ニューヨークにて、ユースドファッションで事業を展開するマテリアルワールド社の矢野莉恵さん。11月29日・30日のMASHING UPに登壇した矢野さんに、今の事業をはじめた経緯や、ブロックチェーン技術によりビジネスがどう変わるのかというお話を伺いました。
高品質なものを必要なときに調達する生活
アメリカ、メキシコ、カナダ、日本、と生活拠点を転々としながら育ったという矢野さん。幼少期から25回以上の引っ越しを繰り返したといいます。その生い立ちは今の事業にも大きな影響を与えているようです。さまざまな地域を渡り歩く生活は、一つの地域に住みつづけることや、家を買うといったことへの関心を低くし、「適宜必要なものだけを所有するライフスタイルは、無駄なものがなくてストレスフリー」だと語ります。
マテリアルワールドが、ユースドファッションという"循環するもの"を扱っている理由について、矢野さんは「買っては捨てるという消費文化に、いつも疑問を持っている」と明かしてくれました。
「大量生産のファストファッションは、安くて手に入りやすいですが、ワンシーズン使ったら捨ててしまう場合も多いでしょう。クオリティが高いファッションであれば、何年にもわたって使いつづけられます。しかしクオリティが高いものは、値段も高い。そこで、シェアリングエコノミーを基盤とした、ユースドファッションビジネスに着目し、事業を展開していったのです」。
場所にとらわれる働き方は古くなる
「せっかく起業するなら一番難しくてもインパクトが大きいところがいい。だからファッションのメッカ、ニューヨークという土地を選びました」。事業の拠点を選んだ理由について、矢野さんはそう力強く語ります。しかし、社員全員が一つの場所に集まる必要はないといいます。
マテリアルワールドの社員は現在35名ほどですが、ニューヨーク本社で働く社員は、わずか6名ほど。他の社員はどこで働いているかというと、米国他州のほか、コロンビアや東欧、中国など、世界各地に点在しています。矢野さんいわく、「マテリアルワールドにコミットしたい人が世界中から集まり、サービス作りをしている」のだとか。家族との時間を優先するためにパートタイムで働きたいなど、タイミング次第で働き方の希望条件が異なるのは当たり前。だからこそ、その要望を実現できる会社・組織作りに興味があったのだそうです。
そして、その事業のポテンシャルを広げてくれるものがブロックチェーンである、と矢野さんは期待を込めて語ります。
ブロックチェーンは事業の可能性を拡大する
最先端の都市ニューヨークであっても、ブロックチェーンを応用したビジネスはまだ台頭していません。でも、ほとんどの経営者がこの新技術について勉強をしているのも事実。5年後、10年後、ブロックチェーン技術がどのような影響をビジネスに与えるのか、その技術を使わない場合はどのような変化が起こるか、といったことを見据えているようです。
矢野さん自身、ブロックチェーンの最先端に関わっている人の話を聞き、事業の大きな効率化、新たなユーザーへのリーチなど、ビジネスの可能性が拡大することを確信したといいます。
しかし、新しい技術であることから、詐欺被害などのトラブルも少なくありません。既存事業が波に乗っている企業ほど、あまり大きな声でブロックチェーンに着手しているとは言いづらい風潮もあります。
MASHING UPに登壇し、ブロックチェーン革命について語った矢野さん(写真中央)。
新しいテクノロジーがいま目の前にある
これから起業を目指す人がいるとしたら、と前置きをして、「ブロックチェーンのコンセプトを通じた事業やサービスづくりを試して欲しい。今後伸びていく技術なので、これから事業を起こす人には最適です」と、矢野さんは語ります。
「ブロックチェーン業界は、技術者・資本家・詐欺師などさまざまな人々が集まり、カオスな状態。でも、一見怪しげな混沌としたところから新しい技術のムーブメントは始まる。その混沌に最初からいた先駆者たちが、大きなビジネスを築く機会をつかむことができるはず」。
男性比率が高いテクノロジーベンチャーの中でも、ブロックチェーンはさらにその傾向が強く、「女性は皆無なんです」と矢野さんは笑います。一方で、従来は投資家とのアクセスを確保できず、資金集めがうまくいかなかった女性たちでも、自分の経済圏を作ることができるため、「ブロックチェーンは女性にピッタリな技術」とも。
「これからやってくる技術を活用し、ビジネスで活躍する女性の登場を期待しています」と温かい笑顔で締めくくりました。
矢野莉恵さん(マテリアルワールド 代表取締役社長)
1981生まれ。アメリカ、カナダなど25カ所で暮らした経験をもち、メキシコの高校を卒業後、上智大学に入学。2004年三菱商事入社。その後、ハーバードビジネススクールに入学し、2010年MBA取得。ニューヨークのコーチ本社にて勤務後、ファッションeコマースMaterial WorldをHBS時代の同級生であるジー・ツェンと起業。
撮影/俵和彦、酒 航太(セッション写真)

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