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インタビュー/働くあなたに伝えたいこと

人間の尊厳を守る仕事をしたい/ソーシャルピーアール・パートナーズ 代表取締役 若林直子さん

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自分を成長させながら人とのつながりをつくり、興味のある方向へ軽やかに転身していく。まるで蝶のようにキャリアを選んできた若林直子さん。その時に進みたいと思った方向の仕事を手にして、そのたびに新たなジャンルへ躍進している。これまでの歩みと仕事への想いを伺った。

若林直子(わかばやし・なおこ)さん
大手保険会社で法人向け営業を2年担当、2年連続全国第一位(新卒組織)という成績を残す。日経BP社「日経ビジネス編集部」にて編集長・役員付秘書、野村證券金融研究所企業調査部ITチーム所属。株式会社リクルート進学カンパニー大学広報推進部、カンパニー企画室。企業×NPOのwin-winの関係構築やNPOの広報に興味をもち、認定NPO法人世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)に転職。広報兼学校事業部マネージャー。震災後、日本ユニセフ協会東日本大震災緊急支援本部広報官として2年間、宮城県沿岸部で支援活動、日本経済新聞社「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」企画運営、PRを経て、起業。あしなが育英会、ワールド・ビジョン、文部科学省「トビタテ!留学Japan」、NPO法人キッズドア、ピースウィンズ・ジャパン、ジャパン・プラットフォーム、フォースバレー・コンシェルジュなどのPRを手掛ける。

自分を成長させる場所に飛び込む

「学生時代に苦労していないから、仕事で苦労しないと腐ってしまう」

そう思った若林さんが、大学卒業後に初めて就職したのは保険会社。そこで、「2年で1番になろう」という思いを胸に法人営業を担当。決意どおり、2年連続で成績トップを実現した。

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父がメディアの仕事をしていたこともあり、その後「伝える」仕事に興味を持つ。出版社の編集部にて、編集長の秘書および役員の秘書を担うことに。

「日経ビジネスの編集部で、編集長インタビューの資料集めや、記者からあがってくる企画案をまとめたり……。メディアは初めてだったので、本当にたくさんの雑誌を読み、研究しました。仕事は楽しかったのですが、そのうち、ひとつの記事が出る、ということの影響力の大きさを知り、ものを書くこと、大勢の人に伝える仕事をするということは大きな責任を伴うものだから、もっと世の中を学ばなくてはいけないと思いました」

次のステージとして選んだのは、またもや自分を成長させるための厳しい場所。当時言われていた「三大人材輩出企業」を選択の基準に、そのうちのひとつ、野村證券金融研究所企業調査部で4年務め上げ、その後、もうひとつのリクルートへ入社した。

リクルートで広報の仕事に出会う

リクルートでは、高校生向けに大学や専門学校を紹介するWebサイトを担当する。全国の営業担当が契約した学校の情報を高校生に魅力的に伝えるためにはどのようにしたらよいか、というアドバイスを各学校にする仕事だ。

「大学選びのサイトなので、大学生の声をインタビューして掲載していましたが、担当校数が増えすぎてしまって。そこで、学生たちに記事を書いてもらおうと営業マンや大学に提案したんです。学生たちが喜んでインタビューや執筆をしてくれた結果、それまで何となく通っていた大学の良いところや改善点を自分たちで考えるようになった。就活でも、そういう活動はアピールポイントになったようです。営業担当からは、他の学校にも展開したいとたくさん要望がありました」

全国にできたつながり。それを活かして社内広報を担当してほしいと、当時の役員でカンパニー長だった井上智生氏から、カンパニー企画室への異動のオファーがあった。

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『若ちゃんの人気とコミュニケーション能力で、僕に力を貸してくれないか』と言われたときはとても嬉しかったです。それまでに全国の社内の方々とつくってきたつながりを生かして、いろいろな方にヒアリング、インタビューを行いました。営業や商品企画など、カンパニーのあらゆる部署の方に『なぜ入社したのか』『仕事のやりがい』『問題点』『今後やりたいこと』などを聞いて回り、紙面に生かす。すると、どんどん情報が集まるようになり、好循環ができていったんです。

さらに、社内の縦横のつながりを強化しようと、役員と現場スタッフの飲み会を企画し、それも紙面に掲載しました。経営サイドの考え方も大事だけれど、現場の声もたくさん載せたい。本当にたくさんの葛藤のなかで夜中に泣きながら仕事をしたこともありましたが、全国からの『うちのことも書いてほしい』『勇気づけられた』『いつも楽しみにしている』『営業の気持ちが分かった』などという声で、伝えることで世の中をハッピーにしていく仕事っていいな、と実感しました」

この経験が、「伝える」という広報の仕事をしていくうえで、若林さんの大きな転機になったという。

あるとき、世界の子どもにワクチンを届けるというNPO法人の活動を知り、興味を持つ。「私も広める手伝いがしたい」と、転職を決意した。

NPOの魅力

「大手企業の社長が、例えば工事現場の方と仲良く活動をする。それは今まで知らなかった価値観でした」

参加したNPOでは、ボランティアによって、立場を超えたつながりが生まれる。そのことを実感した若林さんは、東日本大震災のあとの支援活動にも携わる。

「現地に入ってボランティアをしていたら、当時日本ユニセフで震災支援にあたっていた國井修氏、菊川穣氏から『広報とコーディネーターで入ってくれないか』と言われて、手伝うことになったんです。津波に流されてしまった幼稚園を再建設するプロジェクトや、子どもの心のケアなど、さまざまなサポートをしました」

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プロジェクトが終了して東京に戻ると、日経新聞の役員になっていた日経ビジネス時代の元上司酒井綱一郎氏に誘われる。それはまたもやNPOに関係する仕事。日本経済新聞社が、全国のNPOの中から、優れたビジネスモデルを表彰する「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」というプロジェクトだった。

「とてもよい活動をしているNPOでも、広報まで手が回らない、寄付が集まらない、マンパワーが足りない、ということで困っていて。被災地支援に入って被災者に期待を持たせたと思ったら、途中でお金がなくなり去って行ってしまう。継続性がないと意味がない。だから、しっかりしたビジネスモデルのNPOを見つけ、表彰し、全国発信することはとても意義のあることだと思いました。どう継続していけばよいかわからない、と悩んでいるNPOも優れたビジネスモデルを知り、真似をすることにより、継続的な運営につながっていきます」

全国のNPOに呼びかけて、応募を促し、1000以上もあるすべての応募用紙に目を通し、団体とやりとりをする。全国のNPOと、そのビジネスモデルに詳しくなり、たくさんの社会起業家とも知り合った。

社会のため、人のためになるような仕事しかしない

2015年、会社を設立。ソーシャルビジネスなどを中心としたPR事業を請け負うようになる。最近嬉しかったのは、経済評論家の勝間和代さんが、LGBTアクティビストである増原裕子さんとパートナー関係にあることをカミングアウトした記事を手掛けたことだ。

LGBTに関する取材を10年以上続けていて、このテーマに熱心に取り組んでいるBuzzFeed Japanの古田大輔編集長に相談をし、今年の5月に出た記事は大きな反響を呼んだ。

「色々大変なこともあったのですが、掲載後は、たくさんの方から祝福のコメントがあり、ほかのメディアでも好意的な記事が続きました。私を信じて任せてくれた勝間さん、増原さんの一生に関わることですし、私もメディアからの取材依頼にはとても慎重に対応し、時にはお断りすることもありました。人生最大の勇気がいったと言っていた勝間さんには、お嬢さんから『お母さんのことを誇りに思うよ』とメッセージがあったと聞いて、私もうれしくて電車のなかで涙が止まりませんでした。これが私のやりたい仕事だ、ととても嬉しかったです」

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PRの仕事は、クライアントに対するSNSなどの心ないコメントに疲弊することもある。ただ、応援や心配をしてくれる友人知人の声で回復するのだという。

現在は、さまざまな社会活動や貧困問題などのサポートもこなしている。「人間の尊厳を尊重するような広報をしたいだから、社会や人のためになる仕事しか受けません。いくらお金を積まれても、そこに反する仕事はお断りします」という。「自分がやりたいことはない。人のために黒子でいたい」と考える心持ち。それが、今もこれからも強く美しく、ポジティブにあり続けられる秘訣なのだろう。

一問一答、若林直子さんのお気に入り

Q:朝のルーティーンは?

自宅の近くを30分くらい散歩しながら、今日すべきことを考える。

Q:デスクの上には何を置いていますか?

季節のお花を活ける。

Q:お気に入りのファッションアイテムは?

フランスの蚤の市で購入したパールのピアス。気高く美しく慌てず、にこやかでいられる。

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Q:愛読書、最近読んだ本は?

愛読書は『ジャクリーン・ケネディという生き方』(山口路子著)。ジャッキーの生き方が好き。最近読んだ本は『百年の女 - 『婦人公論』が見た大正、昭和、平成』(酒井順子著)。子どもの頃から本の虫で、自宅の一角に山ほど本を積んでいる。

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Q:欠かせないスマホアプリは?

Facebook。見ることも投稿することも多い。

Q: 人から受けたアドバイスで印象に残っているものは?

「人間の可能性は無限だよ」

お世話になった人に言われた言葉。本当に無限だと思っている。

Q: 1か月休みがあったら何をしたいですか?

ニューヨークかパリへ行き、美術館三昧の日々を過ごしたい。

Q:今会いたい人、会って話を聞いてみたい人は?

特にいない。いつも目の前にいる人が大事。

若林直子さんがMASHING UPに登壇。年齢に縛られない生き方を語ります

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ビジネスカンファレンスMASHING UP (DAY2)、11/30(金)の13:50〜のセッション「多様な生き方 – 年齢に縛られない」に、若林直子さん、モデルの仁香さん、株式会社AsMama代表取締役社長の甲田恵子さんが登壇。年齢や常識に縛られず軽やかに人生を歩む秘訣を語ります。

異なる業種・国籍・性別・分野のひとびとが出会い、いくつもの化学反応を生み出すビジネスカンファレンスMASHING UP。800人を動員し、大好評のうちに幕を閉じた第1弾につづき、11月29日・30日に第2弾を開催します。魅力的なスピーカー陣による熱いセッションが目白押しです。

カフェグローブ特別割引【2日間チケット通常18000円→14000円】あり。チケット購入ページで以下のプロモーションコードをご入力ください。

プロモーションコード:MUcafeglobe1811

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MASHING UP公式サイト:https://mashing-up.mediagene.co.jp/

撮影/柳原久子

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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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