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読者の不安は誰よりもわかる気がした/株式会社リクルートホールディングス サステナビリティ推進部 パートナー 伊藤綾さん

インタビュー/働くあなたに伝えたいこと

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自らを「現場主義派」という伊藤綾さん。ブライダル情報サービス「ゼクシィ」の編集長を長らく勤め、徹底して現場に近い視点で企画を作ってきた。そんな伊藤さんも、働き始めた当初は「お客様目線」「ユーザー目線」からかけ離れた考え方だったという。考え方が変わった体験を中心に、キャリアをお伺いした。

伊藤 綾(いとう・あや)さん
株式会社リクルートホールディングス サステナビリティ推進部 パートナー。出版社勤務、専業主婦を経て、2000年(株)リクルート入社。ゼクシィ事業部に配属。2006年に首都圏版編集長。出産を経て、2010年首都圏版編集長、2011年統括編集長。 “17時に帰る編集長”を目指し双子の育児との両立にトライする。2015年(株)リクルートホールディングスダイバーシティ推進部部長、2016年 同ソーシャルエンタープライズ推進室室長、2017年より同サステナビリティ推進室室長。リクルートグループのサステナビリティセクションを担当。2018年4月より現職。

バレンタインデー前夜、読者からの電話

伊藤さんが新卒で入社したのは、実用書を中心に発行する出版社。先輩についていろいろ学びながら、初めて企画・担当したのが料理の本だった。

「小さな焼き菓子とテディべアの作り方が一緒に載っているという、『変わっているなあ』と思った企画でした」

おしゃれな本を作ろうと、ぼかしを生かした写真で構成しようとしていた。ところが先輩編集者に「料理の仕上がりがわからない」と指摘され、現場で撮り直しをしたという。「これがおしゃれなのに、どうしてわからないのだろう?」と感じた伊藤さんは、日報にもそういった意見を書いていたほどだった。

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カヌレが流行の兆しを見せていたころで、表紙にはカヌレの写真を掲載。本は書店で平積みにされ、バレンタインデー前によく売れたのだが……。

「2月13日、残業していたら、編集部に電話がかかってきたんです。『今、本を見ながらカヌレを作っているのですが、手順3と手順4のところで生地がどうしても膨らまない。どうしてですか』って。隣の席の、料理に詳しい先輩がアドバイスをしてくれて事なきを得ましたが、バレンタインデーの前日に困っている読者の方を思うといたたまれなくなって。ほかにも同じような人がたくさんいらっしゃるだろうと思ったんです」

改めて見てみると、先輩たちの手掛けている料理本には、プロセスを伝える写真がたくさん並んでいる。読者が迷わないよう、とことんわかりやすく構成されていた。イメージやおしゃれさを選んでプロセスの写真をあまり掲載しなかった伊藤さんは、「本当にお客様のことを考えていたら、もっと違う表現ができたのに」と考えたという。

バレンタインデー前夜、読者と初めて会話したこの経験は、この後何度も思い出すことになる。

任された企画が読者アンケートで下位に

出版社に1年務めたのち、夫の転勤でいったん仕事を離れ、専業主婦に。その後東京へ戻り、契約社員としてリクルートへ入社する。仕事から離れている間に、世の中はメールやオフィスソフトなど、パソコン業務が当たり前となっていた。伊藤さんはそれらを全く使えないまま、ブライダル情報サービスの『ゼクシィ』編集部へ配属となった。

業務のスピードが速く、なかなかついていけない。毎朝通勤前にストレスで腹痛を覚えるほどだった。そんな中、ひとつの企画を任される。1年前に先輩が担当して人気を博した「家事のハウツー」企画。伊藤さんのアイデアで、人気漫画家を起用し、面白いページを作ったつもりだった。

「でも、ふたを開けてみると、企画は読者アンケートで散々な結果だったんです……。落ち込みながらも、1年前の先輩の企画と並べてみると、先輩の企画には細かな説明がたくさん掲載されていました。『食器洗い』の項目なら、洗剤やスポンジの写真など……。漫画家さんの作品はとてもおもしろかったので、私は満足していましたが、結局は肝心の解説が『役に立たない』ものを作ってしまった。面白さだけを追求して、魂が乗っていなかったんです」

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その時、以前勤めた出版社で、読者からの電話を取った時のことを思い出した。プロセスの写真が足りなかった焼き菓子の本。

どこも同じだ、と思いました。お客様に対する愛なんですよね。私にとっては、おしゃれとかユーモアじゃないんです」

同じころ、結婚式の取材に行った時のこと。観音開きの扉から入場する花嫁の肩が震えているのを目にした。その姿が、いろんなことにびくびくして、不安で、自信のない自分と重なる。これから結婚する人たちだって、不安の塊なのだ。

「自信のなさだけは、誰よりもわかる気がする」と奮起した伊藤さんは、それまでとは明らかに違うアイデアを出すようになる。「少しでもスタイルをよく見せる方法」「式中に鼻のテカリを抑える方法」といった、かゆいところに手が届く読者目線の企画で、めきめきと頭角を現していった。

付録の大ヒットは「あげめの法則」から

契約社員から正社員になり、編集長へ。その後、産休・育休を取るも、時短勤務で復帰した。ゼクシィで実施したのは、徹底的な読者インタビュー。お客様を大事にするという伊藤さんの想いそのものだ。

「子どもが双子だったこともあり、子育てをしながら働くのはギリギリの状況でした。そんなある日、夕飯の準備中にしゃもじを炊飯器の中に入れっぱなしにしてしまって。熱いしゃもじに触れた瞬間、ポキっと心が折れてしまった。いっぱいいっぱいになっている時って、そんな小さなことでもめげてしまうんですね。でも、そこで『立てておけるしゃもじ』がゼクシィの付録にあったらいいなとひらめいたんです」

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花嫁にウケのいいキュートなデザインにしようと、最初はピンクのしゃもじを考えていた。ところが、読者を集めてグループインタビューをすると、皆口をそろえて「絶対に白がいい」と言う。その意見を受けて北欧雑貨ブランド「HELMI」とコラボ。持ち手の部分にレトロな柄を入れ、白いしゃもじにした。「可愛すぎるしゃもじ」の付いた号は大ヒット。その後も「乙女すぎるドライバーセット」「花嫁すぎるゴム手袋」など、実用的で花嫁のニーズを満たす付録のヒットが続いた。

現在は、ダイバーシティの部署を経て、サステナビリティ推進部へ。読者から社員、投資機関などへと「相手」が変わっただけで、基本姿勢は同じだという。

「以前のゼクシィのメンバーから『今も“あげめの法則”を大事にしています』と言われます。“あげめの法則”とは『愛+現場=メッセージ』の頭文字をとったもので、私が大事にしているオリジナルのポリシーです。愛を持ってお客様を知り、現場を見れば、そこに「こうしたほうがいい」「これば注意すべき」などの自分なりに伝えたいこと、つまりメッセージが生まれると信じているんです」

現在はリクルートのパートナーとなり、仕事の3割ほどを別会社の業務に充てている。リクルートの中で責任ある立場で働きながら他社の仕事もするという社内でも新しい試みで、自らを実験台に働き方の仕組みを模索している最中だ。

相手の幸せを願うことが、伊藤さんのブレない芯。幸せになる方法として完全に100点を取ることはできないが、カヌレの作り方を電話で聞かれたときから、思いはずっと同じだ。

一問一答、伊藤さんのお気に入り

Q:朝のルーティーンは?

始業前に1時間の読書タイムを取ること。そのために早く出勤する。

Q:お気に入りのファッションアイテムは?

白檀の扇子。母が使っていたのでなじみのある香り。暑い時に限らず、香りを楽しむために使う。アロマの代わりに。

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Q:愛読書、現在読んでいる本は?

愛読書は『ジェリービーンズの片思い』(秋元康著)。圧倒的なリアルを浮かび上がらせる詩集。現在読んでいる本は『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)。毎年、夏に読むと決めている本。

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Q:欠かせないスマホアプリは?

「RAYNY MOOD」。雨の音が流れるアプリ。心が落ち着く。

Q:人から受けたアドバイスで心に残っているものは?

「ToDoではなくToBeを描く」

上司だった恩師に言われた言葉。どうありたいのか、を考えてから選択するようにしている。

Q:1か月休みがあったら何をしたいですか?

ハンモックに揺られながら、本を読み続けたい。

撮影/柳原久子


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栃尾江美

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