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LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

2045年の景色は、現代人の夢や価値観の総和/林信行さん[後編]

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2045年にシンギュラリティを迎えたら、私たちの暮らしや仕事、価値観はどう変わる? 来るべき日に向けて今できることを明確にして、明るい未来を切り拓くための連続インタビュー[LIFE after 2045]。林信行さんに、今から意識していきたい心構えの部分を聞きました。

自分が「素敵だ」と思うものを発信しよう

——林信行さんにとって、2045年とは、どんな時代になると思われますか?

林信行(以下、林):僕は、2045年の景色は、現代人の夢や価値観の総和であると思います。

未来とは現代人の様々な意思や願望や欲望が集積したものとみなせば、より素敵な未来を実現したかったら、今現在のポジティブな価値観を強く発信していく必要があると、僕は考えています。「パソコンの父」と呼ばれるアメリカの科学者、アラン・ケイは「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」という名言を残していますが、基本的にはそういう思考法ですよね 。

自分が「素敵だ」「美しい」と思うものをどんどん発信していかないと、より強い発信力を備えた他の価値観にどんどん押されてゆく。結果的に、自分が「素敵だ」「美しい」と思っているものが、消え去ってしまうかもしれない。美しい建物や良書もそうだけれど、価値観はどんどんと新しく増えて続けており、残念ながらすべての価値観が22世紀まで生き延びることはありません。資本主義の世の中が続く限り、より売れる価値観が生き残り、戦略上有利になる。だから僕は、自分がステキだと思う価値観をSNSやウェブ記事や様々な経路を通じて発信を続け、そのステキさを知り、そこに共鳴してくれる仲間を少しずつ増やすことで、自分が好きな未来をつくっていこうと日々、行動しています。

今のAIで大事なのは、それに何を学習させるべきかという話を(前編で)しましたよね? 今後、世の中に対する影響力が強まるAIの黎明期だからこそ、今、自分が好きな価値観が議論にのぼることが大事。「自分が今後、どういう世の中になってほしいと思うのか?」というビジョンなり価値観を、各自が積極的に発信してゆくべきだと思っています。

イギリスの生物学者、リチャード・ドーキンスが提唱した「ミーム(文化的遺伝子)」という概念があります。今後は、そうしたミーム同士の競争が、より加速してゆくことでしょう。ネット上で存在感がない価値観は「なかったのと同じ」と思われかねない! 「善かれ」というビジョンは積極的に発信していかないと、それ以外の……利益や成果や数値を第一目標とする価値観にどんどん占拠されてしまいかねない。

日本の伝統美のミームを大切にしたい

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たとえば最近のネット空間上では、「萌え絵」みたいなカルチャーが、とても目立ちやすい。使用例が多く、発信力も凄い。だけど個人的には、それだけが「ジャパン・スタイル」でもなかろう、という気がしています。もっと長い歴史を通して愛されてきた日本の美の形、世界に愛されてきた日本の美の形も多く、僕はむしろそちらのミームが広まって欲しいと思っています。ただ残念ながら、そちらの側って案外発信が得意じゃなかったりする。このままだと衰退する一方です。なので、あえてそちら側を重点的にプッシュすることを心がけています。

そういえば前回、「日本品質を後ろ盾にしたアプローチ」の話をしましたが、パナソニック社が100周年を迎えた年に「ミラノデザインウィーク」で発表した「Kyoto KADEN Lab.」というプロジェクトが大変素晴らしいんです。今ほとんどの家電製品は、プラスチックでつくられた大量生産品ですが、そうではなく京都の伝統工芸の技を使ってつくった日本の伝統美を備えた美しい家電が多数提案されていて、私は初めて「自分が欲しい未来はこういうものだ」と納得しました。ネットに動画もあがっているので是非、多くの方に見てもらえればと思います。

Kyoto KADEN Lab. Phase 2 | GO ON x Panasonic Design(Youtubeより)

「アート」は“最適解”以外の解答を示してくれる

——最後に、林さんのお話をより立体的に学べるような参考図書があれば、ご紹介いただけますか?

林:山口周さんの『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか──経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書、2017年)をお勧めします。

毎月大量のビジネス書が刊行されますが、そこで示されるメソッド(方法論)が将来的にも通用する保障はありません。その一方で、哲学や美意識といった、一見ビジネスとは縁遠そうな価値観を磨くことこそが、今後は重要になっていくことが、わかりやすく書かれています。

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そこで山口さんは、こういう話をしています。ビッグデータを基にした(AIが作り出す)未来像は「最適解のコモディティ化」を起こしているだけだ、と。そうしたものを使っても、たしかに 売り上げは一時的にアップするかもしれない。だけど、それが引き起こした結果はというと、どこへ行っても同じような店が建ち、同じような商品が並んでいる風景。それって便利で合理的だけれど、すごくつまらない。そうした“最適解”ではないところで引き起こされる小さい摩擦によって、人は気づきを得ることがある。そのためにはアートがとても大切な役割を果たすということが、理路整然と書かれています。

これからAIや生命科学などが、さらに発展していく時代、我々にとって重要なのは、「答え」ではなく、どういう「問い」を持つかです。AIに何を学習させるのか。長生きばかりが本当の幸せなのか。そうした「問い」を生み出す力を育むのが哲学だったり、美術といった学問で、これからのAI社会の教育においてももっとも重要なのではないかと思っています。[了]

林信行(はやし のぶゆき)さん/ITジャーナリスト
1967年生。テクノロジーやデザイン、アートにファッション、教育や医療まで幅広い領域をカバーし取材、記事やTwitter、FBで発信。欧米やアジアのメディアで日本のテクノロジー文化を紹介するなど、海外でも幅広く活動している。ifs未来研所員/JDPデザインアンバサダー、著書多数。

シンギュラリティの足音は聞こえている/林信行さん[前編]

近い未来にAIと人間の能力が逆転するシンギュラリティ迎えると、私たちの仕事や暮らしはどう変わる? 明るい未来を設計するためのヒントを有識者にきくイン...

https://www.cafeglobe.com/2018/11/singularity1_1.html

なにもAIの超知性化だけが、近未来の脅威じゃない/林信行さん[中編]

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林信行さんがMASHING UPに登壇します!

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シンギュラリティを迎えて、愛や家族はどう変わるのか

日時:11月30日(金)16:45 – 17:30
場所:TRUNK(HOTEL) 別棟 2F KEYAKI
タイムテーブルはこちら / チケットのご購入はこちら
*カフェグローブ特別割引【2日間チケット18,000円→14,000円】あり。プロモコード【MUcafeglobe1811】をご入力ください。

聞き手/木村重樹、撮影/中山実華(人物)、構成/カフェグローブ編集部

Youtube, Panasonic

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