っていないとできないということを、やめてから身にしみて理解したんです」

フリーランスになり、「私はここにいる」という切実な思いでネットに書き始めた文章は、しだいに多くの人の心を動かすようになりました。今では、全国で表現技術のワークショップを開いたり、就活生に向けたセミナーを依頼されたり、慶應義塾大学で学生を指導したり。そのフィールドは、ますます多彩に広がりつつあります。

「伝える」のスタート地点はどこにある?

「インターネットに書き始めて思ったのは、いまは“書く人”にとって逆境でもあるということ。ちょっと感じたことを言葉にしてカドが立つと、すぐに炎上したりする。私もすごく失敗したけれど、そここそが、“書く人”を支える力になりたいと思ったきっかけでもあるのです」

SNSが盛んになり、セルフブランディングの面でも「書くコミュニケーション」の重要性が高まる現代。言葉で自分を表現するほど、誤解されたり、思わぬ反応を浴びたりして、もどかしい思いをしてしまいがちに。

いったいどんな言葉を使えば、自分の意思を飾らずに伝え、また人を動かすことができるのでしょうか。

そう尋ねると、自己紹介するときのことを思い出してほしいというズーニーさん。

「私自身、初めてお会いする人に自分の経歴を一生懸命伝えようとすると、どんどん引かれてしまうのがとてもつらかったんです。日本には謙譲の美徳がありますから、大スターでもないのに実績を語ると『自慢話みたいでいやだな』と思われてしまうんですね。

ネットで書く文章でも当然そうで、どうすれば読者と自分のあいだに橋が架かるんだろうと。模索して辿り着いたのが、“失敗から書く”ことでした

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書く・話すコミュニケーションのヒントがたっぷり詰まった山田ズーニーさんの著書。

人は成功談より失敗談に引きつけられる

やってはならない失敗をした、こんなふうに部下を追い詰めてしまった、取引先を怒らせてしまった。そんな失敗談を書くと、「ちょっと読んでみよう」という人も増えるし、「自分もまさに、今日似たような失敗をしてしまったんです」という人がたくさん現れたりする。成功談には引いていく読者が、失敗を語り出すとふっと集まってきてくれることを実感したそう。

「こちらが見栄を張ろうとしたら、読む人も見栄を張って、見栄張り大会になる。でも、こちらが恥をさらすと、読者も『私も! 私も!』と経験を語ってくれる。読者に鍛えられながら、いっしょにコラムを作っていけるようになったんです」

そしてもう一つ意外だったのは、失敗を語ると、人は失敗の裏側の経験値を見てくれるということ。失敗から得た宝をシェアしたい、そんなところから始めたら、不思議なことに手柄話をするよりも自分という人間が伝わったとズーニーさんは話します。

経験“を”書くのではなく、経験“で”書く

「これは誰かに伝えたい」。そう思うようなことは、失敗を通して学んだことがほとんど。結局いつも、大切なことは、本当なら人に聞かせたくない、痛くて恥ずかしい経験のそばにある、とズーニーさん。

「ただし大事なのは、『経験を書くのではなく、経験で書く』ということ。コラムにしろSNSにしろ、伝えたいメッセージがあるから書くわけです。経験はそれを伝える論拠として、具体例として出すのだから、必要最小限でいい。

でも、そこを伝え慣れていない人は、時系列を追って、いいことも悪いこともとうとうと書いたり、語ったりしてしまいがちです。何を伝えたいのか、何のためにその経験を持ってくるかということは忘れないようにしたいですね」

経験は、伝えたいことを伝える道具として書く。その経験を通して伝えたいことは何かを強く意識することで、言葉は自分語りを超えて“伝わる力”を持ち始めます。

山田ズーニーさんに聞く、“伝わる言葉”の方程式。後編では、部下を育てる立場になった女性のための、人を生かすコミュニケーション術のヒントをうかがいます。

部下を生かし、幸せにするコミュニケーション/山田ズーニーさん[伝わる言葉の方程式 #2]

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https://www.mashingup.jp/2018/09/com_zoonie_2.html

撮影/YUKO CHIBA(DOUBLE ONE)

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田邉愛理
ライター。学習院大学卒業後、センチュリーミュージアム学芸員、美術展音声ガイドの制作を経て独立。40代を迎えてヘルスケアとソーシャルグッドの重要性に目覚め、ライフスタイル、アート、SDGsの取り組みなど幅広いジャンルでインタビュー記事や書籍の紹介などを手がける。

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