日本において、一週間以上の"完全な"休暇をとることは、まだまだ一般的とは言いがたいものがあります。たとえ取得したとしても、PCやスマートフォンでメッセージをチェックするなど、完全には仕事から離れられない人がほとんどでしょう。
日本は完全休暇取得率、最下位
2018年9月にイプソスが発表した調査レポート「『休暇』を実行する方法」によると、休暇の最中に仕事のメッセージやメールをチェックしない人の割合は、日本は32%で、調査対象国27か国中最下位となりました。
ほかにも、休暇の取得について、「少なくとも1週間自宅から離れたところで休暇を過ごした、あるいは、これから過ごす」と回答した人々の割合も最低の24%、「与えられた休暇日数をすべて使う」 と回答した人の割合も34%という惨憺たる結果が出ています。
「私は与えられた休暇日数をすべて使う」に対する回答
やはり「長期休暇」は日本では夢物語なのでしょうか。
その問題にイプソスは文化的な背景で説明がつくと考察しています。3つのポイントで見ていきましょう。
日本の労働文化のなかの休暇の仕組み
アメリカでは「通常の休み(vacationdays)」「私用の休み(personaldays)」「病欠(sickdays)」などが別々に付与されますが、日本ではすべて「休暇」です。
子供が熱を出しても、親の介護で病院に行く必要が出ても、すべてその「休暇」をあてなければいけません。
つまり、日本における「休暇」は、病気や家庭の緊急的な事情、そのほかの必要な出来事(結婚式、葬式など)に備えるためのもので、単に「休む」ということではなく、生活の現実的な用件に向き合うための「休暇」なのだと、イプソスのDeanna Elstrom氏と白浜史也氏は考察しています。
他の人に迷惑をかけていはいけないという文化
また、誰かが休めば同僚が余計な仕事を引き受けることになる。それがさらに取引先に関係する業務であれば、先方にも「迷惑」がかかると考えるのが日本的な考え方や企業文化です。
同僚、仕事の関係者だけでなく、消費者や世間に向けてさえ、1週間以上の休みを取ることはどこか罪悪感を感じさせることなのです。
国民の祝日は安心して休める
しかし一方で、アメリカでは11日、イギリスでは8日なのに対し、日本では国民の休日は16日です。また、日本では夏休みとして3~5日間、正月に4~5日間の休日が別途付与されることも普通です。
もともとは「お盆」「正月」などの伝統行事に即するためのこれらのまとまった休日は気兼ねなく休むことができます。これは、日本でも、他の人も同様に休んでいる場合は安心して休めるのだ、といえるでしょう。
正しく気持ちよく休暇をとる方法
以上の3点から考えると、日本で気兼ねなく休暇を取ろうとするなら、社会や周囲の理解がなによりも必要であるということが浮かび上がってきます。
つまり休暇を取りにくくしているのは、雇用主の意識ももちろん重要ですが、他ならぬ自分自身が同僚の休暇に向ける冷たい目かもしれないのです。
文化的背景に育まれた価値観を急激に変えることはなかなか難しいことかもしれません。
けれども「お互いさま」という素晴らしい文化的背景も持っているのが日本です。この「お互いさま」を上手く使って、お互いに気持ちよいバカンスを過ごせるようになりたいものです。
[イプソス株式会社]Image via Shutterstock

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