1991年に家業である星野温泉の社長(現・星野リゾート 代表)に就任して以来、日本発のラグジュアリーリゾート「星のや」、温泉旅館「界」、ファミリーリゾート「リゾナーレ」等のブランドを展開し、次々と成功に導いてきた星野佳路さん。
2018年には新たな都市観光ホテルブランド「OMO」もスタートさせ、その手腕には日本国内のみならず海外からも熱い視線が集まっています。
今回は、星野さんにその仕事術をインタビュー。前編では、星野さんの仕事を支えるフィロソフィーを紹介します。
「私は失敗したと捉えていない。学びがあれば、失敗ではない」
物事が予定通りにいかない、業績がうまく上がらないということは、仕事をしていればよくあることです。学びのない失敗はありませんから、私にとっては、それは失敗ではありません。
当時、同族会社だった「星野温泉」時代に親とケンカをして、一度会社を辞めることになった、というような事件もありましたが(笑)、それも失敗だとは思っていません。結果として、そのときに私のとった行動と思想は、その後改めてスタッフから支持されることとなったのです。
小淵沢の大型リゾート施設「リゾナーレ」や北海道の「アルファリゾート・トマム」の再生を引き受けたときも、業績が回復するまでには時間がかかりましたし、たくさんの試行錯誤を重ねましたが、私はそれを「失敗」と捉えることはありませんでした。
ひとつひとつ学びながら問題点を修正していくなかで、今の私たちの実力がついてきたのだと思っています。
挑戦なくして成長はなく、成長なくしては実力がつかないので、失敗を恐れて挑戦しないことは、まさしく大きな機会損失だと思っています。
「人生の残り時間から逆算して、やりたいことを確実にやる」
50歳くらいのときに、人生の残り時間を意識し始めました。
すると途端に仕事以外の時間の大切さも気になるようになり、自分にとって一番やりたいことは何かと考えると、それはスキーでした。それで「年間60日滑ることを目標にしよう」と決めました。
そうなると、早急に次世代の層を固める必要があります(笑)。人生の残り時間を意識しはじめてから、次世代を育てるためにも、自分の時間を確保するためにも、必ずしも私が参加する必要がない会議や会食などには出席しなくなりました。
スタッフは私がいないところで様々な課題に直面しているかもしれませんが、それも実際に対応してみなければわからないことです。そのおかげかはわかりませんが、人材は着実に育っていると感じています。
星野さん愛用の自転車とスキー。通勤は自転車。理由は「電車通勤が好きじゃないから」と至ってシンプル。
「目標は持たない。それは判断を誤らせる」
何年の何月までに何か所、という運営規模についての目標を持ったことがありません。目標は人の判断を誤らせることもあると思っています。
スタッフは皆、真面目ですから、目標を立てるとそれありきで動き出します。そうなると、本来星野リゾートが受けるべきではない案件まで無理やり受けて目標を達成しようとしたり、反対に目標を達成してしまうと、本来は積極的に受けるべき案件にもアグレッシブに立ち向かえなくなったりするのです。
施設数は結果でしかなく、正しい判断と正しい行動さえしていれば、数は自然に増えていく、と思っています。それ以上に、これから最も重要になってくるリソースは人材です。いかに星野リゾートの文化を継承する人材を速く、正確に育てていけるかが、私たちにとって今いちばん大きなチャレンジだと考えています。
——「仕事と人生において、いちばん大切なことは何か」に常に軸足を置く星野さん。始まったばかりの2019年。年のはじめに今一度、自分なりにものごとの核心を捉え直してみると、新たな視界が開けるかもしれません。
[後編]は星野さんがビジネスにおいて心がけていることをまとめます。公開は明日1月24日予定です。
星野佳路(ほしの・よしはる)さん
1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年に星野温泉の社長(現・星野リゾート 代表)に就任。以後、リゾートホテルや温泉旅館の再生事業、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」などのホテル・温泉旅館ブランドの展開、運営に携わっている。
[星野リゾート]
取材・文/山下紫陽、撮影/柳原久子
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