2018年11月29日・30日にトランクホテルで開催されたビジネスカンファレンスMASHING UP。
2日目に登壇したクレア・トージニョンさんは、カナダのケベック州を拠点に世界中でアート・プロジェクトを手がける会社「MASSIVart」でアーティストと企業を繋ぐ仕事をしています。そして、その傍らで、働く女性のネットワーキングを支援する団体を立ち上げました。
アートとビジネスをつなぐ。働く女性同士をつなぐ。
クレアさんは「つなぐこと」で何を生み出そうとしているのでしょうか? セッション終了後、お話を伺いました。
私たちは“翻訳者”。異質な世界をつなげ新しいものを生み出す
MASHING UPでのプレゼンテーションより。撮影/間部百合
——クレアさんは、商業施設や公共スペース、企業イベントなどでアート作品を展開する仕事をされていますが、一番のやりがいはなんですか?
クレア・トージニョン(以下、クレア):ゼロから新しいものを生み出せることです。アートと商業の世界をつなげることで、それぞれが単独ではできないことが可能になることが面白いですね。
——難しいと感じるころは?
クレア:クライアント企業の要望を満たしつつ、アーティストに妥協ない表現をしてもらうことです。どうしても制約がでてきてしまいますが、コンセプトの肝となる部分が侵されないよう、方々に働きかけ説得します。
私たちは翻訳者みたいなものです。アートと商業という、それぞれ別の言語を話す人同士が納得できるポイントを探っていくんです。
——企業はアートにどんな期待をしているのでしょうか?
クレア:今はただ良い製品を作ればいいという時代ではなくなりました。環境への配慮や、女性の地位向上など、人々は企業がどんな価値観を持っているかに注目しています。
人間の感情や、社会について深く考えながら作品をつくるアーティストには、独自性と偽りのなさがあります。ブランド戦略の重要性が増すなかで、企業がアートの考え方を取り入れるメリットが大きくなっているのだと思います。
伝統的な美術界とどう関わっていくか
——MASSIVartは、自社で主催するChromatic Festivalの他、SXSWやバーニングマンのような有名フェスティバルにも関わっていますね。音楽や映画など多様なジャンルがミックスされた会場でアートを見せるという潮流について、ギャラリーや美術館などの伝統的な美術業界はどう見ているのでしょうか?
クレア:一部では新しいビジネスモデルへの対応に戸惑っていますが、先見の明のある方々はそうしたシーンを一緒に盛り上げていこうとしています。
私たちの会社ではアートをもっと多くの人々に届けるため、新しい方法や機会を作ろうとしています。そのためには、深い知識やコネクションを持つ美術館職員やギャラリストとのつながりは重要です。
女性同士が“互いに協力しあう環境”をつくりたい
——会社でのお仕事の他に、女性のための商工会Jeune Chambre de Commerce des Femmes du Québecを立ちあげたということですが。
クレア:はい。起業家が集まるイベントに関わったことがあったのですが、圧倒的に女性が少なく、そこでの交流もビジネスライクで表面的なものでした。女性がもっと表舞台に出られるよう、互いに支援しあえる場を作りたいと思ったのがきっかけです。
様々な分野で活動する女性たちが交流を深めることを目指しています。イベントも頻繁に開催していて、短編映画の上映会やハイキング、ワインテイスティングなど、会員たちが持ち回りで企画しています。
業界を問わず誰でも入会できます。先生や看護師など、どの分野の人もネットワークを必要としています。それぞれが情報を共有し、キャリアを伸ばしていけたらいいと思います。
異業種へのキャリアチェンジを成功させる秘訣とは
——クレアさんは金融からアートの世界へと転じています。別の分野での可能性を試したいけれど、踏み出せないという人にアドバイスをお願いします。
クレア:私の場合、金融の仕事は学ぶことも多くやりがいがあったのですが、同時に自分の本質とのずれを感じていました。人生のなかで仕事が占める時間は長いので、そこのずれを直さないといけないと思ったのです。
模索し続ければ、変化を起こすべきタイミングが来ます。それまでは準備期間だと考えればいいと思います。リスクを減らすには、いくつかの選択肢を用意しておけばいい。計画を練ったうえで思い切ってジャンプすることをおすすめします。
——最後にMASHING UPの感想をお聞かせください。
クレア:リラックスしたムードにあふれ、登壇者と来場者の距離が近いのがいいですね! この場に呼んでいただいたことに感謝しています。
クレア・トゥジーニャ(CLAIRE TOUSIGNANT)さん金融業界を経て2014年に世界中のアーティストと企業やNPO、行政を繋ぐMASSIVartに転職、多くのコラボレーション作品を生み出し利益を3倍にすることに貢献。さらにMASSIVartのアジア責任者として、中国・上海で60以上のパートナーを巻き込んでグローバルのクリエイティブプロジェクトをローンチすることに成功。 また、MASSIVartとは別に女性活躍の活動としてJeune Chambre de Commerce des Femmes du Québecをケベックで立ち上げました。
撮影/中山実華(インタビュー)、間部百合(セッション)

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