2018年11月29日・30日に行われたMASHING UP、最後のセッションは女性起業家によるピッチ大会。注目の新ビジネスを立ち上げた4人が集まり、成長性(市場規模)、ユニークさ、社会的インパクト、会場の心を動かすマッシングアップ度を観点に、事業アイディアを競う5分間のピッチを行いました。
モデレーターはiSGSインベストメントワークスの佐藤真希子さん。審査員には元ほぼ日CFOの篠田真貴子さん、eiiconファウンダーの中村亜由子さんなど、6人の有識者を迎えました。
「自信」を提供する美容定額アプリ
最初の登壇者はJocyの鈴木みずほさん。「美容室を毎日でも行ける場所にする」をコンセプトに、シャンプー・ブロー、ヘアケアに特化した美容定額サービス「MEZON」を提供しています。
「美容室はどんな人も笑顔にする魔法のような場所だと思っています。私は会社員時代、大事なプレゼンの前は必ず美容室に行ってヘアセットをしていました。そうすると不思議なことにプレゼンの通過率が非常に高かったんです」(鈴木さん)
Jocyの鈴木みずほさん。
そのときの経験から、「髪型が決まっていると人に自信が生まれる」ことを確信したという鈴木さん。美容室を毎日でも行ける場所にし、より多くの人に自信を提供したいという思いから、割安な定額システムで美容室に通えるアプリ「MEZON」を開発したといいます。
厳選した美容室をネットワーク化し、マップ検索機能で好みの店を探すことができる「MEZON」。ユーザーはキャリア女性が多く、平日のお昼や夜の会食前のヘアセットが人気です。仕事の空き時間にマッサージ感覚でシャンプー・ブローをしてもらう女性も多いとか。
美容室側としても広告費用をかけずに宣伝ができ、新規顧客の獲得につながる「MEZON」はメリット大。現在はユーザー数3,000人、90店舗が提携していますが、2020年までに提携店舗数を2,000店に増やし、会員数1.7万人、売上50億円を目指すと述べました。
体温計の概念を変える新デバイスを開発
続いての登壇者は、HERBIOの田中彩諭理さん。田中さんが開発しているのは、これまでの体温計のイメージを覆すウェアラブル型の深部体温計「Picot」です。
HERBIOの田中彩諭理さん。
体温は人の一番身近な健康の指標であり、深部体温を適切に把握することで生活をより豊かにできるという田中さん。田中さんが深部体温の重要性に気づいたのは、ご自身がずっと生理不順と重いPMSに悩まされてきたことと、自宅で介護していたおじいさんを急激な体温の上昇で亡くしてしまったという原体験があったといいます。
「なぜもっと早く気づけなかったのだろうと涙した両親の姿を、私はけっして忘れません」(田中さん)
「Picot」はコイン大のウェアラブルデバイスで、就寝中の連続計測、心拍とのダブル計測、異常検知&アラート機能などが搭載されています。計測したデータをアプリで解析し、体調の変化を自分や第3者に知らせることも、妊活・体調管理アドバイス等のビジネスに展開することも可能です。
すでに国際特許も出願済みという「Picot」は、1台9000円前後の価格帯を予定。「基礎体温」だけではない、老若男女が1人に1台もつべき体調管理アイテムとして、潜在的市場規模は1424億円以上になるだろうと今後の展望を語りました。
“お母さん”の重荷を解放したい
3人目の登壇者は、出張料理サービスのマッチングプラットフォームを提供しているシェアダインの飯田陽狩さん。「かかりつけ医(ファミリードクター)」ならぬ「かかりつけシェフ(ファミリーシェフ)」が、家庭の“お母さん”の重荷を解放すると話します。
シェアダインの飯田陽狩さん。
金融セクターのシニアアナリストとして、国内外の金融機関の戦略立案に携わってきた飯田さん。起業前は仕事を終わらせて保育園のお迎えに駆け込み、くたくたになって家に帰り、毎日同じような時短メニューの夕食を作るだけで精一杯だったそう。
「家庭料理は相手を慮って作るものなのに、共働きの我が家が一番犠牲にしていたのは、キャリアではなく食卓でした。日本ではわずか一世代の間に、女性の社会進出と核家族化が同時に進み、これまで当たり前のように“お母さん”が担ってきた役割、食卓を守ることや、家庭料理を伝えることが難しくなってきています。それをコミュニティに解き放ち、食卓を守ることが、シェアダインの目標です」(飯田さん)
食の専門家と家庭をつなぐシェアダイン。離乳食が得意な保育園勤務の調理師など、家族のライフステージに即したシェフを検索できることも大きな魅力です。1回3時間の訪問で、4日分(16食相当分)の食事を作ってくれて、調理のポイントやレシピも共有してくれるのだそう。
価格はシェフによって異なりますが、1時間1500円から、1食分あたり食材費込みで593円からとお手頃。審査員からも「今すぐ頼みたい!」と声が上がるほどでした。
「受付」からコミュニケーションの未来を変える
最後の登壇者は、ディライテッドの橋本真里子さん。上場企業5社の受付に従事し、11年、のべ120万人以上の接客を担当するなかで、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」の構想が生まれました。
ディライテッドの橋本真里子さん。
橋本さんが挑戦するのは、「時間」を生み出し、「受付」から仕事、そして世界を変革すること。
「毎日の取次ぎ業務が、働く人、とりわけサポート業務にまわりやすい女性の時間を奪い、活躍の機会を奪っているのです。RECEPTIONISTは内線を使わないことがコンセプト。iPadのアプリで、事前に登録すると、お客様に6桁の数字をお知らせします。お客様は数字を入力するだけで、担当者を呼び出すことができます。来訪者と担当者をダイレクトにアプリのチャットでつなぐため、時間のロスがありません」(橋本さん)
リリース2年満たない間に「RECEPTIONIST」が生み出した時間は、実に10年分以上。ある企業の広報部が導入したところ、それまで総務8割:広報2割だった仕事の内容が、広報9割:総務1割になり、本来の広報業務に力を注ぐことができるようになったという嬉しい報告もあったそう。
2018年10月現在、導入企業が1,200社を突破したとのことで、まだまだその成長はとどまることを知らなそうです。
泥臭く挑戦する女性たちにエールを
優勝した田中さん(写真左)とeiiconファウンダーの中村亜由子さん(右)。
いずれも甲乙つけがたく、難航する審査を制して優勝を手にしたのは、HERBIOの田中彩諭理さん。「ずっと研究を続けてきて、やっとモノになりそうだという今の段階でこんな賞をいただけたことを心から嬉しく思います。日本だけではなく海外にもこのサービスを広げていきたい」と喜びを語りました。
審査員からは、「どの事業コンセプトもリアル。ウェブですべてつないで、テクノロジーでスマートに解決……ということではなく、泥臭く挑戦する姿勢に感銘を受けました」というコメントが出て、4人の熱い思いが交差したピッチコンテストは幕を閉じました。
MASHING UP
女性企業家ピッチ大会
2018年11月30日@TRUNK(HOTEL)
撮影/間部百合

イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。