日々の生活のほとんどは、誰から選ばれたり選ばれなかったり。オーディションのように、常に選別されています。オーディションは、一生ついて回るものなのかもしれません。
『オーディションから逃げられない』 の著者である桂望実氏は、映像化された『県庁の星』や『嫌な女』も執筆した人物。大学卒業後、会社員を経てフリーライターに転身し、その後2003年に作家デビューをはたします。
本著には、他人と比べながら生きてきた主人公の女性が、一生を通じて本当の幸せとは何なのか、次第に気づいていく過程が小説として描かれています。
日常にある「オーディション」から逃げられない現実
世の中の風潮として、他人と比べずに自分らしく生きるあり方が礼賛されがちです。「あなたらしくいればいい」と世間はいいますが、現実は他人と比べざるを得ない環境が私たちを取り巻いています。
たとえば、ビジネスにおけるプレゼン、友人や恋人との会話……。それは、何も歌手やモデルになりたい人ばかりではない。市井に生きる私たちも、自分の意思に関係なく、相手や他人にヒットするかどうかのオーディションに参加させられ、合格したり不合格になったりして生きています。
まさに、人生はオーディションの連続。本著のタイトルのごとく、オーディションから逃げられないのが現実の生活なのかもしれません。
でも、選ばれなくたって、幸せはつかめる
主人公の渡辺展子は、自分のことを「ついていない」と思って生きてきました。
中学でできた親友は、同じ名字なのに学校一の美女。絵が好きで入った美術部では、一風変わった絵を描く同級生にばかり注目が集まってしまう。就職活動では、自分だけが内定を取れない。そして、結婚して幸せを掴んだはずだったのに、夫の会社が倒産してしまう。
どこへ行っても何をしても、何となく貧乏くじを引いてしまう人生のパターン。やがて主人公は、幸せの感じ方は他人の意見に左右されなくていいのだということに気づいていきます。
人生のオーディションは、ずっと続くのかもしれない。しかし、「選ばれなくても幸せはつかめる」という真理に、はたと気付かされる一冊です。
オーディションから逃げられない
著者:桂望実
発行:幻冬舎
定価:1,500円(税別)

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