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インタビュー/働くあなたに伝えたいこと

「100年後の子どもたちのため」を指針として/ビーバイ・イー 代表取締役 杉谷惠美さん

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寝食を忘れるほど好きな仕事に没頭していたはずなのに、突然の病気に襲われたビーバイ・イー代表の杉谷惠美さん。それが、植物療法や漢方を学ぶきっかけとなり、現在の事業につながることに。ビジネスやマーケティングのことなど何も知らないまま、「伝えたい」思いで走ってきた。さまざまな障害を乗り越えるエネルギーとなっている、その強い想いを伺った。

杉谷 惠美(すぎたに・えみ)さん
シンシア・ガーデン代表、ママバター開発者。女性誌ライターとして美容ページ、ファッションページ編集に4年間携わる。24歳で、子宮内膜症と成人性アトピーと診断され、その後植物療法を学ぶ。自身の病を克服した自然療法を啓蒙するため、オーガニックスパサロン「シンシア・ガーデン」をオープン。その後「ママバター」「リンレン」「ネロリラ ボタニカ」など数多くのオーガニック&ナチュラル製品を開発。2011年には長期にわたる不妊治療を経て、待望の第一子を出産。翌年には第二子を出産。現在はオーガニックビストロ、ヘアサロン&スパ、ファッションブランドの経営も手掛ける。

体を壊して初めて、心と体の声を聴く

社会人になりたての頃、女性ファッション誌のライターとして、充実した日々を送っていた。毎日取材や撮影などで忙しく、食事をとる時間もままならない。そんな生活を4年ほど続けた頃、突然倒れてしまう。

「常食がビスケットタイプの栄養食で、それ以外にも外食などジャンクなものばかり。明け方まで原稿を書いて仮眠をとってまた出勤するなど、あらゆることが体を蝕んでいました。ストレスによるといわれている子宮内膜症と成人性アトピーと診断され、『仕事で辛い思いなんてしていなかったのに、どうして?』と」

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大がかりな手術よりは自然な形で治したいからと、いったん仕事を辞めてホルモン療法を進めた。ところが、想像よりもはるかにつらい副作用が杉谷さんを襲う。

「『治療によって子宮はよくなるかもしれないけれど、私の体はどうなってしまうのだろう』と恐ろしくなりました。そこで、植物療養や漢方など、西洋医学以外のことを勉強するように。何にも逆らわず、むかしからあること。『土地のものを食べる』など、大切にしなくてはいけないことがたくさんあるとわかったんです」

体にとっていいものを摂り、いいことをする。そんな基本に立ち返ることで、徐々に回復していった。

伝えたいものが生まれ、伝える仕事とつながった

倒れた当初は、体調が戻ったら雑誌編集の仕事に復帰したいと考えていたが、それでいいのだろうかと考え始める。

なぜ私が、病気になったのかと考えました。植物療法に救われた私が、ライターの仕事を通してファッションやビューティを伝える仕事だったということ。そこに意味を感じて、植物の世界を伝えていきたいと思いました。伝えるためにはいろいろな手段がありますが、まずはアロマテラピーサロンとして小さなお店を始めました」

最初はマンションの一室でスタート。銀行にはまったく相手にされず、すべて自己資本でまかなった。売り上げがままならないうちは、ライターの仕事を請け負って売り上げの足しにしたこともある。

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「いろいろなことに矛盾を感じていました。ナチュラルやオーガニックな製品は、デイリーに使える価格ではないものがほとんど。スペシャルなものとしてではなく、日常的に、気軽に使えるオーガニックコスメを提供したいと思い、青山にオーガニックスパ、ショップ、ベジタリアンカフェを併設した路面店『シンシア・ガーデン』をオープンしました」

オーガニック&ナチュラルコスメの販売と、スパとショップ。スパはチェーンのマッサージ店と同等の価格帯を目指したという。相談した人にことごとく「失敗する」と言われた店舗経営だったが、杉谷さんの考えを支持してくれる仲間も少しずつ増え、徐々に軌道に乗っていった。

「きっと売れる」根拠のない自信が在庫の山に……

次の転機は、商品開発をしたこと。当時はまださほど知られていなかったシアバターを使った「ママバター」という商品。これまでより手ごろな価格とはいえ、大手がドラッグストアなどで販売しているクリームと並べられると、高価に感じる値段になってしまう。

ドラッグストアで気軽に買えるナチュラル製品を、と思ったんです。全国に展開すれば、かなりの量が売れるはずだと。なぜか根拠のない自信があって、シアの原料をたくさん仕入れ、先に支払いをしてしまった。まったく売り上げが伸びず在庫の山になると同時に、キャッシュフローも立ち行かなくなり……」

ナチュラル製品のメリットも、薬事法の規制で謳えないことが多い。どうやって製品の魅力を伝えたらいいのか途方に暮れる日々だった。

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「そんなときに目にしたのはインターネットの口コミ。そこには、「ママバター」を赤ちゃんやお年寄りに使っているというお客様同士のやりとりがありました。知人に相談すると、パッケージを変えた方がいいというアドバイス。なけなしの資本で『赤ちゃんの顔写真』に変えたところ、売れるようになった。思いをストレートに伝えるという、シンプルなことだったんですね」

商品販売とスパの併設、ナチュラル製品の開発と、ビジネスモデルとして見本のない世界を歩んできた杉谷さん。「私にできたんだから、誰でもできる。想いがあれば」と言う。

不妊治療を経て子どもに恵まれ、アレルギーや食べ物の問題にも関心が強くなった。今も商品開発や新たな事業を進めているが「100年先の子どもたちにとって役に立てること」が判断基準なのだとか。

伏し目がちに語りながら、大切なことはしっかりと目を開き、大切に言葉を届ける。

「今もこれからも『暮らし』を豊かにしていくことが大事」

子どもを育てながら働くスタッフも増え、それぞれが、それぞれの人生と仕事のバランスをとれるように。今もこれからも、顧客だけでなく、スタッフや子どもたちの暮らしを豊かにするために、前を向いて進んでいる。

一問一答、杉谷さんのお気に入り

Q:朝のルーティーンは?

5時に起床し、子どもの弁当を作る。6時から子どもたちと朝ご飯を食べる。

Q:デスクの上には何を置いていますか?

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空気を浄化するもの。『ネロリラ ボタニカ ブルーミングシャワー』『ソルーナ エネルギースプレー』などのナチュラル製品を気分に応じて使う。

Q:お気に入りのファッションアイテムは?

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海外出張の時には、SMYTHONのパスポートケースを愛用。大切なものはすべて入れて持ち歩く。

Q:愛読書、現在読んでいる本は?

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愛読書は、『愛をこめて生きる』(渡辺和子著)。ひとつひとつのことを、ルーティーンでなく愛情を持ってやる大切さが書かれている。

今読んでいるのは『自然療法が「体」を変える』(東城百合子著)。あたりまえのことを大切にしながらシンプルに生きるヒントが満載。

Q:欠かせないスマホアプリは?

スタッフとの連絡にLINEを使う。

Q:人から受けたアドバイスで印象に残っているものは?

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「出会いは人生の機微」

もう亡くなってしまったが、以前役員だった方に言われた言葉。仕事よりも人が大事だと教えてくれた。

Q:1か月休みがあったら何をしたいですか?

海外出張で、自分の言葉で思いを伝えられないもどかしさがある。その1か月を使って英語を学びたい。

撮影/柳原久子


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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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