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インクルーシブな社会づくりは“前提”を疑うことから

MASHING UP/マッシングアップ vol.2

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インクルーシブな社会をベーシックなものにしていくために、私たちは何を考え、どう行動すればいいのでしょうか。2018年11月29日・30日に開催されたMASHING UPでは、ジェンダー研究の第一人者やLGBTアクティビストなど4名の登壇者がアイディアを出し合いました。

インクルーシブとダイバーシティの概念とは

インクルーシブを語る上で、ダイバーシティの概念は外せません。ただ、ダイバーシティという言葉のひとり歩きには落とし穴があると、東京大学教授の清水晶子さんは語ります。

「ダイバーシティとは、一言でいうと多様性ですが、“色んな人がいて、みんな違ってみんないいよね”、だけで終わってしまってはダメ。違う立場の人が、同じ努力や同じ条件で同じだけの成果を得られる状態をつくっていくことに、意味があるんです」

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東京大学教授の清水晶子さん。

また、インクルージョンについては、「インクルージョンも“一緒にやるならマジョリティにあわせてね”となると本末転倒なので、注意が必要です」(清水さん)

ダイバーシティという文脈で企業研修などを担当することが多いという増原裕子さんは、

「それぞれの個性や違いが押しつぶされることなく、お互いにそれらを引き出し合えるような環境をつくる、ということを念頭において仕事をしています」と話しました。

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トロワ・クルールの増原裕子さん。

間違いは相手が受け入れれば間違いではない

認知症の状態にある方がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」をプロデュースした小国士朗さんは、同店のコンセプトをインクルーシブの例として紹介。

「間違いも、周りが受け入れてさえしまえば間違いではなくなるんですよね。注文と違う料理がきてるのに、お客さんもスタッフも笑ってる。発想の転換が大事だと思います」

これに清水さんから「餃子頼んだのに餃子きたら残念」とツッコミが入ると、会場は笑いに包まれました。

発想の転換がインクルーシブへの流れを作る

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フリーランス プロデューサーの小国士朗さん。

同店については、認知症の人を笑い者にしているのでは?という疑問や批判が寄せられることも。これに対して小国さんは、

「このお店では、間違えることを目的にはしていません。間違えるかどうかよりも、認知症の状態にある方とのコミュニケーションを大切に考えて設計しています。認知症という言葉だけを知っていて、自分はなりたくない、怖いものとネガティブにとらえている人も多い。でも、実際に認知症の方と触れ合うと印象が変わるようです」

と述べました。

「“まちがえちゃったけど、まあ、いいか”と笑いながら前提をひっくり返すことで、ネガティブな物事がポジティブに変わる、そういうしくみをつくっていきたい」と語りました。

マジョリティの受容を上げていくことで社会は変わる

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ロフトワークの林千晶さん。

林千晶さんは、

「ダイバーシティの話をするとき、あの人はマイノリティ、私はマジョリティと、一人単位で区切れるものではないですよね。人間の中にはいくつもの要素があって、どこかの要素では自分もマイノリティになるし、マジョリティにもなる」と話し、

「自分はバツイチというマイノリティをママ友に言えずに悩んでいる。“家庭には立派な旦那がいなければいけない”“立派な旦那と子どもを二人で育てないといけない”といった壁を、社会的に排除されている側が、“この壁なくせない?”と安心して言える環境が望ましいですよね」

と続けました。続けて小国さんも、

「認知症も数でいうとマジョリティなのに、社会の中でマイノリティというイメージ。法律や制度を変えることももちろん大切ですが、社会の受容度を上げていけば解決できる社会課題がたくさんあるはず」と賛同しました。

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増原さんは、「差別や偏見はマイノリティの言葉を失わせる暴力。同性愛など偏見をおそれて人に言えない部分を隠すことで、その人のいい部分も隠れてしまっていることも多い」とし、増原さん自身、レズビアンであることをオープンにしてからは、理想の社会をつくるためなら何でも出来ると思えるようになった、と語りました。

とはいえ、誰もが声を上げられるわけではありません。清水さんは、「大切なのは、“家庭には夫がいるはず” “女の人なら男の人と付き合っているよね”というような“前提”は必ずしも正解ではない、という形で場をつくっていくこと」と述べ、「ダイバーシティとコンフリクトはセット。それを踏まえた上で、それでも進めていかなければいけない」と訴えました。

小国士朗さん (フリーランス プロデューサー / 注文をまちがえる料理店)
2003年NHK入局。「クローズアップ現代」「プロフェッショナル 仕事の流儀」などを制作。2013年に社外研修制度を利用し電通PR局で勤務。その後、NHKコンテンツのプロモーションやデジタル施策を企画立案する部署で、ディレクターなのに番組を作らない“一人広告代理店”的な働き方を始める。主な企画に、150万ダウンロードを突破した「プロフェッショナル 私の流儀」アプリや認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」など。2018年7月にNHKを退局し、フリーランスのプロデューサーとして活動。

清水晶子さん(東京大学教授)
専門はフェミニズム、クィア理論、身体とその(自己)表象、クィアディスアビリティ論、ポストコロニアルフェミニズムなど。主著として_Lying Bodies: Survival and Subversion in the Field of Vision_(Peter Lang. 2008)。毎年秋に研究科の院生達と開催するクィア理論入門公開連続講座は、アクティビストや研究者からテーマに個人的に興味をもった人まで、多岐にわたる参加者を得ている。

増原裕子さん(トロワ・クルール 代表取締役 / LGBT アクティビスト)
2011年よりレズビアンであることをオープンにして社会に対して積極的に発信をしている。2015年渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号(2017年に離婚)。慶應大学大学院修士課程、慶應大学文学部卒業。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。ダイバーシティ経営におけるLGBT施策の推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修・講演の実績多数。著書に『同性婚のリアル』等4冊がある。

林 千晶さん(ロフトワーク 代表取締役)
早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Web、ビジネス、コミュニティ、空間など、手がけるデザインプロジェクトは多岐に渡る。グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD」などを運営。MITメディアラボ 所長補佐、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」代表取締役社長も務める。

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MASHING UP

インクルーシブな社会を作るためのアイディア
2018年11月29日

撮影/間部百合

MASHING UPだからこそ。出会いと気づきが溢れるネットワーキングパーティ

性別・国籍・所属・年齢にかかわらず、様々な人々が交流したMASHING UPのネットワーキングパーティ。また新たな何かが生まれそうなネットワーキング...

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「出会いがない」けど人生のパートナーと出会うために。見つけるべきは自分のコアバリュー

多くの女性が口をそろえて、「出会いがない」といいます。では、どうしたら出会えるのでしょうか。MASHING UPのセッションでヒントを探りました。

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力武亜矢

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